基礎情報:シンガポール(2005年)

基礎データ

  • 国名:シンガポール共和国 (Republic of Singapore)
  • 人口:435万人 (2006年3月)
  • 実質GDP成長率:6.4% (2005年)
  • GDP:1,168億ドル (2005年)
  • 一人あたりGDP:2万6,833ドル (2005年)
  • 労働力人口:234万1,900人 (2004年)
  • 就業者数:220万6,600人 (2004年)
  • 失業率:3.1% (2005年)

I.労働関係の主な動き

1.労働市場

2005年は好調な経済状況を受け、労働市場も概ね安定して推移した。失業率は、1997~98年のアジア通貨危機以前の水準(1.9%)に比べると、一時は2倍近い数字にまで上昇したが、5.7%と17年ぶりに最悪水準となった03年9月末時点に比べると、それほど悲観的な数字ではない。05年1~3月期の就業者数は222万人で、前期から1万1600万人増加した。

業種別では、就業者全体の69%を占めるサービス業が好調。製造業も微減にとどめているが、このところ連続で減少していた建設業は増加へと転じている。05年1~3月期の解雇者数は2000人で、前期の3207人から大きく改善した。04年同期の2962人と比べても明らかに回復している。概ねすべての分野で雇用が伸び、2005年の失業率は3.1%となった。

2.外国人労働者受入れ緩和

経済の堅調な推移を受け、外国人労働者の受入れ枠に対する規制緩和の動きが広がっている。人材開発省(MOM)は3月10日、特定の国・地域からの労働者の受入れ枠を定めた「マン・イヤー・エンタイトルメンツ(MYE)」を改正すると発表した。特に建設業界における労働力不足を解消する狙いがある。

これにより2005年4月1日から、(1)熟練外国人労働者の労働許可証「ワーク・パーミット(Work Permit)」の更新義務付けの撤廃、(2)労働許可証の有効期間が残っている労働者について雇用主が変わる場合、新たな雇用主に対するMYEの条件順守義務の免除、(3)MYEの有効期限の延期、(4)複数の雇用主の下での就労に対する許可――などの措置が導入された。また、外国人労働者の上限規制も、7月1日から製造業が50%から60%へ、サービス業が30%から40%へそれぞれ引き上られた。上限を超えた場合、熟練、非熟練にかかわらず労働者1人当たり月500シンガポールドルの雇用税が課される。

留学や就労目的で海外に在住するシンガポール人は約10万人と言われている。こうした政策は「頭脳流出」といわれる在外国民の帰国を促すのが狙い。頭脳流出に歯止めがかかるか行方が注目されている。

3.財政黒字を国民に還元

政府は財政黒字を国民に還元するため、配当金として全成人に1人あたり最大800Sドルの現金を支給するという特別政策を打ち出した。兵役終了者にも別枠で一時金を支給するなど還元策に合計26億Sドルを拠出する。

05年度の財政収支は当初、2年度連続の財政黒字(2億1000万Sドル)を予想されていたが、最終的には2倍の4億3000万Sドルに膨らむ見込みになった。前年度分とあわせ黒字額は約6億Sドルに上るもよう。06年度の歳入は前年度比5.4%増の290億Sドル、歳出は同6.1%増の306億Sドル。補正後の財政赤字は28億6000万Sドルを見込むが、補正予算として06年度は35億9000万Sドルを計上する。財政黒字の還元分はこのうち26億Sドルで、実際の黒字額を大幅に上回る。

配当金として支給される特別ボーナスは、総額14億3000万Sドル。年収や保有不動産により200、400、600、800Sドルの4種類を配る。全成人の45%が最高額の800Sドルを5月1日付で受け取ることになる。また、兵役導入40周年を記念し、40万人に上る兵役・予備役の終了者全員にも1人400Sドルの一時金が支給される。兵役中の場合は100Sドルで、合計2億Sドルを拠出する。これとは別に、将来的には予備役終了時に一時金300Sドルを支給する新制度も導入する。

さらに、低所得者層への支援策も手厚く盛り込んだ。月収1500Sドル以下の労働者は、「労働扶助一時金」として最大1200Sドルを受け取れる。最大で1万8500Sドルの恩恵を受ける世帯もあるという。

4.人的資源開発の拡充

技能労働者の労働力不足が顕在化する中、人的資源開発が重要な課題となっている。人材開発省(MOM)が発表した2005年人材訓練調査によると、2004年7月~2005年6月に何らかの職業訓練を受けた人の比率(対労働力人口=15~64歳)は、前年の25%を上回り27%となった。3年ぶりに前年を上回ったものの、過去最高を記録した2002年の34%にはまだ届いていない。

一方、受講期間は平均15日となり、前年の17日から微減している。分野別の参加率は、保険が59%で最も高く、これに公務員・教育(58%)、医療・社会サービス(51%)、金融(43%)が続いき、最も低かったのは飲食店の9%だった。職種別では専門職が52%で最高。このほか準専門職・技術職(39%)、管理職(30%)の参加が目立っている。経営者(7%)、清掃などの作業員(9%)は1けた台にとどまっている。

研修参加者の感想(複数回答)は、「知識・技能が向上した」(83%)、「仕事の効率が上がった」(69%)、「顧客満足度を高めることができた」(38%)など。MOMは訓練参加者の割合が増加したことについて、経済回復が貢献したためと分析しており、今後予想されるさらなる労働力不足に対応するため、職業訓練策をより拡充していきたいとしている。

表:業種別研修参加状況
業種 参加率(%)
製造業 21
建設業 17
サービス業 31
卸売り・小売 14
ホテル・飲食店 14
運輸・物流・通信 29
金融サービス 47
ビジネス・不動産サービス 27
行政・社会 48
その他 55

出所:MOM

参考:

  1. Ministry of Manpower(人的資源省)
  2. Statistics Singapore(国家統計局)
  3. Singapore National Trade Union Congress(シンガポール労働組合会議)
  4. NNA
  5. 1シンガポールドル=72.30円(※みずほ銀行ホームページ2006年6月22日現在のレート参考)

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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:シンガポール」

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