経営側、労使関係関連費用の見直しを求める

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

法律と労働協約によって、スウェーデンの経営者は、労働組合の内部会議と純粋な労働組合教育を除いた、職場における全ての労働組合活動の費用を負担している。団体交渉活動は全ての就業時間中に行われる。最近の研究調査によると、1企業内の従業員100人につき1人は事実上の組合専従者である。労働組合側の経営参加によって、秩序ある労使関係を保つ代わりに、経営側が負担する従業員1人当りの年間コストは、製造業3918クローネ、ホテル・レストラン業3792クローネ、建設業2159クローネ、運輸業2663クローネとなっている。

さらに、職場委員法(the Shop Stewards Act)によって労働組合の代議員の賃金も経営側が支払うものとされる。また、労働組合の職員が労働組合の仕事に数年間従事した後に再任されず、通常業務への職能適性を失った場合、経営側にその人を再訓練する義務があるとされる。同調査によると、天引きの組合費の管理費などを含めた、これらの付加費用をも含めると、経営者側の負担は従業員1人当り年間4400クローネになることが判った。労働組合関連の費用は、スウェーデン経営者連盟(SAF)に加盟している国営企業ではより高額で、年間7000クローネにもなるとしている。

SAF が委託したこの研究は、従業員総数65万人を擁する4部門(なお、民間部門の従業員総数は280万人)の人事部長807人に面接調査して行ったもので、この4部門の経営者総数の半数に当る。4部門とは、製造業、商業、ホテル・レストラン業、建物建設運輸部門である。この調査は、SAF の加盟企業の大企業のみを調査対象としているので、小規模企業や行政部門の状況は違うかもしれない。

企業内の労働組合活動を保障しているのは組合代表者法(1974年)、共同決定法(1976年)、取締役会利益代表法(1974年、1987年修正法)、労働環境法(1977年)などである。

共同決定法は、企業内の労働組合は「経営者と労働組合員との関係に関する問題」、あるいは労働組合員に関係のあるその他の諸問題に関して協議する権利があるとしている。主要な変更が決定される前に、あるいは労働組合員の労働条件または雇用条件が変更される前に、経営者は労働組合と協議を始めなければならない。こうした協議は、当該企業内で開催するものとするが、企業レベルで合意に達しない場合は全国労働組合と経営団体支部との間での全国レベルの協議に持ち上げることができる。また共同決定法は企業側の情報提供義務を規定する。つまり経営者は、企業活動、財政状態、生産方法の変革、人事政策の含意について、常に労働組合側に最新情報を与えなければならない。

組合代表者法では、全ての労働者に、労使協議に限らず協議の事前準備(協約に関する情報提供など)についても、労働組合活動を行うために有給休暇をとる権利を定めている。また、この権利には全国レベルの協議に参加する権利まで含まれている。職場に関係のある質疑や問題点に関する労働組合の教育講習の一部も、有給の就業時間中に行われれる。ただし、労働組合の内部会議、選挙、政治活動には、有給休暇という形で経営者が費用負担しない。法律によれば、労働組合活動に関連して支払われる賃金は、超過勤務、交替勤務の割増金やその他の割増金を含め、当該企業内で定められている就業条件を下回ってはならない。職場労働組合の活動のうち、有給の就業時間を適用する範囲は、労働組合が提案する協議の中で決められる。

もちろん、経営側には協議参加義務が負わされている。企業が労使交渉に割く時間と費用についての調査は、簡単に行えないものの、推定では、経営管理側は労働組合との交渉で経営管理者の持ち時間の6%、経営者1人当り4万2000クローネを使っているとされる。人事部の職員は労働組合との接触に10%の労働時間を割いている。ただし、労働者代表が重役会に参加する費用、欧州労使委員会の協定に関する付加的費用、そして生産費用の中で相当な部分を占める職場安全委員の選出に費やされる有給の就業時間は、今回の調査対象外である。

SAF は、こうしたコストや法律の枠組みの合理性を大いに疑問だとしており、5月17日に提出する予定の新しい労使関係法の計画案を作成した。現行法は1970年代の中頃に導入されたもので、SAF は、この時期以降に技術革新が加速しサービス部門が急激に拡大し大半の企業が世界的な競争に曝されるようになったと考えており、25年も経った古くさい法律は、技術革新に伴う労働移動や必死に職探しをしている人達にとって、障害になっているとしている。

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