経済危機で人種間の格差拡大

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

経済情勢の悪化は労働市場で人種格差が拡大されており、最近確立した黒人の中流はおびやかされると心配する声が出ている。

労組の社会経済研究機関であるDIEESEの発表によると、1997年にサンパウロ首都圏の黒人と混血人種の失業率は白人より38%多く、経済危機が悪化するにしたがい労働市場での格差は広がっている。分析によると黒人と混血は大部分が専門訓練をあまり必要としない建設労働者や家事手伝いといった職業に従事しているために、経済危機による失業により苦しむ構造になっている。

ブラジルも経済のグローバル化に組み込まれる部門が増加して、高い教育水準を持つ訓練された労働力の需要が日々増加しているために、企業は訓練と教育水準の低い労働力を整理せざるを得なくなっている。国民の教育水準からすると黒人は最も低く、初等科3年以下の教育水準を指す実生活上の非識字者は40.24%に達する、とブラジル地理統計資料院の公式資料にある。白人はこの指数が18.5%である。DIEESEの資料では、サンパウロ首都圏で失業すると、次の就職まで平均40週間を要した(1998年9月)が、黒人は安い給料でも、白人が好まない仕事でも受け入れるため、白人よりも失業期間は短くなっている。サンパウロ大学の MILTON SANTOS 人文研究教授は、雇用増加をもたらす経済成長政策が採用されないと、グローバル化している産業での新規雇用への道はせばめられると予想している。またグローバル経済は専門化された労働力を要求するが、黒人は学力が低く専門化が困難なために、黒人と白人の経済格差は今後も拡大していくと見ている。

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