民間セクター活躍の場を与える新会社法

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

5月に開催された国会開会スピーチで政府は、ベトナム経済が今年後半に一層の景気後退を経験する可能性があると、初めて認めた。1999年第1四半期の工業生産成長率は10.1%と、最近数年間、例を見ない低い数字にとどまった。特に国営部門の工業生産の伸び悩みが目立ち、国営部門の産業別生産減少率は石炭21.2%、鋼鉄19.4%、セメント1%などとなっている。これまで経済を引っ張ってきた外国投資認可額も顕著な落ち込みを見せ、国営部門の株式会社化による失業者の受け皿としても、民間セクターの成長に期待がかかっている。

これまで非集団セクターの民間企業(注・民間集団セクターには合作社がある)の活動を規定してきたのは、1990年12月に国会承認を受けた個人企業法、会社法である。しかし、国営企業に比べ民間企業には様々な制約が課され、民間企業の健全な発展を阻害してきた。アンケート調査によると、現実に民間セクターが国営企業よりも悪条件に置かれていると感じているのは、営業許可・登録、土地の入手、銀行借り入れ、土地使用権を担保にした借り入れ、外資との合弁、直接輸出などについてで、法や制度の運用による制約が数多く指摘されてきた。

1999年5月29日に国会で承認された会社法は2000年1月1日に施行予定で、従来の個人企業法、会社法よりも民間セクターに活動の自由を与えるものになっており、民間企業と国営企業との間の経済環境格差の是正が意図されている。その主要内容は、(1)営業権獲得のための行政上の手続きを簡略化すること、(2)小口株主の所有権をより広範に認め、大口株主の恣意的な行動から守ること、(3)新規事業の設立にあたり、特定の企業、産業以外では法定資本の水準を設立基準に含めないこと、などである。

この第3点について、チャン・サン・ザー計画投資相は、従来、法定資本が設立基準の一つであったことから、技術的知識や知的所有権が重要なビジネスの起業を妨げていたと指摘している。さらに新会社法では、事業形態として個人企業など5形態を規定し、パートナーシップが初めてその一つになった。国や他の政治・社会機関が設立した組織が、新会社法で規定された5形態のビジネスに転換された場合にも、新会社法が適用されることになる。

これに先立ち、グエン・タン・ズン第一副首相は国会で、銀行貸し出しを受ける際に、これまでは非効率な国営企業が非常に低利の融資を受けていたが、これれを徐々に改め、投資促進のために政府が完全に支配している特別開発プロジェクトや地域を除いて、国営企業と民間企業とに同じ条件で融資させる方向にあると述べた。

国営企業

一方、国営企業についての法規は1995年制定の国営企業法である。ファン・バン・カイ首相は、国営企業の分類の仕方や、国家資本が国営企業でどのように管理されているかといった国営企業法の内容および運用が、国営企業改革を進める上でどのように障害になっているか、閣僚、各人民委員会の委員長、政府機関の長などに検討させることにした。その結果をもとに、国営企業法の運用を改善し、同法に必要な改変を加える予定である。

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