職場や仕事を数値化してみると

副統括研究員 松本 真作

少し前に職場や仕事のチェックリストを作成し、以降、これを様々な会社で実施している。職場や仕事の現状を従業員がどのように捉え、従業員の意識や行動、ストレスがどのようになっているかを見るものである。これまでに100社以上、1万名以上のデータが集まっているが、このデータを見ると色々と興味深い点がある。

いくつかの興味深い傾向

仕事は年齢ともに面白くなる。そうであれば、これは良い話である。これを裏付けるようなデータが、このチェックリストで出ている。チェックリストの中に「ジョブインボルブメント」を測定するものがある。米国生まれの概念であるが、簡単に言うと、仕事にどのくらい没頭し熱中しているかをみるものとできよう。このジョブインボルブメントについて20代、30代、40代で平均をみると、20代より30代、30代より40代と年齢とともに高くなる。年をとるほど仕事に没頭し、熱中している。チェックリストの中には「職務満足」もある。職務満足(Job Satisfaction)は古くから研究されてきた概念だけに、様々な定義や考え方があり、かえって話が複雑になっている。ごく簡単に、常識的に、「職務に対する満足感」と言って、それほどはずれていない。この職務満足も20代より30代、30代より40代と年齢とともに高くなる。年をとると職務に没頭して、しかも職務に満足している。もうひとつ「ストレス反応」を見るものもある。これも定義が難しいが、簡単に、ストレスによって引き起こされると考えられる様々な反応とする。このストレス反応は20代が高く、30代、40代と徐々に低くなっている。

年齢とともに仕事は面白くなり、ストレスは低くなる。これは個人にとっては良い話である。どうしてこのようになるかはまだ分からない。同じ会社に居て、徐々に自分に向いた仕事、自分を生かせる仕事を任されるようになるのかもしれない。あるいは会社を移り、自分に合った仕事が見つかったのかもしれない。もちろんこれは全体的な傾向で、そうではない人もいる。しかし、多くの人が年齢とともに仕事や職場でハッピーになれるというのは良い話である。もし、そうでないところがあれば、年とともに良くなるように「すべき」ではないかとも考えられる。

何かしら良いところはある

色々な会社のデータが集まってくると、これは大変そうだという会社もある。仕事がきつい、勤務時間が長い、給与が安い、職場の人間関係が悪い、等々、自由記述欄に不平、不満、怒りが溢れているものもある。ところが不思議なことに、どのような会社や職場にも何らかの良いところがある。例えば、仕事がきつい、勤務時間が長い、給与が安い、ただし、職場の人間関係は非常に良いとか、色々な問題点があるが経営者との一体感があり、経営者と従業員が一丸となって取り組んでいるとか、である。色々問題点があってもどこか良い点があることが救いである。良いところが少しでもあれば、それをきっかけに一つずつ職場や仕事の問題点を改善していけるのではないだろうか。

(2010年6月11日掲載)