NWC、引き続き賃金抑制を勧告

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

全国賃金審議会(NWC)は5月28日、「完全な経済回復を目的とした賃金抑制策の維持」を内容とする「1999-2000年賃金勧告」を発表した。

同勧告はまず、一部の経済部門が回復の兆しを見せているとはいえ、成長は全面的に起こっているとは言えず、業績は企業や部門によって様々で、今後の見通しも不透明であるとの認識を示している。さらに、経済が完全に回復し、その状態が維持されるかどうかは、先進国のパフォーマンスや周辺地域の成り行きにかかっているとし、今回賃金勧告をするうえで、(1)国際投資家のシンガポール経済に対する信頼を回復すること、(2)企業の失われた競争力を回復すること、(3)労働者の雇用を確保し、失業を最小限に抑制すること―を目標として掲げた旨を述べている。

焦点の賃金政策については、「完全な経済回復を達成するために、引き続き賃金抑制策をとることを勧告する」と同時に、高い業績をあげている企業については高い柔軟性を享受できるようにと、以下を提案している。

―業績と見通しの両方が悪化している企業については、引き続き可変賃金によって総賃金の削減・凍結を図る。これは雇用を確保し競争力を回復するためである。

―業績は良好なものの、見通しが不透明な企業については、特別給の形で労働者に報酬を与える。具体的には、年央払いのボーナスを提案する。企業の競争力を圧迫することなく、労働者に適切な報酬を与え、企業に対する忠誠心を強めるためである。

―業績が改善しつつあり、見通しが比較的良好な企業については、年央払いボーナスを含むボーナス、あるいは賃上げによって労働者に報酬を与える。賃上げを実施する場合には、月間可変賃金の形が望ましい。これにより賃金システムの柔軟性が増すと同時に、労働者の意欲を高めて企業業績の改善に寄与することになる。

―高い業績を達成し、見通しも良好な企業(きわめて良好な業績の企業も含め)については、年央払いボーナスを含むボーナスおよび賃上げによって労働者に報酬を与える。賃上げの大部分を月間可変賃金の形で支払うのが望ましい。これにより、フレキシブル賃金システムが増強され、経済状態の変化に備えて企業や経済の機動力を高めることができる。

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