炭鉱業と港湾業で労使関係悪化の可能性

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

オーストラリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年5月

炭鉱業

Rio Tinto社はクィンズランド州にあるゴードンストン炭鉱の再開を試みている。同炭鉱は米国のARCO社が所有していたが、同社が非組合員を雇用しようとしたため紛争が生じ、1998年になって労使関係委員会が同社のこの試みをしりぞけた。その後、同炭鉱はRio Tinto社の子会社であるパシフィック・コール社に売却された。Rio Tinto社は非組合員の利用を公言している。炭鉱業を組織化する建設林業鉱山エネルギー労組(CFMEU)はこの1年間、同炭鉱でピケットを張っており、同社との対立は不可避と思われる。今後予想されるのは、ゴードンストン炭鉱をめぐり長く激しい労使紛争が続くことである。

港湾業

1998年の港湾労使紛争の主役であったパトリック社の競争相手であるP&O Ports社がパトリック社と同様の生産性向上を求めたことから、港湾業でも紛争が生じている。オーストラリア海員組合(MUA)の連邦部門は同社との協約に合意したが、戦闘的なシドニー支部はこの協約をしりぞけた。同協約は港湾労働者の週労働時間を35時間から42時間に延長し、多様なシフト制を導入するものであった。シドニー支部は、同協約により賃金が20%低下し、シフト制の安全性が保証されていないと主張した。世論はP&O Ports社がMUAとの全面戦争を望むかどうかで真っ二つに分かれた。問題は、MUA内部の運営も絡み複雑になっている。

他方、パトリック社は大晦日の労働を命じた労使関係委員会命令違反を理由にMUAに対し訴訟を提起し、各違反に対し1万豪ドルを請求している。これに対しMUAは組合員に職場離脱を命じていないため労組には責任がないと主張しているが、同社はMUAが離脱を促したとの組合員の陳述書の存在を示唆した。この問題は連邦裁判所までもつれ込むと予想される。

また、ニューキャッスル埠頭では縄張り争いが発生している。輸送会社であるトール・グループは材木を荷積みするためにパトリック社から借りている停泊地で自社の労働者を働かせたいと考えた。問題は、同社の労働者が輸送労働者組合(TWU)に加盟していることにあった。パトリック社が荷下ろしにTWU組合員を利用した際に、MUA組合員がストを実施した。トール・グループの苦情を受けてオーストラリア競争消費者委員会(ACCC)はMUAに対しストの理由説明を求めた。これは、労使紛争への同委員会の大きな関与を予示させるものである。他方、オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は仲裁の方向で途を探っている。職場関係法により労組間の競争が高まり、縄張り争いが多く発生しているためである。

ニューキャッスル埠頭での縄張り争いはクローズド・ショップ制の弱体化を目的とした経営側の計画的な戦略である可能性もある。さらに、港湾業への参入を狙った輸送会社の思惑もあるようである。

1999年5月 オーストラリアの記事一覧

関連情報