不当な社会保障制度

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

先進国では自身の老後を自分の資産で保障出来ない階層のために社会保障制度を採用して、社会安定の手段としており、富裕層や高額所得層に重く負担させて低額所得層を支援し、貧困層は少ない負担で貯金して老後に備えるようなシステムになっているが、ブラジルは反対に高い年金を受け取っているクラスは軽い分担金を僅かな期間負担し早く退職してより長期間の年金を受け取るシステムになっていると、民間の社会保障制度専門家達が分析し、ブラジルは社会保障の本質を逆転させたと評価している。

レイノルド・ステファネ元社会保障相は、一部特権クラスが自身のために社会保障制度法令を作ったと告発し大臣の席についた時に改革を試みたが、三権の要職者達が自分の年金はどうなるかと自分自身の問題を心配して、改革計画を押しつぶしたと述懐している。国会議員、司法官僚、政府の上級職、さらに社会保障院の職員まで改革反対に立ち上がった。民間部門には最大1255レアルまでの年金にして、この最高額はめったに入手出来ないようにしているが、三権の要職につくと1万8000レアルの最高限度をとるように法令で定めていて、これを絶対に変更させない。政府は社会保障制度の財政破綻を回避する手段として、年金支払い最高額の引き下げを法案として国会へ提出したが、国会が民間部門の支給額引き下げを盛り込んだだけで三権の支給は変更しないように原案を変更して可決した。しかも1993年まで三権は社会保障分担金を免除されており、それ以後、負担金を徴収しているが、退職時の給料をそのまま終身受け取ることになっており、この三権の年金支払いでブラジルの社会保障制度は急速に破綻していると元社会保障相は語っている。

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