基礎情報:オーストラリア(1999年)
※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
1.一般項目
- 国名
- オーストラリア
- 英文国名
- Australia
- 人口
- 1875万1000人(1998年6月末推定)
- 面積
- 768万2300平方キロメートル
- 人口密度
- 2人/平方キロメートル(1996年)
- 首都名
- キャンベラ
- 言語
- 英語
- 宗教
- キリスト教(カソリック、アングリカン)
- 政体
- 立憲君主制(連邦制)
2.経済概況
- 実質経済成長率
- +4.6%(1997/1998年) +3.2%(1996/1997年) +4.4%(1995/1996年)
- 通貨単位
- オーストラリア・ドル(A$) 1US$=1.53A$ 1A$=68.65円(1999年10月)
- GDP
- 3765億ドル(1997/1998年) 3959億ドル(1996/1997年)
- 1人当たりGDP
- 20171ドル(1997/1998年) 21457ドル(1996/1997年)
- 消費者物価上昇率
- 0.0%(1997/1998年) +1.3%(1996/1997年) +4.2%(1995/1996年)
- 主要産業
- 農業(羊毛、食肉など)、鉱業(鉄鉱石、金など)、製造業、エネルギー(原油など)
3.対日経済関係
- 対日主要輸入品目
- 乗用車、、自動車部品、原動機、ゴムタイヤ、建設・鉱山用機械など
- 対日輸入額
- 7985百万ドル(1998年) 7998百万ドル(1997年) 7432百万ドル(1996年)
- 対日主要輸出品目
- 石炭、鉄鉱石、液化天然ガス、肉類、アルミ・同合金、非鉄金属鉱、木製品など
- 対日輸出額
- 12934百万ドル(1998年) 14660百万ドル(1997年) 14295百万ドル(1996年)
- 日本の直接投資
- 2048億円(1997年) 852億円(1996年) 2561億円(1995年)
- 日本の投資件数
- 97件(1997年) 65件(1996年) 61件(1995年)
- 在留邦人数
- 26631人(1997年10月)
出所:The Australian Bureau of Statistics、
[日本] 大蔵省(財政金融月報、外国貿易概況)、外務省(海外在留法人数調査統計)
4.労働市場
1.労働市場の概況
オーストラリアの労働市場は1970年代から大きく変化した。
『雇用関係の国際比較』(Bamber and Lansbury,1998)は最近における変化を4つ期間に分類している。4期間のうちの初めは中央集権化時代(1983~1986年)である。第2は「管理的分権主義」の時代(1987~1990年)でこの時代に中央集権制度を打破すべく労働市場の改革が始まった。第3の変化の時代(1991~1996年)は「調整された弾力性」(coordinated flexibility)の時代で、労使関係の分権化(集中の排除)がさらに進んだ。そして最後が「細分化した弾力性」(fragmented flexibility)の時代(1996年~)で、改革により労働市場の規制緩和を達成することを目ざしている。この間、改革はある程度成功してきている。
オーストラリアは70年代半ば以降慢性的失業の時代に入っている。失業率は1993年半ばに11%の高水準となり、1995年5月には急激に8.4%に下降、その後ゆっくり上昇して、1996年9月から1997年6月までは8.7%で安定、その後再び低下して1999年1月には7.5%になった。
労働市場の変化はとくに低技能労働者に影響を与えた。ティーンエージャー向けのフルタイムの労働市場が崩壊し、製造業分野の衰退に伴いブルーカラー労働者の市場も著しく衰退した。これはサービス部門の成長によりある程度埋め合せられたが、同分野の雇用は圧倒的にパートタイムか臨時雇いである。実際にパートタイムの雇用の伸びはフルタイムの雇用の伸びの約3倍であった。そしてパートタイムまたは臨時雇いで働く労働力の比率は1970年から1990年までの間に倍以上増え、10%から25%に変わった。これはOECD諸国の中で最も高い比率の1つであり、実際、スペインを除き、統計をとっている他の国のどこよりも高い。
したがって、労働市場は雇用の不安定化で特徴づけられている。
パートタイムの仕事は労働市場に流れ込んでくる女性が圧倒的な割合で埋めている。労働市場への女性の参加率は1961年の25%から1981年までに37%に上がり、1996年には42%に達した。子供の養育のためまたはパートタイムで職場に復帰したいとの希望でパートタイムで働きたい女性はこれにより恩恵を得た。しかし、同様に1986年と1996年の間にもっと長時間働きたいというパートタイム労働者の比率は17%から26%に増加した。
性別による労働市場の分割は高い比率のまま継続し、女性の賃金は男性の約 83%のままだが、この格差は労働市場の「弾力化」が進むにつれて減少しつつある。
状況はさまざまであるが、所得の不均等も拡大しつつある。高所得者層、とくに上級管理職および若年の優れた技能を持ち移動性のある、いわゆる「ゴールドカラー」労働者、とくに情報技術分野の慢性的技能労働者不足で、高給がとれる者の給料は増加している。
