NWC、月間可変賃金導入を推奨

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

全国賃金審議会(NWC)は5月28日に発表した「1999-2000年賃金勧告」のなかで、現行のフレキシブル賃金システムをさらに柔軟にするため、全国労働組合会議(NTUC)が提案してきた月間可変賃金(Monthly Variable Component = MVC)の導入を推奨した。導入されれば、労働者は年間賃上げ額の一部を月間可変給として受け取ることになる。

1987年に導入された現行のフレキシブル賃金システムでは、賃金は固定給(基本給)と可変給(年間増補賃金とボーナス)から成り、賃金コストを節減する必要がある場合は、大半の企業は年末に支給する可変給で行う。同システムは、報酬を企業業績に連動させる点で柔軟であり、数年前までの高成長期における小さな景気変動に対してはよく機能してきたが、今回の経済危機では、企業は賃金コストを素早く調整できずに、解雇に訴えるケースが目立った。

そのため NTUC は、企業が突然の景気後退でコスト削減を迫られた際に、人員削減ではなく賃金削減で対応できるよう、かねてより MVC の導入を提案してきた。同案によれば、企業は従業員の年間賃上げ額を二つの部分に分け、一方を基本給のベースアップにあて、残りを月間可変給(MVC)として支払い、景気が急に悪化してコスト削減が必要になった場合は、MVC を減らすという仕組みだ。

この提案に対しては政府も支持を表明している。リー・ブーン・ヤン労働力相は、MVC を導入すれば、ボーナス・年間増補賃金・CPF 拠出金の年末調整を待つことなく、景気の悪化に応じた賃金コストの迅速な節減が可能になり、雇用の確保につながるとの認識を示している。

NWC は今回の賃金勧告で、「MVC の導入により、企業は景気後退や市況悪化の場合に、より機動的に賃金コストを下方調整することができる」として MVC の導入を推奨した。

同勧告では、(1) MVC として利用される賃上げ部分の割合は使用者が組合と協議のうえ決定する、(2)突然の市況悪化に対する賃金調整メカニズムとして機能させるために、MVC を徐々に拡大し、最終的には民間部門の総賃金の約10%とする、(3)80(基本給):20(年間可変給)の現行フレキシブル賃金システムを、将来的には70(基本給):20(月間可変給):10(年間可変給)の賃金構造に変えていく―などを目標としている。

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