月間可変賃金、企業は導入に消極的

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

使用者の圧倒的多数が、現行の賃金システムは十分に柔軟であるとし、全国賃金審議会(NWC)と全国労働組合会議(NTUC)の勧告にもかかわらず、月間可変賃金制度(MVC)の導入に消極的な反応を示している。人的資源コンサルタント会社、ワトソン・ワイアットの調査によると5月実施)、MVC導入に関心を示しているのは7%にすぎない。

MVCは、不況期に企業の柔軟性を高めるためにNTUC が1998年10月に提案したものだが、調査対象356社のうち、43%がMVCの導入を予定しておらず、50%が未定である。

ワトソン・ワイアットのラッセル・ハンティングトン所長は、調査結果を予想通りとしている。企業は賃金構造が複雑になるのを嫌っているためだ。MVCを導入すると、賃金は基本給、年間増補賃金(AWS)、可変ボーナス、さらにMVCの4つの要素から構成されることになる。同所長によると、過去2年間に企業は基本給を調整するだけでは景気の悪化に対応し切れていないが、可変ボーナスを組み合わせると、企業は十分な柔軟性を確保できる。

導入に消極的な他の理由として、回答者は、各賃金要素への分割が可能になるには、向こう数年間における予想賃上げ率が控え目すぎるという理由を挙げている。

ワイアット・ワトソン社は、調査結果から向こう3~4年間における賃上げ率は年率4%以下に落ち込むと予想している。この半分をMVCのために保留すれば大幅な基本給の引き上げは望めないが、労働者側は経済が回復の兆しを見せるなか、賃金になんらかのプラスの還元を期待している。

さらに企業は、労働者がMVCをAWSのように「保障済み」と見なすようになるのを恐れている。AWSも柔軟な賃金要素として出発したが、不況時にAWSの支払を止めた企業は少ない。

MVCの受け入れを予定している企業の大半が製造業とホテル業。また、外国企業よりはシンガポール企業がMVCに対し好意的な姿勢を示している。経済危機によって最も大きな打撃を受けたのは製造業とホテル業であり、外国企業よりもシンガポール企業の方の業績が悪化しているためだ。

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