一方、低所得者層は社会保険の低所得者層への支払いが増えているので所得は徐々に上がってきている(このことが低賃金の実態を分かりにくくしている)。労働市場における中間層の収入は減少傾向にあるがこれは確実なフルタイムの仕事が減少していることと関連している。
企業のリストラは職場に大きな変化をもたらした。下請けと外注が非常に増えた。経費削減とは労働者が速い速度でより多くの仕事をするということ、つまり「労働強化」を意味することになった。
また、これらの労働者たちの労働時間が増えて、しばしば手当がつかない時間外労働を伴うことになった。
こうした結果をもたらしたのは労使関係が根本的に変わって、これらの労働者の交渉力が低下したことにも一因がある。
2.労働市場関連情報
- 労働力人口
- 939万3800人(1999年1月)
- 労働力率
- 63.1%(1999年1月) 63.2%(1998年12月)
- 就業者数
- 869万1000人(1999年1月)
- 失業率
- 7.5%(1999年1月)
注:1998年半ばにおけるABSの推測では失業者数は約80万であった。しかし、多数のいわゆる「潜在的失業者」(挫折を感じて求職している者が典型)がおり、これらを考慮すれば失業者の数は200万人に近い。
出所:The Australian Bureau of Statistics, 6202.0(以下の項ではABSと略記。末尾の数字はシリーズ・コード)
5.賃金
1.賃金制度の概要
オーストラリアの賃金制度は非常に複雑で、過去15年間に極度の中央集権的制度からかなりの分権型へ変わる大きな変革を経た。
オーストラリアの連邦化(1901年)により強制仲裁制度が導入された。これは裁判所が賃金と労働条件を法的に強制力のある「賃金裁定」で決めるものである。
もっとも裁定の率より団体交渉の方がよいことが往々にしてあった。強制仲裁制度というのは一旦争議が通知されると争議の当事者は委員会に出頭して「賃金裁定」という裁定を受けることを強制されるものであった。これは、弱い労組が仲裁を通して分権化された団体交渉では得られない目的を達成できることもあることを意味した。
裁定で決められた賃金、その他の労働条件は、裁定に「応じる立場にある者」(当該使用者団体の一員である使用者)に雇われている未組織労働者にも適用された。また、裁定の結果は「比較賃金の公正」の原則、即ち同種の産業における賃金と労働条件との関係を相互に関連づけて決めようとする原則を通し、他の労組や裁定に波及していた。
裁定制度は最盛期には労働者の85%に適用されたが、過去10年間で適用率が低下した。分権化された制度の下では(1980年代後半以降)、裁定の恩恵は他の関連裁定や労組に自動的に波及しなくなった。こうして組織労働者と未組織労働者の労働条件に格差が生じることになった。
1つの傾向として(団結力の弱い)組織労働者は連邦や州の労働審判所に依存して「全国賃金裁定(National Wage Cases)」に基づいて賃上げをしようとしている。第2の傾向として顕在化しているのは、労組や非労組グループによる団体交渉(オーストラリアでは「企業内交渉(enterprise bargaining)」で知られている)で賃上げを獲得することである。
第3の傾向として「オーストラリア職場協定(Australian Workplace Agreements)」として知られる「個別契約」があるが、現在のところ労働力人口の1%未満の労働者をカバーしているに過ぎない。賃上げを裁定制度に頼る労働者は以前より少なくなる傾向にあり、結果としてオーストラリアの賃金は、ばらつきの程度を拡大しつつある
2,最低賃金
オーストラリアには政府が定める最低賃金は存在しない。最低賃金は上記の裁定の結果を通して実質的に決定されている。連邦の最低裁定賃金、週35時間の最低賃金として労働者に払われる賃金は、1999年3月1日現在、373.40豪ドルである。
裁定のレートは定期的に「全国賃金裁定」を通して調整される。そこでは関係当事者(オーストラリア労組会議[ACTU]、政府、使用者)がオーストラリア労使関係委員会で賃上げの効果について議論をし、委員会が裁定賃金全般の調整を行う。
3.平均賃金と賃上げ率
1998年11月におけるフルタイム労働者の平均週額基本賃金(時間外手当を除く)は743.60豪ドルであり、フルタイム労働者の平均週額賃金(諸手当を含む)は784.90豪ドルであった。
1997年12月から1998年11月までの12カ月間にフルタイム労働者の平均週額基本賃金(時間外手当を除く)の上昇率は、女性の場合4.5%、男性の場合4.1%であった。
出所:ABS,6301.0
基礎情報:オーストラリア(1999年)
- 1.一般項目、2.経済概況、3.対日経済関係、4.労働市場、5.賃金
- 続き(6.労働時間、7.労使関係、8.労働行政、9.労働災害、10.その他の関連情報)
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- 基礎情報:オーストラリア(2001年)/全文(PDF:402KB)
- 基礎情報:オーストラリア(2000年)
- 基礎情報:オーストラリア(1999年)
※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
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