基礎情報:シンガポール(2004年)

基礎データ

  • 国名:シンガポール共和国(Republic of Singapore)
  • 人口:424万300人 (2004年)
  • 経済成長率:8.4%(2004年)
  • GDP:870億米ドル(2004年)
  • 一人あたりGDP:2万5,191米ドル(2004年)
  • 労働力人口:218万3,300人 (2004年)
  • 失業率:4.3%(2004年)
  • 就業者数:206万7,000人(2004年)

資料出所:外務省、財務省、シンガポール統計局、シンガポール労働省

I.2004年の動向

1. 経済および雇用失業状況の概況

実質GDP成長率(確定値)は、アメリカ向けを始めとする電子製品と、欧州向け化学・薬品関連製品の輸出の好調を受け、SARS等の影響で低迷した2003年の1.1%から8.4%へと大幅に回復した。

失業率は、前年比マイナス0.3ポイントの4.3%で、2%以下で推移していたアジア経済危機以前の水準には及ばないものの若干の改善がみられた(図1参照)。

就業者数は前年比3万3,000人増の206万7,000人(表2参照)。創出された雇用の大部分がサービス産業によるもの。海外からの投資の増大が雇用創出にプラスの影響を与えていることから、経済開発庁(EDB)は、1)国際統括本部(IHQ)特別優遇措置(シンガポールに国際統括本部を設立する企業に対する法人税を5~20年間低減する)、2)地域統括本部(RHQ)特別優遇措置(シンガポールへ進出して3年以内の企業で所定の最低投資コミットメントを満たせば法人所得税15%の優遇税率を3年間適用する)などの投資奨励措置を展開している。一方、解雇労働者の再雇用率(半年以内に仕事に就く割合)は依然として低く、中でも高齢者の再就職が困難となっている。

2. 2004年の労働事情

(1)少子高齢化の進展

シンガポール統計年鑑によると、2004年の人口は424万300人(外国人居住者を含む)。年齢別にみると、30万人を超えているのは男女とも、「30-39歳層」と「40-49歳層」でいわゆる働き盛りの層が厚い。

合計特殊出生率は1990年の1.83から2000年には1.60、2003年は1.25にまで低下しており、少子化が進んでいる。高齢化も同時に進んでおり、65歳以上の高齢者人口は2003年の約23万7,000人から、2030年には79万5,900人に増加、就業者3.5人で1人の退職者を支えなければならないと予想されている。

2004年8月に就任したリー新首相が就任演説の中で、「少子化は非常に深刻な問題」と述べているように新政権にとって少子化対策は最も力を入れるべき施策の一つ。

8月に発表された少子化対策の主な内容は以下の通り。

  1. 結婚後の住宅購入等に対する補助金の積み増し、
  2. 出産等費用への補助拡充、
  3. 育児費用の助成、
  4. 有給産休期間の延長、
  5. 仕事と家庭生活の両立のための支援、

(2)中央積立基金(CPF)制度改正

中央積立基金(CPF)は、労働者の老後生活資金のみならず医療、住宅ローンなどの資金確保にも利用される多目的社会保障システムで、雇用主および従業員の双方に積立が義務付けられている。拠出金は年齢と所得に応じて使用者と本人が負担する。

少子高齢化に伴い、CPFの運用が困難になっていることを受け、1)CPF拠出率の変更、2)CPF拠出対象となる月額通常賃金の最高限度額の段階的引き下げなどを内容とする制度改革が進められている。

(1)CPF拠出率の変更

CPFの拠出は不況時には人員削減の一因になるなど使用者にとって負担が重いものである。拠出率は1994年以来、雇用主、従業員とも従業員月収の20%であった。使用者拠出率は1997年のアジア経済危機の対策の一環として企業コストの軽減を図るため、1999年1月に20%から10%に引き下げられた後、段階的に20%まで戻された(2005年は19.0%)(表2参照)。

(2)CPF拠出対象となる月額通常賃金の最高限度額の段階的引き下げ

CPFの拠出対象となる月額通常賃金の最高限度額について、S$6,000からS$5,000に段階的な引き下げが行われている。

所得上限引き下げ(3段階)のスケジュール

2004年1月1日から5,500Sドル

2005年1月1日から5,000Sドル

2006年1月1日から4,500Sドル

CPF拠出率の変更は従業員の貯蓄、CPFが不足している場合、差額を従業員自身が現金で支払わなければならないため、退職計画や住宅ローン返済に影響を及ぼす可能性がある。2006年1月1日以降、さらなる改正が予定されており、とりわけ拠出率および給与上限の引き下げが実施された50~55歳までの中高年へ与える影響が最も大きいと考えられている。

(3)外国人労働者をめぐる施策

複数の民族で構成されるシンガポール。このところサービス業界を中心に外国人労働者への依存度が高まっている。政府は経済の競争力を維持するためには外国人労働者が不可欠と考えており、2004年12月時点における外国人労働者数は、62万1,400人で国内雇用の28.2%を占める。

外国人労働力の需給は、「依存率」と「賦課金(Levy)」という2つの手段でコントロールされる。依存率とは、就労者数に占める外国人の割合を産業別に設定したものであり、賦課金とは、いわば外国人労働者の採用に対する課税である。いずれも経済状況に応じて人材開発省が適宜変更している。現在の依存率と賦課金は表3のとおり。

(4)ポータブル型医療保険制度の導入

転職・失職した場合でも医療保険の対象になり、同時に使用者が節税できるポータブル型医療保険制度が2004年4月、導入された。使用者は「ポータブル型医療福利スキーム(Portable Medical Benefits Scheme=PMBS)」および「移動型医療保険スキーム(Transferable Medical Insurance Scheme=TMIS)」のいずれかを選択することができる。PMBSは従業員の医療保険加入を使用者が助成する制度で、使用者は毎月、従業員のCPFの医療保険口座へ決まった額(月給の1%以上)を拠出する。仮に当該従業員が解雇などの理由で退社しても、医療保険口座から保険料が納められているかぎり、保障の対象になり、使用者側が通院・入院費を負担せずにすむ。PMBS利用企業が税控除を受けるためには、2004年4月1日以前に雇用したシンガポール人従業員の20%以上、それ以降に採用したシンガポール人従業員全員を保険に加入させなくてはらない。

一方、TMISは既存の企業団体保険に追加する制度で、CPF制度とは連携しない。転職・解雇後も保険加入を継続できることがメリットとなっている。

ポータブル型医療福利スキーム(Portable Medical Benefits Scheme=PMBS)

  1. 入院費用の支払い責任は従業員が負う。
  2. 使用者は従業員のCPF医療保険口座に追加拠出する(少なくとも月給の1%)。
  3. 従業員は追加拠出を利用して指定の入院費用保険に加入する。
  4. 従業員が失業した場合でも、保険料を納めているかぎり保険金を受け取ることができる。

移動型医療保険スキーム(Transferabel Medical Insurance Scheme=TMIS)

  1. 多くの企業が提供している団体加入保険が基礎。
  2. 従業員は転職しても保障の対象で、退職年齢(62歳)まで入院費用保険金が受け取ることができる。
  3. 従業員11人以上の企業が加入できる。

第1図:失業率推移(季節調整済)

資料出所:Manpower Research and Statistics Department

資料出所: Singapore Department of Statistics "Labor Market Statistics 2004"

資料出所:CPFホームページ

資料出所:労働省ホームページ


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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:シンガポール」

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