資料シリーズNo.294
勤務間インターバル制度の実情
―厚生労働省「勤務間インターバル制度に関する実態調査」結果の分析―

2025年10月24日

概要

研究の目的

本調査研究は、厚生労働省雇用環境・均等局総務課雇用環境政策室および労働基準局労働条件政策課からの要請「勤務間インターバル制度の日本国内における導入及び運用状況等に関する調査データの分析」(緊急調査:2024(令和6)年度第1・四半期募集分)に基づいて実施したものである。

調査研究の趣旨は次のとおりである。働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(以下「働き方改革関連法」という。)により労働時間等の設定の改善に関する特別措置法が改正され、勤務間インターバル制度の導入が2019(平成31)年4月1日より事業主の努力義務とされた。同制度は、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(2021(令和3)年7月30日閣議決定)において、過労死をゼロとすることを目指すために数値目標が設定された取組みの1つである。この勤務間インターバル制度について、働き方改革関連法に係る法案審議で参議院厚生労働委員会において「次回の見直しにおいて義務化を実現することも目指して、そのための具体的な実態調査及び研究等を行うこと。」との附帯決議がなされていた。これにより、勤務間インターバル制度の国内企業における導入状況や導入されている場合の制度内容等のほか、企業や労働者の実態を把握することを目的として、厚生労働省は2024(令和6)年に「勤務間インターバル制度に関する実態調査」を実施した。

労働政策研究・研修機構(以下「JILPT」という。)では、厚生労働省の要請を受け、上記調査のデータを分析し、勤務間インターバル制度が導入されている企業における制度の効果・課題、勤務間インターバル制度が適用されている労働者における制度の効果・課題等を分析し、今後の制度拡充や運用における留意点に関する含意を示すことを目的として研究を行った。

研究の方法

厚生労働省が2024(令和6)年に実施した一般統計調査「勤務間インターバル制度に関する実態調査」(企業調査・労働者調査)の個票データの二次分析に基づく。JILPTは、本研究の実施にあたり、厚生労働省より個票データの二次利用に関する許可を得た。

調査対象

(1)企業調査

企業調査の対象範囲は、厚生労働省が実施する「就労条件総合調査」(2017(平成29)年~2023(令和5)年)において、勤務間インターバル制度を導入していると回答した企業であり、約1,000企業である。調査対象の範囲に示した企業の全数を報告者としている。

(2)労働者調査

労働者調査の対象は、上記(1)の企業における正社員かつ勤務間インターバル制度が適用されている労働者であり、約18,000人である。調査対象企業における正社員かつ勤務間インターバル制度が適用されている労働者を抽出単位とし、企業が系統抽出法により無作為に選定している。

調査事項

企業調査、労働者調査の調査事項は下記のとおりである。詳細は、本資料シリーズに掲記の調査票を参照。

(1)企業調査

① 事業所の概要

② 労働時間制度

③ 労働者の健康に関する指標

④ 勤務間インターバル制度

(2)労働者調査

① 報告者の属性

② 労働時間

③ 勤務間インターバル制度

④ 仕事

⑤ 生活、健康、睡眠

調査実施期間

調査実施期間は、2024(令和6)年11月下旬~12月下旬である。把握する調査時点は、令和6年10月1日の状況(一部の調査項目については、2024(令和6)年9月1日~30日の状況。労働者調査について、病気等により仕事を休んだ日数については過去1年間の状況。)である。

主な事実発見

分析の結果の概要は以下のとおりである。

1.企業における勤務間インターバル制度の導入状況、運用、課題

第1章では、企業調査に基づく検討結果を示している。特に、① 勤務間インターバル制度の導入効果については、制度を導入した場合、適正に制度を運用して行くに当たっては従業員本人およびその上司に対して直接的に働きかけることで効果(従業員の健康やワーク・ライフ・バランスの確保)がありそうである。(図表1-3-48 勤務間インターバル時間確保の方法別・制度導入の効果図表1-3-49 勤務間インターバル時間確保の方法別・制度導入の効果の数)また、② 勤務間インターバル時間の確保に向けては、“勤務時間の後ろ倒し”、“始業時刻から実際の勤務開始までの時間数分を働いたものとみなす”、“残業禁止・翌日の始業時間前勤務禁止”といった、実効性のある方法を用いるのが効果(従業員の健康やワーク・ライフ・バランスの確保)があるといえそうである(図表1-3-50 勤務間インターバル時間を確保した場合の労働時間の取扱い別・制度導入の効果)。

2.勤務間インターバル制度適用労働者における休息時間の状況

第2章では、労働者調査データに基づいた分析結果を示す。勤務間インターバル制度が適用されている労働者の大半は、定められたインターバル時間を確保できている。ただ、夜勤に従事する労働者は、インターバルを確保できない場合が相対的に多いという課題もうかがえた。また、勤務先の取組みによるインターバル制度適用効果の違いが見られた。インターバル時間を確保できない場合は就業させないといった、インターバル確保のための実効性ある措置が有効と考えられた(図表2-5-1 インターバル制度適用の効果、制度利用状況の規定要因)。

勤務間インターバルを確保することは、睡眠時間の確保に一定の効果をもたらし、それは、労働者の心身の健康や業務パフォーマンスの維持・向上にも関わると示唆された。ただ、睡眠時間には、インターバルの長さのみでなく、通勤時間、家事・育児・介護時間の長さも制約要素として関わり、勤務時間外の仕事連絡や持ち帰り残業も睡眠時間の制約に関係していた(図表2-5-3 睡眠時間6時間未満の規定要因)。このことから、休息時間の確保にあたっては、それに関わる個人差(通勤時間や家庭責任等)に注意が必要であるとともに、勤務時間外における仕事からのデタッチメントを確保することも重要と示唆された。

政策的インプリケーション

勤務間インターバル制度を導入して運用するに当たっては、実効性ある方法を取ることで制度導入の効果があると考えられる。また、勤務時間外に仕事から解放されることを確保することが重要である。

政策への貢献

施行後5年を経た働き方改革関連法により改正された関連諸法の改正論議に活用されることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「多様な働き方と処遇に関する研究」
サブテーマ「労働時間・賃金等人事管理に関する研究」

研究期間

令和6~7年度

研究担当者

池添 弘邦
労働政策研究・研修機構 統括研究員
高見 具広
労働政策研究・研修機構 主任研究員
藤本 隆史
労働政策研究・研修機構 リサーチアソシエイト

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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