基礎情報:オーストラリア(2004年)

基礎データ

  • 国名:オーストラリア (Commonwealth of Australia)
  • 人口:2,028万人 (2005年3月豪州政府統計局)
  • 経済成長率:3.8% (2003/2004年度)
  • GDP:7,835億豪ドル (2003年)
  • 一人あたりGDP:25,443豪ドル (2003年)
  • 労働力人口:982万2,400人 (2004年12月)
  • 就業者数:931万1,000人 (2002年)
  • 失業率:5.1% (2004年12月)

注:オーストラリアの会計年度は7月から翌年6月。

資料出所:オーストラリア政府統計局、オーストラリア連邦政府議会図書館、外務省

経済・労働市場概況

2003/04年度(2003年7月-2004年6月)におけるオーストラリア経済は、堅調な個人消費や外需の回復を背景に、実質GDP成長率は3.8%と前年度実績(3.2%)を上回り、13年連続のプラス成長となった。堅調な個人消費に加え、住宅投資と設備投資が回復、GDP成長率は1-3月の3.2%、4-6月は4.1%となっている。政府が予測する2004/05年度の成長率は3.5%。好調な経済を背景に雇用環境も良好で、2004年12月の失業率が5.1%と史上最低水準を更新した。政府は労働市場政策が一定の効果を挙げているとして失業率の低下を歓迎している。

労働分野の主な動き

1. 豪米自由貿易協定の成立

2005年1月1日、オーストラリアと米国の自由貿易協定(AUSFTA)が発効した。協定締結交渉の過程で、FTAを推進しようとするハワード政権に対して、労働党(ALP)は1)関税障壁の撤廃によって国内製造業(特に自動車組立業)の雇用が失われる、2)米国のテレビ番組が流入することで国内の番組プログラムが減少する、3)国の製薬業界が国内における医薬品取引を規制し、その価格を設定するシステムである「医薬品給付制度(Pharmaceutical Benefits Scheme: PBS」を崩壊させる、などの懸念を表明。オーストラリア労働組合評議会(ACTU)も、AUSFTAは一方的な協定であり、製造業(特に自動車部品)の雇用が失われる可能性があると非難した。その後、ALPはFTA支持へとハワード政権への歩みよりを見せ、協定に対する修正案を提出、法案成立の運びとなった。関税障壁の撤廃により対米輸出の増加が見込まれる一方で自動車部品などの非関税化による国内産業への打撃を受け、自動車組立業を組織する労組などが反発している。

2005年1月現在、米国以外にニュージーランド、シンガポール、タイとFTAを締結しているほか中国をはじめとするアジアの未締結国との交渉が進められている。

2. 最低賃金の引き上げ

オーストラリアでは、オーストラリア労使関係委員会(AIRC)によるアワード(裁定)を通じ労働条件の多くが決定されている。連邦最低賃金もアワードによる決定事項のひとつ。2004年5月5日、AIRCは連邦最低賃金を1997年以降最大の引き上げ幅となる週あたり19豪ドル引き上げる決定を行い週467.40豪ドルとなった。

最低賃金の決定をめぐりACTUは、最賃引き上げが雇用や総賃金コスト、インフレに与える影響は少ないとして、連邦政府に対し低所得者の生活水準向上のためにも26.60豪ドルの引き上げを求めていた。これに対して連邦政府と使用者団体は、要求額が大きすぎるため受け入れられないとし、10豪ドルの引き上げ案を支持していた。

3. 労働時間

統計局の調査(2003年11月実施/ABS6342.0)によれば、前回調査時(2000年11月実施)よりも残業が増えている。残業時間が最も多かった職種は、管理職と役員の63%と専門職の51%。しかし、社員の62%が残業手当を受けていなかった(給与体系に残業手当支給が規定されている従業員の21%を含んでいる)。2003年11月時点で15歳以上の7,941,600人の従業員のうち34%が通常の勤務体制で働いていなかったことが明らかになった。

4. 職業能力開発

オーストラリアでは、連邦政府ではなく州政府が職業・教育訓練(Vocational Education and Training:VET)を所管している。このため、国レベルの政策展開には、連邦・州政府両閣僚の合意によるVET方針の策定が必要となる。職業・教育訓練(Vocational Education and Training:VET)改革は総選挙における重要な争点のひとつとなっている。

新養成工制度(New Apprenticeships)

熟練労働者の求人率が昨年20%も上昇してここ15年間で最も高い水準に到達している。新養成工制度は学校での理論教育と企業での実務研修を結びつけるもので、その期間は平均4年。2004年12月に政府が発表した報告書"Skills at Work"では、過去7年で養成工は約20万人増加、全労働力の4%に相当する39万4,000人であった。

図:新養成工制度資格取得者の推移(1996-2003)

図

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資料出典:教育・科学・訓練省

したがって政府が研修制度の成功の証拠としている研修生および「新養成工」の増大は、雇用者に対する政府助成金の増額の結果に過ぎず、研修のほとんどは、低い資格水準を対象としたものとして政府に対する批判も少なくない。

