職業紹介事業民営化のその後

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

従来公共職業紹介所(CES)が行っていた職業紹介業務が1998年5月から正式に民間業者等に委託された。新しい制度の下では失業手当受給者はまずセンターリンク(Centrelink)に登録し、民間職業紹介業者が紹介される。業者が紹介に成功すれば、政府はサービスに対する代金を業者に支払う仕組みとなっている。政府が支払う料金は求職者の就職困難度に比例する。制度を利用する企業は職業紹介サービスに対し料金を支払わねばならない場合もある。

制度の問題点

指摘されていた問題は次のようにまとめられる。第一に政府が料金を支払うのは失業手当受給者に対するサービスだけである点である。つまり、働いている配偶者がいる者など失業手当を受けていない者は政府からの料金支払いの対象となっていないため、これらの者に対する職業紹介サービス料金は使用者などに課されることになる。第二に職業紹介機関が求人情報をデータベースに載せない傾向にある点である。これが労働市場の分断をもたらしている。第三に最も求職が難しく、援助を必要としている者(長期失業者が典型)ほど制度を利用しにくい点である。この他に求職者に対する訓練コストが紹介機関の負担となるため、訓練が行われにくいこと、政府から支払われる料金が採算に合わないこと、などが指摘された。

制度の改革

政府は批判に応える形で、1億豪ドルの改革案を提示し、1999年1月に実行に移した。改革の中で最も重要なのは、失業者に職業紹介機関への登録とそのサービスの利用が義務づけられ、それを怠れば手当がカットされる点である。加えて政府の支払う料金の低さから財政難に陥る紹介機関が存在するとの批判に応えるために、政府は職業紹介1件につき200豪ドルを上限とする付加手当を払うことになった(1000豪ドルの特別補助金も用意)。これ以外に手付金制度も導入される。料金支払いの対象となっていない者の一部は訓練や職業紹介支援を受けられることになる。

改革に対する批判

上述の改革に対しても、政府の支払う額が低すぎるとの批判が展開されている。実際、民間業者だけでなく政府系の職業紹介機関であるEmployment Nationalも1998会計年度に1200万豪ドルの損失を計上した。

また政府自身がJob-Networkを利用していない点も問題となった。雇用庁長官は1998年12月以降の利用を言明していた。

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