ハンガリー/政府による労働協約登録は進んでいない

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

労働組合の職場での活動状況を最も端的に示すのは、労働協約の適用を受ける労働者の比率である。労働協約を締結すると、使用者と労働者の関係が明確になり、安定する。使用者側は労働法の規定以上に雇用を保証するかもしれない。例えば、労働協約に賃上げ率が明記されることもあれば、その職場での最低賃金が保証されることもある。労働協約は使用者側にもプラスの働きをする。ストライキや労働者とのあからさまな紛争を回避できるのだ。ハンガリー労働法によれば、労使が労働協約を締結した場合、組合にはストライキの権利や生産を妨害する権利がない。つまり、労働協約によって労使の協力関係が深まるだけでなく、労働者の利益を代表する組合と労働者の職場での行動が予測可能な範囲に制約される。

国内で特に規模の大きな組合連合体であるハンガリー労働組合連合(MSZOSZ)と自主労組連合が最近行った分析によると、政府による「労働協約の登録」は大して進んでいない。この二大連合体によれば、ハンガリーの労働者のうち、労働協約の適用を受けているのは35パーセントにすぎない。(この比率は、社会主義を放棄した他の中東欧諸国とほぼ同じである。)これは全国平均であるが、MSZOSZと自主労組連合の活動領域では、もっと多くの労働者が労働協約の適用を受けている。この二つの組織では、その比率は70~80パーセントで、全国平均をはるかに上回っている。

部門や支部レベルの労働協約については、対象となっている労働者は全体の10パーセントにすぎない。指摘しておかねばならないが、組合組織率と、労働協約の適用を受ける労働者の比率との間には、はっきりとした相関関係はない。例えば西欧諸国では、労働者の70パーセントが労働協約の対象になっているが、これは支部レベルの労働協約が大きな役割を果たしているからだ。フランスでさえそうである。フランスでは組合組織率が9パーセントときわめて低いが、労働者の90パーセントが労働協約の対象となっている。

最近、MSZOSZと自主労組連合が開催した労働協約に関する全国会議で、使用者団体の代表は、労働協約の締結を促進するために、政府がこれ以上支援したりインセンティブを与えたりする必要はないと主張した。例えば、ハンガリー事業者連盟のイシュトバン・オルバン会長は、政府に働きかけて、労働協約の締結に積極的な役割を果たしてもらう必要はないと述べ、使用者と労働者の利益をそれぞれ代表する組織は、労働協約を自主的に締結するパートナーであると位置づけた。また、新設企業は「支部や部門」レベルの労働協約の締結に消極的である事実に言及し、その大きな理由として、「個人の利益が優先され、集団の利益が顧みられない」点をあげた。

最後に、自主労組連合のジャノス・ボルシク副会長の発言に触れておきたい。同副会長によると、ハンガリーでは労使関係が不安定であり、それがEU加盟を妨げる要因になりかねない。現在、政府と組合の関係も「冷ややか」で、現在そして将来の労働協約に好ましくない影響を与えているという。

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