メールマガジン労働情報 No.1975

■□――【メールマガジン労働情報/No.1975】

短時間労働者の社会保険適用、企業規模要件を撤廃の方向で検討/厚労省懇談会 ほか

―2024年7月3日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】短時間労働者の社会保険適用、企業規模要件を撤廃の方向で検討/厚労省懇談会 ほか
【統計】業況判断DI、大企業は製造業2ポイント上昇、非製造業は1ポイント低下/日銀短観 ほか
【動向】賃金増加幅が物価上昇幅より「大きい」は6.5%/連合総研調査
【企業】明治安田生命、定年70歳に延長/27年度から、シニア人材活用
【海外】労働保障、「軽微な違法行為」の処罰免除/中国 ほか
【法令】労働関係法令一覧(2024年5月公布分)
【イベント】オンラインセミナー「困窮家庭の子どもたちの夏休み―調査結果より―」/NPOキッズドア ほか

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【JILPTからのお知らせ】
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◇労働政策フォーラムの開催報告を掲載しています

第132回「キャリア形成に寄与する学び直し・リカレント教育」(2024年3月16~19日開催)
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20240319/houkoku/index.html

第130回「ガイダンスツールを活用した就職相談とキャリア支援」(2024年2月27日開催)
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20240227/houkoku/index.html

◇『日本労働研究雑誌』2024年7月号を刊行しました!
 特集「人口減少社会における労働・社会保障問題」
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2024/07/index.html

◇『ビジネス・レーバー・トレンド』2024年7月号を公開しました!
 「キャリア形成に寄与する学び直しとキャリア支援」
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2024/07/index.html

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【行政】
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●短時間労働者の社会保険適用、企業規模要件を撤廃の方向で検討/厚労省懇談会

厚生労働省の「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」は1日、健康保険・
厚生年金の適用についての議論の取りまとめ案を提示した。勤務先や働き方などによる社会保険制度上の
取り扱いの違いで不公平が生じない、働き方に中立的な制度構築の観点が重要(p.6)としている。
短時間労働者が適用対象となる企業規模要件(2024年10月から51人以上の企業に適用開始)については、
2012年改正法で「当分の間」の経過措置とされたこと等を踏まえ、「撤廃の方向での検討が必要との見方が
大勢」とした(p.10~11)。個人事業への適用については、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種
(飲食サービス業、理・美容業等)は解消の方向で検討すべきだが、新たに対象となる小規模事業者の負担等も
留意する必要があるとした(p.12)。兼業等で働く人やフリーランス等については、中長期的な課題として検討(p.15~16)としている。
▽取りまとめ(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001269468.pdf
▽「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」議論の取りまとめ(3日公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41109.html
▽参考:引用された当機構調査(p.4脚注8、9)
 調査シリーズNo.243「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」(企業郵送調査)及び「働き方に関するアンケート調査」(労働者 Web 調査)結果
https://www.jil.go.jp/institute/research/2024/243.html


●精神障害の労災請求件数、支給決定件数とも増加/厚労省

厚生労働省は6月28日、2023年度「過労死等の労災補償状況」を公表した。精神障害に関する請求件数は
3,575件(前年度比892件増)、支給決定件数は883件(同173件増)。支給決定件数は5年連続で過去最高を
更新。支給決定件数の出来事別では「上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」
157件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」111件、「セクシュアルハラスメントを受けた」103件、
「仕事内容・仕事量の大きな変化」100件の順。
脳・心臓疾患については、請求1,023件(同220件増)、支給決定214件(同20件増)。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40975.html

●障害者差別および合理的配慮提供に関する相談等実績、昨年度より増加/厚労省

厚生労働省は6月28日、都道府県労働局や公共職業安定所における「雇用の分野における障害者の差別禁止・
合理的配慮の提供義務に係る相談等実績」を公表した。2023年度の障害者差別および合理的配慮の提供に
関する相談は245件(前年度比8.9%・20件増)で、うち障害者差別に関する相談は31件(同16.2%減)、
合理的配慮の提供に関する相談は214件(同13.8%増)。一方、労働局長による紛争解決の援助申立受理件数は
10件、障害者雇用調停会議による調停申請受理件数は9件。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41002.html
▽報道発表資料(過去5カ年度の推移ほか)
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001100985.pdf

●「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を公表/厚労省

厚生労働省は6月28日、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」(2023年6月1日~24年5月31日公表分)
を公表した。都道府県労働局が労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働安全衛生規則等の
労働基準関係法令違反の疑いで送検し各都道府県労働局が公表した内容を集約したもの。
https://www.mhlw.go.jp/content/001150620.pdf
▽長時間労働削減に向けた取組
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

