基礎情報:オーストラリア(2005年)
基礎データ
- 国名:オーストラリア (Commonwealth of Australia)
- 人口:2,033万人 (2005年6月)
- 実質GDP成長率:2.4% (2004年度)
- GDP:8,927億豪ドル (2004年度)
- 一人あたりGDP:4,4171豪ドル (2004年度)
- 労働力人口:1,057万6,600人 (2005年12月)
- 就業者数:1,003万3,000人 (2005年12月)
- 失業率:5.3% (2004年度平均)
注:
オーストラリアの会計年度は7月1日から翌年6月30日まで。
資料出所:オーストラリア政府統計局、オーストラリア連邦政府議会図書館、外務省
I.労働関係の主な動き
1.労働市場の動向
2004年度(2004年7月~2005年6月)の豪州経済は個人消費や住宅市場にやや陰りが見えたものの、豪米FTAに伴う対豪投資が新たな牽引役となり、実質経済成長率2.4%、豪州準備銀行(RBA)政策金利5.25%、など経済の好調さを示す数字が並んだ。
労働市場の状況を見ると、就業者数(2005年12月)は前年同期より21万600人増加の1003万3000人。うちフルタイム労働者は、714万1300人。パートタイム労働者は289万1700人であった。2004年度平均の失業率は5.3%、2005年6月には5.0%にまで低下するなど過去28年間で最低の水準となる等、雇用状況は全般的に改善している。労働力率は、64.3%であった。
2.労使関係
ア.労使関係制度改革
2004年10月の総選挙で与党・保守連合が野党労働党に勝利したのを受け、労使関係改革、電気通信事業者であるテルストラの民営化などこれまで成立が困難とみられていた法案が次々と通過した。2006年3月には新労使関係法「ワークチョイス(Work Choices)」が施行された。これにより、労使関係制度における連邦政府の権限が大幅に拡大された。(注1)従業員100人未満の中小企業は「不当解雇禁止法」の適用を免除されることとなった。
現在、連邦政府の与党がハワード首相率いる自由党と国民党から成る保守連合であるのに対し、すべての州議会(6つの州および2つの準州)で労働党が政権を持つというねじれ現象が生じている。このため、労使関係制度における権限を失った州政府からの反発が著しく、2005年12月以降、ニューサウスウェールズ、西オーストラリア、南オーストラリア、クイーンズランドの各州政府が原告となり、新法を違憲として連邦最高裁に提訴している。豪州労働組合会議(ACTU)も全国各地で抗議行動を展開している。
イ.労働組合員数、組織率
2005年8月の組合員数は191万1900人で、前年の184万2100人から4%増加した。一方、組織率について見ると22.4%と前年の22.7%からわずかに低下した。また、公共部門の組織率は47%であったのに対し、民間部門は17%となっている。
3.雇用・能力開発
オーストラリアにはわが国の「雇用保険」に相当する制度は存在せず、失業中の所得保障である失業者救済プログラム「ニュー・スタート」(注2)が支給される。現在、失業率が低位で推移するなど堅調な労働市場であるが、若年失業について見ると、男女とも高位であることから、2005年政府は「ニュースタート」の受給要件を厳格化した。これに伴い、受給にはパートタイム就労、ワークフォーザドール事業、ボランティアの仕事などへの参加が義務付けられ、参加しない場合は給付の受給に制限が課されることとなった。
4.賃金
2005年8月の週平均賃金は807豪ドルであった(前年同月比5%)。地域別に見ると、首都特別地域(ACT)が最も高い912豪ドル、最も低いのはタスマニア地方の697豪ドルであった。フルタイム労働者の週平均賃金は979豪ドル、パートタイム労働者については366豪ドルとなっている。
連邦最低賃金については、従来豪州労使関係委員会(AIRC)が決定してきたが、先述の労使関係改革に伴い、最低賃金決定機関として新たに公正賃金委員会(AFPC)が設置された。
5.移民政策
ア.地方都市への移民分散施策
豪州は積極的に移民を受入れており移民大国として知られる。2005年6月30日現在、人口全体の約4人に1(24%)が外国生まれで、2004年7月~05年6月の期間の移民の受入れ数は11万100人に上り、うち技術移民が43%を占める。移民の受入れには年齢、技能、国内での就労経験などを点数化するポイント制が導入されており、その基準は州ごとに異なる。
2005年5月、地方における熟練労働者労働力不足の解消のために、移民の地方誘致策を発表した。これは永住権獲得に必要なポイント(パスマーク)は、120だが、地方での居住、勤務、都市部に移動しない、など一定の条件を満たせば、永住権獲得の際にボーナスポイントが付与されるというもので、地方都市への移民数は増加するなど一定の効果をあげている。
イ.ワーキングホリデービザ2度目の取得が可能に
2005年11月以降、一度しか取得することのできなかったワーキングホリデー(WH)ビザの再取得が可能になった。果樹園などでの労働力不足が深刻化していることが理由。2度目のワーキングホリデービザを申請する際の条件は、(1) 最初のワーキングホリデービザでオーストラリアに入国していること(2) 申請時に18 歳~30 歳であること(3)子供がいないこと(4)ワーキングホリデービザ制度協定国のパスポートを保持していること、の4条件。これに加え、3 カ月以上地域農業において季節労働(注3)に従事した証明を提出する必要がある。
注:
- オーストラリア憲法は、外交・通商、国防、移民などの連邦政府の権限を規定し、 連邦政府の管轄に属さない事項については、州、準州、特別地域が責任を持つと規定している。従来、労使関係制度については州政府により多くの権限が与えられ、各州独自の制度が運用されてきた。
- 全額国庫負担。
- 季節労働とは、農作物・果実の収穫、ぶどう・樹木の剪定、収穫に関する一般作業を指し、畜産業や畜産物に関する労働、真珠採取、エビの採取、または酪農業は季節労働に含まれない。
参考:
- 1豪ドル=84.96円(※みずほ銀行ホームページ2006年6月22日現在のレート参考)
バックナンバー
- 基礎情報:オーストラリア(最新年)
- 基礎情報:オーストラリア(2020年)
- 基礎情報:オーストラリア(2018年)
- 基礎情報:オーストラリア(2017年)
- 基礎情報:オーストラリア(2016年)
- 基礎情報:オーストラリア(2014年)
- 基礎情報:オーストラリア(2005年)
- 基礎情報:オーストラリア(2004年)
- 基礎情報:オーストラリア(2003年)
- 基礎情報:オーストラリア(2002年)/全文(PDF:413KB)
- 基礎情報:オーストラリア(2001年)/全文(PDF:402KB)
- 基礎情報:オーストラリア(2000年)
- 基礎情報:オーストラリア(1999年)
※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
関連情報
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > その他の国 > オーストラリア > 2005年
- 海外労働情報 > 国別労働トピック > 国別にさがす > その他の国 > オーストラリアの記事一覧
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書 > 国別にさがす > オーストラリア
- 海外労働情報 > 海外リンク > 国別にさがす > オーストラリア
お問合せ先
内容について
調査部 海外情報担当
※内容を著作物に引用(転載)する場合は,必ず出典の明記をお願いします。
例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:オーストラリア」