新宮沢構想と雇用政策の問題点

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

アジア経済再建のために総額300億ドルを支援するとした新宮沢構想において、タイへは530億バーツが融資され、経済危機後の雇用創出基金として活用されることとなった。しかし、多額の資金だけにその分配と使い道について様々な問題が浮上している。

工業省では、2人の日本人専門家を1日4万バーツで60日間雇用し(総経費約500万バーツ)、その支出は基金から捻出するという計画を打ち出していた。しかし、議会がこれを無駄な出費として批判し、工業省に計画の再考を勧告した。議員会は「この計画は特に農村地域に重点を置いた雇用創出計画においてはコストがかかりすぎる」としている。この他、24人の専門家を月額5万5000バーツで雇用するという案も、同様に批判にさらされた。

議員会のメンバーであるスラボン氏は、「日本の融資はタイ人の雇用を支援するための目的で行われるのに、政府は明らかに外国人を金で雇おうとしている。その理由として政府は、このようなプログラムの専門家としての資質をタイ人には持っていないためと説明している」と述べている。

また野党の議員からは、「チュアン首相に公平な資金分配を求めたにもかかわらず、有力な政治家の選挙区に水道施設や医療設備などのプロジェクトが偏って実施されている」ことが指摘されている。

さらに、井戸掘りプロジェクトなどは3つの省の4局(保健省の保健局・工業省の地下資源局・内務省の公共土木局および農村開発促進局)によって重複して施行されており、同じプロジェクトにもかかわらず、地下資源局の予算では22万バーツ、農村開発促進局では110万バーツというように、資金配分は大きく異なっている。

スラボン氏は「省局はプログラムが重複しないように、各省・各局がどの計画を実施するかを明確に示すべき」と述べた。

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