最近の学生さん

研究員 大谷 剛

以下は、至極個人的な雑感である。私は現在、ある大学で非常勤講師を勤めさせていただいている。過去にも別の大学で非常勤講師として講義を担当させていただいていたのだが、最近の学生さんは自分が学生であったとき(1990年代初頭)とはかなり違うように思われる。端的にいって、真面目なのである。

例えば、我々が学生の頃だと、飲み会といえば朝までエンドレスで行われることもしばしばあったものだが、最近の学生さんは「そんなことはしない」のだそうだ。理由をたずねると、「次の日の講義に差し障る」とのことである。また、我々の時代は「講義に出ない、もしくは出てもテスト前だけ」ということも多かったが、最近では「真面目に出席する」というのが主流のようだ。

では、このような変化はいかなる要因によって生じているのであろうか。最大の原因は、就職状況の変化ではなかろうか。1990年代の初頭といえば、バブル絶頂期~崩壊期であり、好きな会社を選べる余地が多くの学生に対して存在した。一方、最近はといえば、ようやく景気が回復してきたものの依然として買い手市場「感」が残っていることは否めない。くわえて、派遣社員やパート・アルバイトの増加といった非正規化の問題も深刻化している。このような現状を踏まえれば、最近の学生さんが朝まで馬鹿騒ぎをする気になれないのも頷ける。また、彼らの真面目に講義に出ようという態度も納得できる。学業不振の者は、望ましい会社に就職できないかもしれないのだから。

要するに、古今の学生の態度の違いは、景気に大きく左右されているということがいえそうである。つまり、今の学生が真面目なのは就職状況に起因したものであると。では、もし昔の学生と今の学生が置かれた景気状況が同じであるとすれば、真面目さの程度に違いはなかったであろうか。このような状況を想定したとしても、やはり今の学生さんの方が真面目なような気がしてならない。

この見方が正しいとして、なぜ今の学生さんはかくも真面目なのであろうか。その要因の一つとしては、「要領」があまり良くないといったことが挙げられるのかもしれない。というのは、もし「要領」がよければ、真面目に勉学に打ち込まずとも必要最低限の成果だけは残すことができるものと思われるためである。換言すると、「要領」がよくない以上、真面目であらざるを得ないと。他方、昔の学生は「要領」(だけは?)が良かったように思われる。現に、講義に出ずとも、成績の良い者からちゃっかりノートを借りて、最小の努力で単位を取得する者が多々いた。あるいは、最終講義にだけ参加し、先生の癖を読み取り、出題傾向をかなりの精度で推測するツワモノもいた。つまり、不真面目さを「要領」の良さでカバーできていたと。

さて、以上の荒っぽい議論からいえることは、今の学生さんは真面目さにくわえ「要領」の良さも身に付けるべきではないかということである。一朝一夕にできることではないかもしれないが、様々な経験を積むことによって実現して欲しい。そうすれば、よりよい就職を実現できる可能性が増すばかりではなく、将来においても活躍の場が増えるものと思われる。そうそう、いうまでもないことであるが、「要領」の良さを得たことと引き換えに、真面目さを失ってはいけませんよ。

( 2007年 11 月 9日掲載)