南部タイのイワシ漁民、ソンクラ湾をバリケード

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年9月

南部タイのソンクラで、イワシ漁民が近代的漁業を許可する政府の方針に反対し、6月13日から25日の12日間、ソンクラ湾を約350隻のボートでバリケードを作り、近代漁法の禁止を求めた。

この問題の発端は、1996年3月に政府が夜間のイワシ漁において、ライトと目の細かい網の使用を許可したことにある。中小漁民はこれに対し、細かい網での漁は稚魚を獲ってしまい、海の生態系に影響を与え、イワシの捕獲高の減少につながっているとし、その結果、伝統的な漁法を守ってきた中小漁民の平均所得は1日400~500バーツから50~100バーツへと減少してしまったという。全国24万人、85%の漁師が政府の許可撤回を求めている。しかしながら、すぐに夜間のイワシ漁を禁止することは、ライトへ資金投資をしたばかりの漁師には難しいことが予想されている。

このバリケードによってコンテナ110個の運送がキャンセルになり、1千万バーツの損失、また中国向け5000トンのゴム輸出にも大きな影響を与えた。また、毎年この時期2000人のクルーズ観光客がソンクラに停泊し、3000万~4000万バーツの消費をしていくが、このバリケードによって観光客からの収入は見込めなくなった。

6月29日、政府と漁民団体は、4カ月以内に解決の糸口を見つけるワーキング・グループを結成することで合意、このグループはイワシ漁民の代表と反イワシ漁民の代表、関連ビジネスの代表者で構成されることになった。また、チュラロンコン大学の研・メに、海面に光があたったときのイワシ漁の影響についての調査を依頼することになった。

さらに、政府は11月からの新法案を発表し、近海漁業に関しては14m以下のボートを使用し、20個以下のスポットライト、10kWまでの発電機を搭載することを許可した。遠海漁業に関しては、陸から25km離れたところで、16m以下のボートを使用することとした。

また7月5日には、一時的なライトの使用禁止と国立漁業協会(NationalFisheriesCommittee)による勉強会の開催が約束された。これにより、船の大きさで狩猟地域が限定されるゾーニングシステムが1999年7月1日から10月31日まで採用される予定になった。しかし漁民はこれを一時的な解決方法でしかないと批判し、ライトと細かい目の網を搭載した大型船の永続的な禁止を要求している。また、国内・国際的な活動家グループ(フィリピン・アメリカ・オランダなどの)がチュアン首相や農業省、漁業局などへイワシ漁問題を解決するための具体的な方策を求める書簡を提出したとのことである。

その後南部の漁民たちは、民主党の党首が訪れていたタラン地方まで北上し、夜間イワシ漁反対の活動を繰り広げ、この後はバンコクに向かう勢いを見せていた。

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