基礎情報: 韓国(2004年)
基礎データ
- 国名:大韓民国(Republic of Korea)
- 人口:4,793万人(2003年)
- 経済成長率:3.1%(2003年)
- GDP:9746億米ドル(2003年)
- 一人あたりGDP:2万300米ドル(2003年)
- 労働力人口:2337万人(2004年)
- 失業率:3.5%(2004年)
- 雇用者数:2256万人(2004年)
注:労働力人口は経済活動人口。
資料出所:厚生労働省「海外労働情勢報告2003~2004」、OECD in Figures2004、韓国国家統計庁
I. 2004年の動向
2003年2月に発足した盧武鉉大統領政権は昨年2年目を迎えたが、3月には憲政史上初めて大統領に対する弾劾訴追案が発議されるという不穏な幕開けとなった。弾劾理由は大統領の選挙法違反、側近の不正、経済破綻責任である。訴追案は可決され大統領の職務権限はいったん停止したが、2カ月後の5月に憲法裁判所が弾劾審判を棄却したため大統領は職務に復帰している。
以下は2004年の韓国における労働関係の主な動きである(数値は特に断りのない限り韓国国家統計庁による。)
経済概況
2004年の経済成長率は韓国銀行の試算によれば4.6%となる見込み。前年の3.1%を上回ったものの、経済の原動力である輸出の伸びが後半に入り鈍化したこと等から当初予想の5%には及ばなかった。輸出依存、内需不振という経済構造の結果として国内には不景気感が拡がっている。
雇用情勢
2004年の失業率は前年の3.4%からほとんど改善していない。不景気を反映して求人倍率はここ数年低下が続いており、報道によれば大企業には就職希望者が殺到している。しかし中小企業では人材確保が困難と報じられており、企業間格差が拡大している感がある。
韓国政府が8月に発表した「2004年下半期経済運用方向」では、雇用対策として次のような課題が掲げられた(わが国外務省ホームページより)。
- 投資活性化による職業創出:(例)信用保証基金等の拡充による中小企業貸出の適正水準実現、外国人経営・生活改善計画の推進等による外国人投資誘致
- 庶民・中産層の所得能力の向上と生活改善:(例)創業資金支援の手続簡素化と拡充、青年失業者の雇用に対する奨励金制度の導入
賃金・労働時間
2004年の平均賃金は237万3000ウォン(従業員10人以上事業所、正規労働者の平均月額)で、前年から0.6%ポイント上昇した。平均週労働時間は45.4時間(5人以上事業所)で前年から0.2時間減少したものの、国際的には極めて長い水準が続いている。
法律・制度関係
- 公務員労働組合法案の成立
2004年12月の国会で成立した公務員労働組合法案は公務員の団結権及び団体交渉権(団体合意権を含む)を認めるが、団体行動権(ストライキ権)は認めていない。成立に先立ちスト権の確立を求める公務員がストを強行したが、政府が参加者全員の懲戒処分という厳しい方針を示したために1日でほぼ収束したと伝えられている。
- 外国人雇用許可制の運用
2004年8月17日から運用が開始されている。韓国労働部の資料によれば10月5日時点で284名の外国人がこの制度に基づき入国した。2005年3月に発表された「2005年外国人労働者需給計画」では、企業からの需要に対して総枠で1万8000人の受け入れを認めている。また雇用手続きの簡素化や国内の不法残留者を減らすために、手続きの改定や新設も予定されている。
- 法定労働時間の短縮(週44時間→40時間)
2004年7月より大企業等から段階的に実施することとされている。なお公務員の週休2日制は試験的に(月1回)2002年4月より実施されている。
2005年に向けての課題、懸案
- 非正規職保護法案の国会提出
政府は非正規労働者の保護を目的とする2つの法案を2004年11月に国会に提出した。「期間制及び短時間労働者の保護等に関する法律案」と「派遣労働者の保護等に関する法律」改正案である。前者は
- 期間制・短時間労働者に対する合理的理由のない差別処遇の禁止及びその是正措置の規定
- 3年以上雇用契約が更新されている労働者について正当な理由のない雇用打ち切りの禁止
- 短時間労働者の超過労働に関する規制等を内容とする。
後者は
- 派遣期間の上限の延長(最長2年→3年)及び休止期間(3カ月)の設置、
- 対象業務の拡大(ポジティブ方式→ネガティブ方式)、
- 3年以上使用した派遣労働者を直接雇用へと切り替えることの義務付け等を内容とする。
しかしこれらの法案に対して、労働組合は派遣労働者のさらなる労働条件の悪化につながるなどとして批判的な姿勢を示している。
法案は2005年6月現在、国会の法制審議小委員会にかけられている。
労使関係
政府は2003年9月に「労使関係法制度の先進化策(ロードマップ)」を公表した。2004年度の法制化を目指すとされていたが実現にいたらず、今後は労使団体との調整を終えた上、立法化に向けて処理が進められることになる。
少子高齢化問題
韓国の合計特殊出生率は急激に低下しており、2003年には日本を下回る1.19となった。韓国国家統計庁の予測によれば65才以上の高齢者の割合は2050年までに人口の37.3%に達し、日本を上回り世界一となる。このままでは経済成長の可能性が激減し、低成長時代に突入することが懸念されている。政府は長期的な解決策を講じる必要があり、年金制度の改革や税制優遇などの出産促進策を導入するべきだという意見もでている。
バックナンバー
- 基礎情報:韓国(最新年)
- 基礎情報:韓国(2020年)
- 基礎情報:韓国(2018年)
- 基礎情報:韓国(2017年)
- 基礎情報:韓国(2016年)
- 基礎情報:韓国(2014年)
- 基礎情報:韓国(2013年)
- 基礎情報:韓国(2005年)
- 基礎情報:韓国(2004年)
- 基礎情報:韓国(2003年)
- 基礎情報:韓国(2002年)/全文(PDF:811KB)
- 基礎情報:韓国(2001年)/全文(PDF:336KB)
- 基礎情報:韓国(1999年)
※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
関連情報
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > 韓国 > 2004年
- 海外労働情報 > 国別労働トピック > 国別にさがす > 韓国の記事一覧
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書 > 国別にさがす > 韓国
- 海外労働情報 > 海外リンク > 国別にさがす > 韓国
お問合せ先
内容について
調査部 海外情報担当
※内容を著作物に引用(転載)する場合は,必ず出典の明記をお願いします。
例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:韓国」