失業率の低下と技能労働者不足

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年11月

豪州では失業率が過去9年間で最低を記録するなど、失業問題が改善しつつある。求人件数も増えており、他方賃金の伸びも緩やかである。こうした現象は低インフレと安定した経済成長の中で進行しており、オーストラリア商業産業連盟(ACCI)は投資家の信頼が高まっていると評価している。しかしながら、技能労働者不足が特定の産業での賃金インフレを引き起こす恐れがあり、それが経済成長に影をおとす危険性も指摘されている。

失業率の低下

1999年6月の失業率は7.2%となり、さらに7月には7.0%まで低下した。後者の数値は過去9年間でもっとも低いものであった。ちなみに現政権が誕生した1996年には失業率が8.6%を超えていた。

1999年7月時点で雇用者数は1万7800人増加した一方で、失業者数は1万8500人減少し66万1000人になった。

1999年6月から7月の1カ月間に、フルタイム労働者数が約7200人、パートタイム労働者数が1万600人、各々増加している。

若年失業率も改善し、15歳から19歳の若年層の失業率は23%から21.4%に減少した。この数値は1990年10月以来もっとも低い記録である。

主要新聞の求人広告件数も1年前より20.5%も増えており、失業率が7%を切る日も近いと予想されている。

雇用の伸びは賃上げ要因の1つとなり得るが、今のところそうした兆しは見られない。すなわち、1999年5月末までの3カ月間でフルタイム労働者の賃金は0.6%上昇したに過ぎず、年換算では2.8%の伸びに留まっている。豪州連銀はこの数値を許容範囲としている。

以上の楽観論にも関わらず、注意すべきいくつかの側面が指摘できる。第1に失業統計は不変の労働力参加率により支えられている点が挙げられる。労働力参加率が変化しないことの裏には、仕事もなく職探しをあきらめてしまった多くの「隠れた失業者」の存在が伺える。しかしながら労働市場改善の見通しが強まれば、こうした人達が労働市場に復帰し、失業に関する公式統計に影響を与える可能性がある。

第2に労働市場における需給のミスマッチ問題が挙げられる。技能労働者不足は情報技術産業などでは長い間の懸案となっており、伝統産業(例えば理容・美容業や自動車機械)でも技能労働者不足が報告されている。特に2000年のオリンピック開催地であるシドニーでは、サービス産業の技能労働者不足(料理人など)に悩んでいる。職業紹介業者は政府に対しオリンピックのための臨時ビザを発行し外国人労働者の入国を認めるよう求めている。

労組は自国の労働者を訓練することで問題を解決すべきとの姿勢をとっているが、訓練制度が産業の再編に対応しきれていないため、制度の改善が急務となっている。

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