労組が時間外労働に関するキャンペーンを開始

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は1998年末に労働時間と雇用保障に関するキャンペーンを計画中であると公表した。

キャンペーンの基本的な柱は「8時間労働、8時間休養、8時間睡眠」である。ジョージ ACTU 議長はフルタイム雇用の減少、パートタイム労働者や臨時労働者、派遣労働者の増加といった問題への労組の取り組みの遅れを認識し、こうした傾向に対抗するためにもキャンペーンの目標を達成する必要があると述べた。

今回のキャンペーンは、労働市場が長時間労働者(いわゆるエリート階層)と短時間労働者(いわゆるワーキング・プア)に2極分化している状況を打破することも目的としている。具体的には週労働時間を短縮し(ある提案では30時間)、それにより労働時間の再配分を行うという提案が検討されている。

労働時間に関する調査結果

オーストラリア労使関係研究訓練センター(ACIRRT)が公表した労働時間に関する調査結果によると、週49時間以上働いているフルタイム労働者の割合が1978年の20%から1997年には30%に上昇した。つまり、週当りの時間外労働はのべおよそ1900万時間となる。このうちの60%がサービス残業であった。

ACTU はこの時間外労働が50万人分のフルタイム雇用に匹敵すると見積もっている。金融部門組合(FSU)による調査結果でも、金融・銀行業で働く労働者が総計で週当り100万時間近い時間外労働を行っており、そのほとんどがサービス残業であることが明らかとされた。同産業で働く31万人の労働者の3分の1以上が定期的に時間外労働を行っていた。このうちの3分の2が割増賃金や代休を与えられていない。FSU はこの残業分が2万5000人分のフルタイム雇用に匹敵すると考えている。

現実には、このキャンペーンの目標達成はかなり困難ではないかと予想されている。というのは労働時間の規制は中央集権的な体系を必要とするが、現在の労使関係制度は分権化を指向しており、制度の分権化には ACTU も関与していたためである。

これに対し ACTU 幹部は企業別交渉を通じた問題解決を示唆している。それによると、労組はある種のパターンバーゲニングを通じ標準労働時間を設定する。ただし、労組組織率の低下を前提にすると、この案は実現が難しい。

多くの国民は企業別交渉自体が労働条件の悪化や長時間労働をもたらしたと考えている。ACIRRT の報告書は、この問題に関し労組が教会や社会事業団体の協力を求めるべきであると提案している。

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