基礎情報:韓国(2005年)

基礎データ

  • 国名:大韓民国 (Republic of Korea)
  • 人口:4,782万人 (2005年)
  • 実質GDP成長率:4.6% (2004年)
  • GDP:6,797億米ドル (2004年)
  • 一人あたりGDP:14,136米ドル (2004年)
  • 労働力人口:2,353万人 (2005年12月)
  • 就業者数:2,270万人 (2005年12月)
  • 失業率:3.5% (2005年12月)

資料出所:(人口):UN "World Population Prospects" (2004)、
(GDP):IMF "World Economic Outlook Database"、
(その他):韓国国家統計局

I.労働関係の主な動き

(1)労働市場の動向

1997年のアジア金融危機以降、韓国経済は構造改革プログラムの下で大きな変貌を遂げ、労働市場もその影響を受けてきた。失業率は1998年をピークに低下傾向にあるが、近年は経済成長の減速とともに「雇用なき成長」が懸念されている。技術開発競争の激化と生産性の上昇に伴う雇用吸収力の低下、硬直的な労働市場、サービス産業の未成熟、企業の目が対外投資に向いていること等が要因として指摘されている。雇用創出は経済における最優先課題の一つとなっている。そのほか労働市場における問題は多岐にわたっており、若年層の失業、中高齢者の雇用の安定、人口の高齢化に伴う高齢労働力への対応、労働市場の二極化すなわち大企業と中小企業、正規労働者と非正規労働者の格差などの問題がある。この非正規労働者の問題は、究極的には雇用機会の不足につながるものといえる。

若年失業とミスマッチ

2005年の失業率は前年と同水準の3.7%であった。20~29才層では7.7%と全体の約2倍の高水準となった。若者の就職難の背景には求人と求職のミスマッチが指摘されており、求人の大半を占める中小企業の職場は3D(日本でいう3K)として若者に忌避され、その結果として中小企業は人手不足に陥っている。一方で求職者は大企業の求人への応募に集中し、倍率が数百倍を超えることもある。企業側は殺到する応募者の中から求める人材を選抜するため、採用面接方法に工夫を凝らす例もみられる。一方、特にIT分野では技術の進歩のために必要な人材のスキルが高度化していることから、企業が大学と連携して自ら人材育成に取り組む例もみられる。

人口の高齢化と労働力

韓国では出生率の低下と人口の高齢化が急速に進行している。韓国国家統計局が2005年2月に公表した人口予測によれば、65才以上人口の高齢者の割合は2050年までに人口の37.7%に達し、世界一となる。このまま高齢化が進行すれば経済成長に決定的なダメージとなるため、出産促進策を導入するべきとの見方もある。また高齢労働者の増加に対応して、賃金システムの見直し、職場での教育訓練の充実、より働きやすい雇用環境の整備などの必要性が指摘されている。

非正規労働者の増加

韓国国家統計局によれば2005年の非正規労働者(temporary employees)数は506万人、前年より2万6000人減少したものの全雇用労働者(wage and salary workers)1519万人の3分の1を占めるに到っている。OECDが11月に発表したレポート(Economic Survey of Korea 2005)では、非正規労働者の割合が上昇すると公平性と効率性への懸念が高まるとし、韓国の政策課題として正規労働者の雇用保護の緩和、非正規労働者に対するセーフティ・ネットの拡大を含む包括的な政策により労働市場の柔軟化を図ることを提言している。

(2)雇用政策

雇用創出とミスマッチ解消

盧武鉉大統領は2005年2月、就任2年目の国会演説の中で、将来の経済回復に期待を示すとともに、サービス業と製造業の支援による雇用創出を約束した。政府は雇用創出のために様々な政策を打ち出しており、それらは直接的な支援(雇用維持・新規雇用のための助成金、社会的職業の新規雇用創出、起業支援)と、間接的な支援(職業訓練、OJTの充実による求職活動の支援、雇用進・安定のためのインフラ整備)とに大別できる。例えば「若年失業対策プロジェクト」では15~29才層を対象に、職業訓練、インターンシップ、OJTなどを行う。2004年には18万9000人が参加し、2005年の計画では19万人の参加が予定されている(注1)。

また求人求職のミスマッチの解消のため、5月には全国6カ所で雇用安定センターが試行を開始した。7月には地域雇用の促進のため、基本雇用対策法の改正の概要が発表された。地方政府や労使団体による雇用促進の取り組みを国が支援する規定などが盛り込まれている。

非正規労働者保護法案

雇用労働者の3割を占める非正規労働者保護と労働市場の柔軟化の問題は、労働団体と政府の間で大きな対立点の一つとなっている。2004年11月に国会に提出された非正規労働者の保護を目的とする2つの法案(「期間制及び短時間労働者の保護等に関する法律案」及び「派遣労働者の保護等に関する法律改正案」)は、労働団体が正規労働者の雇用を脅かすものだとして反対したため、2005年中には成立しなかった。前者は(1)期間制・短時間労働者に対する合理的理由のない差別処遇の禁止及びその是正措置の規定、(2)3年以上雇用契約が更新されている労働者について正当な理由のない雇用打ち切りの禁止、(3)短時間労働者の超過労働に関する規制等を内容とする。後者は(1)派遣期間の上限の延長(最長2年→3年)及び休止期間(3カ月)の設置、(2)対象業務の拡大(ポジティブ方式→ネガティブ方式)、(3)3年以上使用した派遣労働者を直接雇用へと切り替えることの義務付け等を内容とする。これらの法案に対して、労働組合は派遣労働者のさらなる労働条件の悪化につながるなどとして批判的な姿勢を示している。

2005年10月に釜山で開催予定だったILOのアジア・太平洋会議が延期されたのも、この非正規労働者問題をはじめとする政府の雇用政策に対して不満を強めていた労働団体が、会議への不参加と開催地の変更要求を表明したためと伝えられる。

外国人労働者政策

2004年8月から導入されている外国人雇用許可制度は、雇用主に対し、原則として国内の労働者の採用が困難な場合に、それを補う手段として外国人労働者の雇用を認めている。製造業、建設業、農牧業及びサービス業の一部(飲食業、ビジネス支援業等の6分野)に属する従業員規模300人未満の雇用主は、雇用許可を受ければ最長で3年間にわたり外国人労働者を雇用することができる。2005年3月には外国人労働者政策委員会から「2005年外国人労働者需給計画」が発表され、1万8000人の受け入れが新たに認められた。あわせて不法労働者の取り締まりの強化が打ち出された。なお、中小・零細企業の人手不足問題を解決するために93年11月から実施されてきた外国人職業訓練生プログラムは、雇用許可制度の導入に合わせて、2007年1月をもって廃止されることになっている。

一方、専門知識・技術をもつ外国人労働者(E-1(教授)、E-2(語学教師)等7つのカテゴリのいずれかに該当する者)に対しては労働許可証が発給され、合法的な就労が認められる。政府はITなどの先端技術の分野のベンチャー企業において外国人の高技能人材の登用を進めるため、2000年11月から韓国内における合法的居住の要件を緩和した。その結果、例えばIT技術者(E-7(特殊活動従事者)に該当する。)については2001年~2004年までの累計で659人に労働許可が適用されており、その約4割をインド国籍者が占めている(注2)。

注:

参考:

  • 1米ドル=114.87円(※みずほ銀行ホームページ2006年6月22日現在のレート参考)

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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:韓国」

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