240億ドル・1990年から1997年までの海外労働者の送金額
6月3日、エストラーダ大統領は、国内が不況のため、フィリピン人海外労働者は来年も引き続き多数存在するだろうと述べ、海外労働者福祉庁(OWWA)での庁職員に対する演説で、次のように語った。
「望む、望まないに関わらず、フィリピン労働者の移住は、来年も存続するだろう」。「1997年からのアジアの金融危機に直面して、海外労働者は、送金を通じて国家の経済的崩壊に対処する安全網を提供している」。
さらに、1990年から1997年までの送金額は「240億ドル以上になる」と、大統領は付け加えた。
政府は、7300万人の国家人口のうち400万人以上のフィリピン人海外労働者が存在していると概算している。
移住の増加を期待する政策の中で大統領は、海外労働者の要求する福祉計画を実行することを約束した。その主な内容は、彼らの家族に対する病院、住宅政策、奨学金制度の設立等である。
政府が1997年に中央銀行の国際収支の貿易外収支を基礎に計算した海外労働者の送金額は57億ドルであるが、実際にはこの数倍あると言われている。いずれにしても、これが貿易赤字の解消に大きく寄与しており、現在のところフィリピン経済は海外労働者の送金なしでは成り立たないのが現状である。このため、海外労働者対策が労働雇用省の重要任務の一つとなっており、外局として前出の海外雇用庁(POEA)と海外労働者福祉庁(OWWA)が設置され、外国で働く労働者のための政策が行われている。
賃金の高い海外で働けば、フィリピン国内の家族は普通2~3年で、テレビ、洗濯機等の家庭電化製品が買える。さらにもっと長期に働けば、住宅さえ購入できる。このため多くの人が、国内での労働よりも海外で働く事を望んでいる。
しかし、最近推進政策の負の面も取り上げられるようになってきた。その一つが家庭問題である。海外労働者の家族は、両親等の海外労働が長引くほど家庭内の矛盾が発生しやすい。親の長期の不在は、子供から家庭的な愛情と教育の機会を奪い、その結果子供は反社会的な行動に走りやすく、それは社会的な負担となる。また働くことができる他の家族は、国内での低賃金の労働を受け入れるより、雇用されないでいる方を望む。こうした結果、最後には家庭の分裂に至るケースも出てきている。今回のエストラーダ大統領の見解は、こうした面に配慮したものと言える。
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