●「選択的週休3日制無料コンサルティング」希望企業を募集/厚労省委託事業

厚生労働省では、「2024年度働き方・休み方改革推進に係る広報事業」の一環として、
「選択的週休3日制 無料コンサルティング」を希望する企業を募集している。
専門家による面談(2回:無料)により、自社の働き方・休み方の現状・課題等を整理したうえで、
「選択的週休3日制」の概要・効果・留意点等の解説や、導入時の論点の整理を行う。
同省では、柔軟な働き方の選択肢のひとつとして注目されている「選択的週休3日制」への理解を
深め、導入検討のきっかけとして活用して欲しいとしている。申込期限は7月26日金曜。
https://work-holiday.mhlw.go.jp/fourdayworkweek/pdf/information01.pdf
▽申込ページ
https://murc-jimukyoku.smartcore.jp/work-holiday_consulting2024

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【統計】
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●業況判断DI、大企業は製造業2ポイント上昇、非製造業は1ポイント低下/日銀短観

日本銀行は1日、6月の「全国企業短期経済観測調査」(短観)結果を公表した。業況判断DI
(「良い」-「悪い」)は、大企業製造業でプラス13(前回3月調査比2ポイント上昇)で2期ぶりに改善。
非製造業でプラス33(同1ポイント低下)。全産業・規模計でプラス12(前回と同ポイント)。
雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は、全産業・規模計でマイナス35(同1ポイント上昇)。
不足超過は、大企業(マイナス28)より中堅(同36)や中小(同37)で、製造業(同21)より
非製造業(同45)で大きい。
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/tankan06b.htm
▽要旨
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/yoshi/tk2406.htm
▽概要
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2406.pdf

●6月の消費者マインドの基調判断、「改善に足踏みがみられる」で据え置き/消費動向調査

内閣府は1日、2024年6月の「消費動向調査」結果を公表した。「消費者態度指数(二人以上の世帯、季調値)」
は36.4(前月比0.2ポイント上昇)。同指数を構成する意識指標のうち前月比上昇は、「収入の増え方」
40.6(0.7ポイント)、「耐久消費財の買い時判断」29.6(0.6ポイント)、前月比低下は「暮らし向き」
33.8(▲0.1ポイント)、「雇用環境」41.7(▲0.3ポイント)。消費者マインドの基調判断は、
「改善に足踏みがみられる」で前月から据え置き。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/youten.pdf
▽統計表等
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/shouhi.html

●2024年1~3月期のGDP実質成長率、年率2.9%減に改定/2次速報改定値

内閣府は1日、2024年1~3月期の四半期別GDP(国内総生産)2次速報の改定値を公表した。
GDP成長率(季節調整済前期比)は、実質がマイナス0.7%、年率換算でマイナス2.9%。
改定前はそれぞれ、マイナス0.5%、マイナス1.8%で、下方修正。
二次速報値の改定は、国土交通省が6月25日に公表した建設総合統計(2024年4月分)で、訂正の反映を
含む遡及改定が行われ、それを「民間住宅」、「民間企業設備」及び「公的固定資本形成」等に反映したことによる。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1r.pdf
▽統計表
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2024/qe241_2/gdemenujar.html
▽四半期別GDP速報(2024年1-3月期2次速報(改定値))の公表について
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/siryou/2024/pdf/announce_20240625.pdf

●5月の鉱工業生産2.8%上昇、基調判断は「一進一退ながら弱含み」で据え置き/鉱工業指数速報

経済産業省は6月28日、5月の鉱工業生産・出荷・在庫指数(速報)を公表した。
生産指数(季調値)は前月比2.8%上昇の103.6で2カ月ぶりの上昇。業種別で上昇したのは
「自動車工業」「電気・情報通信機械工業」「汎用・業務用機械工業」等。低下は、「生産用機械工業」
「無機・有機化学工業」。出荷は103.5で前月比3.5%、在庫は同1.1%のいずれも上昇。在庫率は同0.9%低下。
基調判断は、「総じてみれば、生産は一進一退ながら弱含んでいる」として据え置き。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
▽概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/press/b2020_202405sj.pdf

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【動向】
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●賃金増加幅が物価上昇幅より「大きい」は6.5%/連合総研調査

連合総研は6月20日、第47回「勤労者短観報告書」(勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート調査)を
発表した。4月に同調査の首都圏・関西圏版分析結果を発表しており、今回は全国分析も発表。
全国分析によれば、1年前と比較した賃金収入の変動幅と物価上昇幅の差について、賃金の増加幅が物価上昇
より「小さい」とした回答は60.3%、「大きい」は6.5%。首都圏・関西圏とそれ以外の地域で、顕著な差は
見られない。9ブロック別では、賃金の増加幅が物価上昇より「小さい」が北関東で64.2%と全国を3.9ポイント
上回った(p.II-19、集計表QR17)。業務に対する従業員の充足状況は「不足」が41.5%(集計表QT12)、
業務の繁忙によるストレスが「増」は37.7%(集計表QT14)など。
https://www.rengo-soken.or.jp/work/2024/06/201612.html
※上記の「集計表」は、【第47回勤労者短観】簡易クロス集計表(全国版)を参照。

