若年者のための職業編入計画

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年6月

はじめに

若年者に就労経験を積ませることを目的とする職業編入計画は、新たな失業対策手段と言うことができる。これは、若年者が労働の場と直接的なコンタクトを持つことを可能とさせるだけでなく、雇用の創出をもたらす可能性もある。さらに、労働の現場での経験を積むことは、若年者が将来において、安定して、より高い賃金の労働ポストを見つけだす上での助けとなるここともある。というのは、現場での経験を持っているかどうかは、企業が採用決定をする上でますます重要な役割を果たすようになってきているからである。従来は採用の際の選択基準として、どれだけ知識を有しているかが重視されていた。しかし、そのような知識を企業実務で現実に役立てることは困難であることが明らかとなるにつれ、実務経験がより重視されるようになってきている。

職業編入計画の主たる特徴の一つは、専門性の高い職業を対象としていることにある。この点が、職業編入計画の新しい点であり、この計画を説得力のあるものとさせている。

また、職業編入計画はヤミ労働を承認し、(ある面では)適法化することを目指す労働政策と見ることも可能である。現在、ヤミ労働は経済危機や深刻な社会情勢のために失業率がきわめて高い州において広まっており、政府はこの現象をなんとかその管理下に置いて規制しようとしている。職業編入計画が対象としている若年者は、現実には、このようなヤミ労働に向かう危険性が高いため、このような若年者に対して職業編入計画をとおして雇用の場を与えようとすることには十分な正当性がある。もちろん、職業編入計画をとおして与えられる雇用については、賃金が低いという問題はある。しかし、今後の職業キャリアに好影響を与えるし、いずれにせよヤミ労働という非正規な雇用と比べると望ましいものと言える。

職業編入計画に関して行われた実態調査によると、この制度が最も利用されている州はアブルッツォ州で、そこでは3902の計画が承認されていた。また,この制度に参加し、企業で実際に雇用された若年者の数は1万8218人であり、法律が想定していたように、主として南部・中部の若年者であった。職業編入計画が行われている部門や職種は、多岐にわたっているし、業種で見ても工業、農業、商業、協同組合などに及んでいる。

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