北部ベトナム日系企業の労働事情

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

労働科学・社会問題研究所は1997年から1998年前半にかけて、北部ベトナムで操業する外資系企業に関する調査を行った。その調査対象になった16社の日系企業について紹介する。これら日系企業の日本側出資比率は最低50%(1社)、最高100%(2社)、最頻値70%(6社)となっている。日本側100%出資の2社以外は全てベトナム企業との合弁である。また産業別内訳は重工業5社、軽工業4社、商業2社、サービス業2社、電気・電気機器製造業1社、その他の部門2社である。1998年に輸出をしている企業は16社中、僅かに5社である。調査対象の日系企業は輸出加工区の外に位置しており、さらに多くの企業は操業から日が浅いため、輸出額は少ない。これらの企業における女性従業員の比率は大変低く、約20%である。ベトナム人労働者の技能と職層の内訳は次のようになっている。

30%近くの労働者が非熟練労働者である。職業訓練を受けたものの、その知識や技能で新技術に適応できない者も、その中に含まれている。管理職にふさわしい知識を持つベトナム人が少ないため、管理職にベトナム人は少ない。

表2は1997年の労働時間に関する調査結果である。労働法で定めた年次有給休暇日数(1年以上勤務した者は通常の条件下で12日)を下回る企業もあるが、様々な形で与えられた平均の休暇日数は21日以上とかなり多い。週当り平均就業日数は労働法にそっているが、他の外資系企業よりも多い。労働法は時間外労働を年200時間以下と定めているが、294時間の会社が1社あった。しかし、現実には1日の労働時間は8時間なので、この数字は季節的な仕事が含まれたために生じたものと考えられる。

ベトナム人労働者の賃金について見たものが表3である。ベトナム人労働者の賃金格差はかなり小さい。管理職と労働者との間の平均賃金格差あるいは平均所得格差は3倍弱である。また驚いたことに、従業員の所得は効率的に運営されたベトナム企業での所得を大きく上回っていない。

25%の企業が就業規則の登録に関する手続きが複雑であることに不満を持っている。労働法によると、操業後6カ月以内に就業規則を省級労働基準監督局に登録しなければならない。しかし、労働組合と経営陣との間に合意が無かったり、あるいは地方労働当局が行政手続きを改訂したりすることから就業規則が有効に機能していないことも多い。

労働者に労働法を理解させるなど、国家機関が行っている労働法関連の活動を大部分の日系企業は評価している。多くの場合、日系企業は国家機関が労働争議の調停に果たす役割をよく認識していない。なぜなら日系企業で労働争議が起こることは稀であり、この問題について日系企業が国家機関に相談したり報告したりすることが少ないからである。

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