5. 移民受け入れ政策

技能労働者不足の解消のため、政府は1999年に「新規技能者ビザ」を導入、技術移民の受け入れ拡大施策を打ち出している。2004年に入り、移民受入数における熟練労働者の割合が引き上げられたことを受け、南アフリカ、カナダ、英国などから労働者の引き抜きを開始している企業が出始めている。移民は、家族移民、技術移民、特別移民という3つのカテゴリーに大別され、毎年数量割り当てが決められる。2003年7月~04年6月の期間の移民の受け入れ数は政府予測の11万人を超え11万1,590人。2004年7月、移民省は地方限定のビザを発行。シドニー、メルボルン、パース、ゴールドコーストなどの大都市「以外」に3年間以上住むことを条件に、審査基準が引き下げられた。一方ニューサウス・ウェールズ(NSW)州政府は、シドニーにおける技術移民の受け入れは、高度技術を持つ医師などに限定しているなど、州によって移民受け入れ政策が異なっている。

高齢・少子化をめぐる政策

1. 老齢退職年金制度改革

1986年に当時の労働党政権によって導入された現行制度は、労働者が政府拠出の公的年金に依拠するのでなく、賃金の一部を自らの老後のために拠出するという考えに基づいている。使用者は賃金の一部を控除し、それに自らの保険料を合わせ、退職年金基金に納める。基金は投資を通じ蓄財し、労働者は退職時に一時金または年金、あるいはその組み合わせによって受け取る仕組だ。政府拠出年金は、退職貯蓄が十分ではない者に対する最低保障という形で、平均賃金の25%を限度に支給される。一時金と年金には異なった税率が適用され、年金選択者を優遇するよう設計されている。

連邦政府は、65歳を超えて退職年金保険料を納める場合の税額控除、および55歳以降の在職年金の導入等の労働者の就労促進・生涯現役を奨励するための政策を実施に移している。他方、労働党のマーク・レイサム党首は2004年3月、65歳の定年を可能とし、加えて老後には退職前総賃金の65%を保障などを内容とする退職年金政策を公表。政府の課税額と基金による種々の手数料を削減または制約することを提案した。

  1. 保険料を政府が補助する共同保険料制度の適用対象を年収2万7500豪ドル未満のすべての労働者に拡大した。これにより従前では賃金が低いために使用者の保険料負担の対象となっていなかった者も今回の措置で対象に含まれることになった。
  2. 年収が2万7,500豪ドル~4万豪ドルの者についてはスライド制による保険料補助が実施される。
  3. 基金が課す手数料の透明性を高めるため、一般からの請求があった場合、手数料の開示が義務付けられる。

2. 「仕事と家庭の両立に関する試案(Work and Family Test Case)」

ACTUは、2004年12月「仕事と家庭の両立に関する試案(Work and Family Test Case)」のまとめ案をAIRCに提出。労働者が仕事と家庭の両立をコントロールできるよう、福利厚生制度に盛り込むよう提起した。同試案は、ACTUがAIRCに継続的にはたらきかけている案件。試案の主な内容は、1)現行の12カ月間の無給育児休業期間を24カ月に延長する、2)雇用主側が、子供の出生後2年間は従業員としての職務を維持し、本人が希望すれば職場復帰後パートタイム職に転換する権利を付与する、3)従業員が給料の一部を返上してさらに最高6週間の年次休暇を「購入」できる(Salary Sacrifice)、4)家庭責任を果たすために仕事の開始・終了時間を変更し、職場の変更を求めることも可能となる、など。従業員がこのような申請をおこない、申請内容が「妥当」だと判断されたが、会社側が拒否して申請が受け入れられない場合には拒否の理由を示す責任は雇用企業側が負うことになる。テスト・ケースは2004年9月1日より実施され、それ以前から国民的論議が盛んにおこなわれていた。本件についてAIRCの全判事出席のもとで公聴会が開催されたが、この種の審議対象ケースとしては女性に無給出産休暇の取得権利を与えた1979年の出産休暇ケー(Maternity Leave Case)以来最も重要な位置に置かれている点を物語っている。本ケースはすべての福利厚生制度に「家族にやさしい」職場条件の組入れを義務付ける可能性があり、あらゆる職場で実行されると考えられる。

1978年当時、オーストラリアの全労働力に占める女性の割合は約26%だったが、現在は約45%に増大しているほか共働きカップルの割合も1981年の49%から2000年には62%に拡大している。ACTUは「柔軟性の乏しい労働環境のため女性が2人目、3人目の子供を持とうとしない」ことを出生率低下の要因を指摘。職場を「ファミリー・フレンドリー」な環境にすることは女性の労働市場の参加を促し、熟練労働者不足問題を緩和にもつながると強調した。対してオーストラリア商工会議所(ACCI)をはじめとする経営者団体は、ファミリー・フレンドリーな政策は望ましいが、多くの企業にとって手厚い福利厚生制度を設けることは不可能で、制度の施行を企業に強制すべきでないと主張している。

労使関係改革

2004年10月9日の連邦議会選挙でハワード首相率いる連立与党(自由党・国民党)が再選を果たしたことで、悲願であった労使関係改革案の実現可能性が高まった。主な労使関係改革案は、1)不当解雇禁止法案の条項見直し、2)ストライキ実施前の無記名投票の実施義務付け、3)ストライキ突入前に組合が義務付けられている72時間という通達期間の延長、4)アワードの範囲を狭めることによるAIRCの役割制限など。

改革案はまた、雇用関係だけでなく、1)通信事業改革(国営通信企業テルストラ:Telstra)の完全民営化、2)福祉制度改革(複雑な給与・手当て支払制度の撤廃と統一支払制度の導入)、3)税制改革(法人税および個人の最高限界税率の引き下げ)などを含む包括的な内容のものとなっている。関連法案は2005年7月に上院で可決の後、下院にかけられる予定である。

バックナンバー

※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:オーストラリア」

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