失業増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年6月

労働経済の専門家であるサンパウロ州カンビーナス大学経済研究所のマルシオ・ポシマン教授は、ブラジル地理統計資料院の資料と貿易結果の動向から「経済開放、輸入増加、失業増加の関連性を調査した結果、国内工業は経済開放のために1985~1998年に124万人の失業を出した。この期間に国内工業雇用は420万人から240万人に43%も減少した。同期間に工業生産はわずか2.7%増加したに過ぎず、工業製品輸入が75%増加して内需増加をまかなった。この二つの指数の差72.5%が、開放政策と国内通貨高政策によって、工業から雇用を消滅させた。」と発表している。

ブラジルでは輸入によって国内の雇用が消滅したことを、雇用の輸出と呼んでいる。開放によってブラジルは先進国からの製品を大量に輸入しており、ブラジルの輸入によって先進国に雇用を増大させた。雇用減少の約30%は生産性向上、下請け化の増加など企業組織変更がもたらしたものであると同教授は判断している。しかし、政府は失業増加原因を、工業の生産性向上投資だけにあると発表しており、輸入品に原因があるとは認めない。同教授は1990年以来工業生産は横這いでありながら、失業が増加したことを、国産すべきところを輸入品によって代行した結果だと分析している。

労組の社会経済研究機関であるDIEESEの発表によると、1999年に国内総生産が4%マイナスとなれば、サンパウロ首都圏の失業者はさらに20万人増加して、合計159万4000人となり、率では18.3%になると予想している。DIEESE は、この率に達すると、失業から次の再就職までの平均期間は1年半になると見ている。ブラジル政府は3月に結んだIMFとの新協定で、1999年のGDPは3.5~4%のマイナスを予想し、これをもとにDIEESEが試算したものである。試算担当者によると、雇用市場の将来は全く期待が持てず、また現状を短期的に逆転させることも不可能である。10年前にはサンパウロ首都圏の失業率は大体8.9%の水準にあったが、この水準へ下げるにはGDPを年間7%ずつ10年間連続して成長させる必要があると見ている。1999年1月にサンパウロ首都圏では、再就職までの平均待ち時間は37週とあった。これがリセッションとともに増大して、失業者は多分職探しをあきらめるだろうと予想している。職業紹介所はどこも連日長い行列ができており、以前は危機の時期に失業者を吸収していたアングラ経済も既に飽和状態となって、緩衝の役割を果たせなくなってきた。1999年の失業者は、過去に例を見ない苦境に立たされると見ている。

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