新公的年金制度で政党間最終合意

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

1999年の夏、全ての政党が全国民を対象とする新しい公的年金制度について最終的に合意した。新制度は政党間では合意に達したが、まだ議会で正式に決定されておらず、正式決定は、利害関係当事者との新たな一連のヒアリング後に行われる予定である。

これまでの国民付加年金制度(ATP)は、1950年代終わりに議会で僅差の過半数(1人のリベラルなブルーカラー労働者が党の政治路線に反して投票した)を得て導入されたもので、勤続30年間のうち最も賃金所得の高い15年をベースとする年金水準を規定していた。これに対し、新制度では、生涯賃金全額によって年金給付水準が決まり、従来批判されていた、勤続期間の賃金上昇が著しかった人に比べ毎年ほぼ一定の所得を得た人の年金が比較的低くなるという欠点が解消された。18.5%の年金保険料は労使が折半する。現行の従業員負担は6.95%だが、従業員負担増分の賃上げを労働者が使用者から確保できるか明らかでない。したがって政府はこの労働者負担増を相殺する減税を新予算案で提案している。

基本的に、労働力人口が老齢人口の年金保険料を支払う賦課方式だった以前の ATP では、経済変動があっても年金水準を保つための大規模な積立金があった。そして労使がその基金理事会の過半数を占め、運用先を決定していた。労働組合は、財政赤字を減らすために既存基金のうち1550億クローナ(1クローナ=12.26円)を政府予算に充当する措置を受け入れざるをえなかったが、「総額5200億クローナの資金を管理する新しい四つの緩衝基金の理事会において、労働組合と使用者の過半数支配を撤廃する」との全党合意には反対している。また労組側は、従業員に67歳まで働く権利を与える新制度の規定にも反対している。現行の労働協約では、定年は65歳である。労働組合は、雇用に伸縮性を導入することは第一段階に過ぎず、第2段階では通常の年金が67歳での退職に基づいて計算されることになる(つまり、65歳で退職する人は年金が少なくなる)と見ている。そのため労働組合は伸縮的な定年制のアイデアは受け入れているが、労働協約を無効にする政党の決定には抗議している。

公的年金保険料18.5%のうち2%分は積み立て方式(16.5%は賦課方式)で、個々の従業員が直接投資先を選択する。これらの資金の大部分は共同保険会社 AMF に投資されると思われる。だが、労働組合が共同で設立し、運営している保険会社 Folksam も、労働者の間で非常に人気が高いようである。

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