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【企業】
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●明治安田生命、定年70歳に延長/27年度から、シニア人材活用

明治安田生命保険が営業職員以外の定年を現在の65歳から70歳に引き上げる方針であることが1日、分かった。
労働組合側と協議を進め、2027年度の導入を目指す。同社によると、大手金融機関で定年を70歳にするのは
初めて。人口減少などで働き手の確保が課題となる中、シニア人材を活用する。
65歳以降は本人の希望に合わせ、時短勤務や週3~4日勤務といった働き方も選べる。また、従来通り65歳で
退職金を受け取り、その後は契約社員として働くこともできる。
明治安田生命は、19年度に定年を60歳から65歳に延長。21年度には定年後も契約社員として70歳まで働き続け
られる再雇用制度を導入した。(時事通信)※リンク先なし

●「キャリア休職制度」を導入/山陰合同銀行

山陰合同銀行は6月18日、「キャリア休職制度」を同日付で導入したと発表した。同制度は、従業員の
ライフイベントに際し、退職せず休職扱いし、イベント終了後に復職可能とする制度。利用シーンとして、
(1)大学等への修学、(2)配偶者の海外赴任への同行、を挙げているが、それ以外でも個別協議して
柔軟に対応する、としている。対象者は、休職後も勤務を続ける意思のある従業員で、勤続2年以上の行員
または無期雇用のパートナー職員。
https://www.gogin.co.jp/newsrelease/common/attachmentfile/attachmentfile-file-3597.pdf

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【海外】
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●国別労働トピック/JILPT

<中国>
▽労働保障、「軽微な違法行為」の処罰免除

中国の各地域は「労働保障に関する軽微な違法行為に対する処罰を免除するリスト」(「免除リスト」)を
順次発表している。人的資源・労働保障分野において、企業の「軽微な違法行為」に対する処罰を、
それが初めての違法行為であり、所定期限内に是正することなどを条件に緩和する。企業のビジネス環境改善
などを目的にあげている。四川省においても2024年4月、初めて「免除リスト」が発表された。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/06/china_01.html

<ILO>
▽112回ILO総会を開催―「労働環境における生物学的リスク」や「ケア労働」をテーマに議論

国際労働機関(ILO)は2024年6月3日から14日にかけて、スイス・ジュネーブのILO本部で、第112回総会を
開催した。加盟187カ国の政労使からなる代表団約4,900人が出席。労働環境における生物学的な危険への
労働者の保護や、ケア労働のディーセント・ワークなどをテーマに幅広く議論を行った。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/06/ilo_01.html

▽途上国や女性の「労働力の未活用」解消を―ILO世界の雇用及び社会の見通し(5月版)

ILO(国際労働機関)は2024年5月29日、「世界の雇用及び社会の見通し2024年5月版(World Employment and
Social Outlook: May 2024 Update)」を公表した。2024年の世界の失業率は4.9%とわずかに改善するが、
地域によって労働力を十分に活用できていない状況にあると指摘。特に、地域やジェンダーによる大きな
格差の解消が必要だと指摘した。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/06/ilo_02.html

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【法令】
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●労働関係法令一覧(2024年5月公布分)
https://www.jil.go.jp/kokunai/mm/hourei/202405.html

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【イベント】
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●オンラインセミナー「困窮家庭の子どもたちの夏休み―調査結果より―」/NPOキッズドア

認定NPO法人キッズドアは7月10日(水)18時~19時、オンラインセミナー「困窮家庭の子どもたちの
夏休み―調査結果より―」を開催する。同法人は、物価高の影響を受ける家庭の生活状況を調査するため、
困窮度の高まる夏休みに向けて、本年6月にアンケートを実施。
調査結果の詳細を交え、困窮家庭の子どもたちが夏休みに抱える課題について報告する。視聴無料。
▽セミナー申込
https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_hFnnfXbFSBWIXmeiHG786w#/registration
▽調査結果と緊急提言
https://kidsdoor.net/news/press/20240701.html

●テレワークセミナー/東京テレワーク推進センター

東京テレワーク推進センターは7月18日(木)にセミナー「経営戦略として取り入れるワーケーション
~人材と企業にとって目ざすべき「価値創造」~」をオンライン及び会場(文京区)で開催する。
参加無料、要事前申込。定員はオンライン100名、会場15名。
https://tokyo-telework.metro.tokyo.lg.jp/seminarevent