英国フォード従業員、人種差別で勝訴

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

フォード社は9月23日、ダーゲナム工場(ロンドン東部)の製造労働者に対する人種差別の容疑について、その責任を認めた。組合指導者のなかにはこの件を「制度的な人種差別」の一例と評する者もいる。輸送一般労組(TGWU)のビル・モリス書記長は早速、同工場での人種差別の徹底調査を求めるためフォードのジャック・ナセル会長との会合を要求した。

雇用審判所での組合側の訴えによると、4年近く前に同エンジン工場で勤務を開始した被害者(34歳)は、クー・クラックス・クランの絵など卑劣な落書きによって組織的ないやがらせ(systematic abuse)を受けていたほか、懲罰棟と呼ばれる作業場での労働を頻繁に強いられ、防護服も身につけず噴射ブースで危険物質を取り扱わねばならないこともあった。モリス書記長によると、被害者が上級管理者に苦情を申し立てると、無視され、いやがらせは悪化したという。また被害者は直接的な言葉で脅迫され、やむをえず警察に訴えたという。

フォードは、従業員に対する差別や嫌がらせについて、許容量ゼロの方針を採用してきたとしながらも、今回の件についてその責任を認めた。TGWUが推定したところでは、同工場の従業員の40%が黒人、アジア人など少数民族である。モリス書記長は同工場の経営責任者が人種差別に適切に対処するかどうか信頼できないとしながらも、TGWUが知るかぎり今回と同様の人種差別を受けた者はほかになく、また他のフォード工場についても、少数民族の従業員が威嚇を受けた報告は寄せられていないことを認めている。

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