労働市場、好転

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

1999年第1四半期についての労働市場報告によると、解雇件数が減少するとともに、職が増加するなど、労働市場は改善にむかっている。

第1四半期の解雇者数は3402人で、1998年の四半期平均6500~8000人を大きく下回った。とくに顕著な改善を見せたのが製造業。これまで全解雇者数のうち最大の割合を占めていたが、今回は39%で、サービス部門の59%を下回った。これはブルー・カラーの労働者よりもホワイト・カラーの労働者が多く解雇されたことを示している。

一方求人については、求職者100人に対する求人数は44件で、1998年第4四半期の34件を上回った。解雇者数が減少し、求人数が増加したことにより、失業率は4.4%から3.9%に改善している。

労働市場が改善しつつある要因について報告は、CPF拠出率の引き下げなどのコスト削減策と、経済成長が持ち直しつつあることを指摘している。経済成長率は主に製造業によって牽引され、第1四半期にはプラス1.2%まで回復復している。

明るい材料はまだある。労働力省が2000社を対象に行った調査で、各社とも向こう12カ月~24カ月に、いずれの職種についても最大5%の雇用増を見込んでいることがわかった。1999年7月から2000年の6月末までの期間に新規募集される職は少なくとも1万7950件に達する。

そのうち、製造業が最大の4千職以上を提供する。主にエレクトロニクス、石油化学製品、輸送設備の分野である。電気・機械・生産工学などの技術を有する労働者に対する需要が最も高い。

しかしまだ楽観はできない。3.9%という失業率は、好況期の平均失業率のほぼ2倍であり、また1999年3月に6万5900人であった失業者数は、新卒者が労働市場に参入するため、これを上回る職の創出がない限り、増加する可能性も残されている。

そのため労働力省は、コスト削減策を打ち切るには時期尚早との立場を崩していない。景気が底入れしたとはいえ、雇用創出が経済危機以前の水準に回復するにはある程度時間がかかるためだ。

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