労働時間規則で鉱山労働者が勝訴

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

1998年10月1日に発効した労働時間規則をめぐって鉱山会社RJBと5人の同炭坑保安係員が争っていた裁判で、高等法院は3月3日、EU労働時間規制に基づき本人にその意思がなければ週48時間を超えて労働する必要はないとの保安係員らの主張を認めた。

労働時間規則は、1993年にEU社会相理事会で採択された「労働時間指令」(1996年11月施行)を国内法化したもので、1998年10月1日に発効した。週労働時間、夜間労働、休日・休息、有給休暇などについて定めている(本誌1998年6、12月号参照)。今回の裁判で争点となった週労働時間については、時間外労働を含む1週間の平均総労働時間の上限を17週間の平均で48時間と定めているが、労働者個人が自発的に同規則の適用除外に同意した場合は、この限りではない。

RJB側は、労働時間に関する規定は雇用契約の一部として権利を付与したり義務を課したりするものではないと主張していたが、高等法院判事は、48時間の上限週労働時間の導入は、従業員がその法的義務の適用除外を書面で自発的に同意しない限り「あらゆる雇用契約に適用されるべき義務要求」であるとした。

上記の週労働時間の規定にしたがえば、17週単位の変形労働時間制は許容されることになるが、これに関連して今回の判決は次のことも明確にした。すなわち、17週間の平均算定期間における週労働時間の上限を48時間とする権利を放棄していない労働者で、同期間が終了する前に同期間内の最大労働時間(48時間×17週)を消化した者は、同期間における週平均労働時間が上限以内に収まるまで労働を拒否することができる。

今回の判決について労働組合会議(TUC)のモンクス書記長は、使用者が従業員の合意なしに48時間を超える労働を課すことはできないことを意味すると歓迎しながらも、抜け穴を探す使用者が今後も絶えないであろうと各組合に警戒を呼びかけた。

一方、英国経営者協会(IoD:主に中規模企業の経営者で構成される実業家団体)は、今回の判決によって労働時間指令が最も生産的かつ柔軟な方法を追求する使用者の能力を阻害するものであることがはっきりしたと論評している。

なお、RJBは控訴院に上訴する権利がある。

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