SAFとPTKが付加年金協定締結に失敗

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年11月

1994年以降、スウェーデン経営者連盟(SAF)と事務技術系職員労組連合交渉カルテル(PTK)は、民間製造業、貿易、サービス業に従事する65万人余りの専門職と事務系従業員を対象に付加年金制度(ITP)に関する協定を締結しようとしてきた。1998年12月、1999年2月、1999年5月と交渉当事者が締結したという噂が何度か流れたが、その都度両者は締結に失敗していた。

締結が遅れた理由として第1に、現行のITP協定は技術的に複雑で、再検討するにはSAFとPTKの種々の労力と資源を費やさなければならないということがあり、第2に、労使が保険料の支払方式に関して終始一貫して見解を異にしてきたということがある。そして第3の理由として、PTKに参加している各労働組合の間にも見解の相違が生じ、PTKの統一見解らしきものを見出すことができるか疑わしくなってきた。

私たちが知る限り、従業員自身がより多くの資金の運用を任されるようになるということで今回の話が進んでいた。労働組合側は確定給付方式を望んでおり、経営側は確定拠出方式を望んでいたが、最近の妥協案と見られていたものは、毎年定められるbasbeloppと称する基礎額の7.5倍を上限(この上限は合計で年間約28万クローネ(1クローネ=12.99円)に当り、これを超える部分については年金額に反映されない)とする確定拠出方式で、これに確定給付方式の年金を上乗せするというものだった。

数週間前までは誰もがこの線での合意を疑っていなかった。SAFは合意したが、驚いたことにPTKがこれを拒否した。より正確には、PTKに加盟する28労働組合のうち26組合は予定通り合意したが、残りの2組合が拒否したのである。拒否した2労働組合は、最大の職員労働組合である事務技術系職員労働組合(SIF)と、5万3000人の組合員を持ち独自性の強い職長・監督職労働組合(Ledarna)である。29万3000人を擁するSIFが拒否したのでPTKとしてはどうしようもなかった。交渉当事者は打開策を見出せず、交渉を継続する計画は全くなさそうである。

大筋での妥協はすでに随所でなされ、交渉は主として詳細部分に移っていた。結局、交渉が失敗した理由は、典型的な労働組合の縄張り争いにあったように思われる。すなわち、SIFもLedarnaも、1970年代に創設され弱体化しているPTKに何もかも委ねたくはないのである。

こうして旧来の制度はそのままにされた。臨時雇用者は相変わらず年金制度の適用外におかれることになる。また、SIFの女性指導者は女性労働者に関する年金規定を改善すべきであると主張していたが、こちらも見送られることになった。

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