経済危機でも情報技術専門職の賃上げ顕著

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

経済危機にもかかわらず1998年の情報技術専門職の賃金は対前年比で平均2%上昇した。1990年から1997年までの平均賃上げ率5.5%よりは低いものの、賃金削減や解雇に直面した他業種に比べればはるかに恵まれている。なかには前年より6000シンガポールドルもアップした職種もある。

情報技術管理協会(ITMA)とナンヤン・ビジネス・スクール情報管理研究センター(Imarc)が共同で情報技術分野17職種(公共・民間両部門)に就いている1930人(全情報技術労働者の10%)を対象に調査を行った。それによればコンピューター・オペレーターの1998年の給与は前年比12%上昇して3万2000シンガポールドルに、またネットワークやテレコミュニケーション分野の管理職の平均年収は同7%上昇して9万8000シンガポールドルに達した。

もっとも、情報技術職の支払う代償は小さくはない。例えば、コンピューター・システムの整備にあたる労働者の場合、日中はメンテナンスやシステム増強が図れないため、勤務が深夜まで及ぶことがある。また一部の職種では、時間に関わりなく問題が生じた際にはいつでも出勤しなくてはならない。

一方、同じ情報技術産業でも賃金が低下した職種もある。例えばアプリケーション・プログラマーとシステム・プログラマーの年収は前年比8%減で、それぞれ平均3万7000シンガポールドルと5万シンガポールドルにとどまった。2000年問題処理のために安価な外国人労働者が臨時雇用されたためだ。

1999年は解雇減少、賃金カットの見込み

ワトソン・ワイアットが2月に372社を対象に実施した調査で、1999年には解雇を予定している企業は8%であることがわかった。1998年に調査対象企業の26%が労働力の15%を解雇している。解雇の可能性が最も高いのは建設、不動産、レストラン、小売、エレクトロニクス製造、金融である。

また、多国籍企業の雇用は現地企業と比べて不安定であることもわかった。1998年、多国籍企業の労働者のうち28%が解雇されたのに対し、現地企業は19%。経済危機へ対応する際の文化の違いが浮き彫りになった。現地企業は負担を従業員の間で分担し、なるべく人員を維持しようとするが、多国籍企業は人員を整理しようとする傾向がある。

その代わり、現地企業の従業員は賃金カットを受け入れざるをえない。現地企業の従業員の賃金は1999年には0.4%削減される見通しだ。一方、多国籍企業の上級管理職の賃金は2.1%引き上げられる見込みである。

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