低学歴労働力の失業増加と厳しい雇用情勢

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

低学歴労働力の失業増加

ブラジル地理統計資料院(IBGE)の全国家計調査から、政府の応用経済研究所の研究員は、失業による貧困化は学歴の低い労働者ほど激しいとする報告書をまとめた。特に初等科4年以下の学力の労働者がひどい。学歴の低い労働者クラスを見ると、経済安定計画が実施された1994年7月1日から1999年4月までに、学歴が初等科4年以下の1200万人が職を失い、1997年5月から1999年4月までの2年間だけで平均所得は22%低下した。これは労働者の貧困化と労働の不均衡を表わすと分析している。安定計画によるインフレ低下と、景気がもたらした雇用増加で、低額所得者の購買力は一時強化されたが、短期的現象に終わり、GDPの成長低下と失業増加で低額所得層は、購買力低下に逆転した。IBGEの家計調査では経済安定計画によって、国民の貧困クラス以下の割合は44%から34%に下がった。しかしその水準が過去3年間横這いで続いており、この調査では安定計画がもたらした所得配分の効果は1996年9月で失速したと評価している。経済開放で最も生産構造改革を要求された農業と、大都市で失業が増加し、所得低下が続いた。失業増加と給与水準低下と共に労働力に対する企業の要求は厳しくなり、低学歴労働力の市場は劇的な減少を起こしたとコメントしている。学歴が初等科4~8年クラスの労働力の就労は変化なく続いている。この研究はまた、国民の34%を占める貧困以下のクラスを、人間としての生活水準へ引き上げるには、229億レアル(1ドルは約2レアル・原文どおり)の所得を要すると計算した。この金額はGDPの2.6%に当たり、これだけのGDP成長がないと、貧困は解決しない。しかし貧困対策は短期的に達成出来るものではないと、この分野の行政施策の困難を指摘している。

雇用増加期待なし

政府は長期国家開発計画やIMFとの協定の中で、2000年のGDPを4%成長と予想しているが、国内のエコノミストや経済コンサルタントは2.4~3.5%と低く予想しており、このため1999年の平均公式失業率約7%は、2000年に7~8%になると見ている。企業やエコノミストは2000年の企業の予算作成に当たり、いずれも政府目標を採用せず、低めの成長を設定している。1997~1998年にほとんど成長を見なかっただけに、政府、国民共に成長への期待は大きいが、誰も雇用増加の期待は持っていない。2000年には金利引き下げや、為替切り下げ後の輸入品の価格上昇によって、国産が有利となり、工業に活気が出ると期待されているが雇用が増えるにしても、臨時採用のように、一時的雇用にとどまり、失業を減少させる力はなく、単に失業悪化を食い止める程度と見ている。工業は設備、労働力共に大きな遊休を抱えており、かなりの消費回復が長期に渡って起こると自信を持たない限り、雇用増加には出ない。エコノミスト達は9月に7.4%に達した公式失業率が2000年になお上昇する可能性の理由として、企業が生産性とコスト削減を追求すればするほど、労働者の職場は小さくなって行くこと、年間約180万人が労働力として労働市場に参入してくるが、GDPが10年間連続して4%以上成長しても、現在の失業率を半分に下げられるだけであると言う見方を悲観予想の基本にしている。1980年代にはGDPが1%成長すると雇用も1%増加したが、現在ではGDPの1%成長に雇用は0.5%増加にとどまっている。労組の社会経済研究機関であるDIEESEの計算では、GDPが10年間連続して4%成長しても、1990年の失業水準に戻るだけで、新たに参入してくる180万人の労働力を吸収するには、7%の連続成長を要する。

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