労働政策レポート No.13
年金保険の労働法政策

2020年1月14日

概要

研究の目的

年金制度改正の主たる論点である短時間労働者への適用拡大や受給開始時期の選択幅拡大等について、関連事項も含めて歴史的にその経緯の詳細を跡づけ、年金法政策と労働法政策との関連性を明らかにすること。

研究の方法

文献調査

主な事実発見

厳密な意味での新たな事実発見はない。厚生年金保険法には元々臨時日雇労働者の適用除外は存在したが、短時間労働者は適用除外されていなかった。1980年の課長内翰でこれが適用除外されたが、その背景には日経連の要望、雇用保険法の取扱い、健康保険法における被扶養者の扱い等があった。21世紀以降、非正規労働者の均等均衡処遇が労働政策の課題となる中で、短時間労働者への厚生年金の適用拡大が繰り返し試みられ、2012年改正で実現したがなお多くの中小企業が除外されており、その拡大が目指されている。

年表

社会保障法政策 労働法政策
1922 4月:健康保険法成立
1926 6月:健康保険法施行令成立
1927 1月:健康保険法施行
1934 健康保険法改正
1936 6月:退職積立金及退職手当法成立
1939 3月:船員保険法成立、4月:職員健康保険法成立、健康保険法改正
1940 健康保険法施行令改正
1941 2月:労働者年金保険法成立
1942 健康保険法改正(被扶養者)
1944 2月:労働者年金保険法改正(厚生年金保険法へ)
1947 4月:厚生年金保険法改正・健康保険法改正(業務上災害給付の移管等) 4月:労働基準法・労働者災害補償保険法成立、11月:失業保険法成立
1948 7月:厚生年金保険法改正(報酬月額)、12月:社会保障制度審議会設置法成立
1949 7月:保発第74号
1950 11月:保文発第3082号 1月:職発第49号(臨時内職的)
1953 8月:厚生年金保険法改正(適用範囲の拡大)
1954 5月:厚生年金保険法全部改正(男子支給開始60歳等)
1956 7月:保文発第5114号
1957 健康保険法改正(被扶養者の範囲)
1959 4月:国民年金法成立
1961 11月:日経連要望(調整年金)
1965 6月:厚生年金保険法改正(厚生年金基金、高在労)
1968 6月:失保発第69号(4分の3要件)
1969 厚生年金保険法改正(低在労、適用事業所見直し規定)
1970 3月:日経連要望(女子パート適用除外)
1973 9月:雇用対策法改正(定年延長援助)
1977 4月:保発第9号
1980 6月:3課長内翰
1985 4月:国民年金法・厚生年金保険法改正(基礎年金、第3号被保険者、女子支給開始60歳等、支給繰下げ、高在老廃止)
1986 4月:高年齢者雇用安定法(60歳定年努力義務等)
1989 国民年金法・厚生年金保険法改正(学生強制加入(定額部分65歳支給開始は削除)) 6月:高年齢者雇用安定法改正(65歳再雇用努力義務)
1991 5月:育児休業法成立
1993 6月:パート労働法成立(均衡)
1994 国民年金法・厚生年金保険法改正(定額部分65歳支給開始、基礎年金の繰上げ、低在労段階化、育児期間保険料本人負担分免除) 6月:高年齢者雇用安定法改正(60歳定年義務、65歳継続雇用努力義務)、雇用保険法改正(高年齢雇用継続給付、育児休業給付)
1998 4月:日経連要望(代行返上)、10月:年金審議会意見(第3号被保険者、パート労働者等)
2000 3月:国民年金法・厚生年金保険法改正(報酬比例部分65歳支給開始、学生納付特例制度、厚生年金の繰上げ、繰下げは廃止、高在労復活、育児期間保険料免除) 5月:高年齢者雇用安定法改正(65歳雇用確保措置努力義務)
2001 6月:確定拠出年金法成立、確定給付企業年金法成立、12月:女性のライフスタイル年金検討会報告(第3号被保険者、パート労働者、育児期間等) 11月:育児・介護休業法改正(勤務時間短縮措置)
2004 国民年金法・厚生年金保険法改正(保険料の上限固定・給付水準の自動調整、繰下げ復活、低在労改正、育児期間配慮措置拡大(パート労働者については先送り)) 6月:高年齢者雇用安定法改正(65歳雇用確保措置義務(労使協定による例外))
2006 国民年金法・厚生年金保険法改正(高在労拡大)
2007 被用者年金制度の一元化を図るための厚生年金保険法改正案(パート労働者への適用拡大)を提出 5月:パート労働法改正(一部差別禁止)
2009 2007年法案廃案
2010 12月:管企発1215第2号
2012 8月:公的年金の財政基盤及び最低保障機能の強化のための年金法改正(パート労働者への第1次適用拡大、産休配慮措置) 8月:高年齢者雇用安定法改正(65歳雇用確保措置義務)
2013 6月:公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための年金法改正(厚生年金基金の廃止、運用3号の解決)、10月:社会保障改革プログラム法
2016 6月:確定拠出年金法改正(加入者拡大)、12月:公的年金制度の持続可能性の向上を図るための年金法改正(パート労働者への第2次適用拡大)
2019 9月:働き方多様化社会保険懇談会取りまとめ、社会保障審議会年金部会で審議、12月:「議論の整理」取りまとめ 6月:成長戦略実行計画(70歳就業機会確保)、労働政策審議会雇用対策基本問題部会で審議、12月:報告

政策的インプリケーション

短時間労働者の多数を占める主婦パートの低処遇の社会的背景として指摘される社会保険における適用除外や第3号被保険者問題について、その歴史的経緯を明らかにすることにより、政策論議の素材として政労使その他の研究者によって活用されうる。

政策への貢献

政策当局にとっては個別的には(おそらく)既知の事実の集積であるが、労働政策と社会保障政策の関係を歴史的にこうした形でまとめたものは存在せず、有用と思われる。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「人口・雇用構造の変化等に対応した労働・雇用政策のあり方に関する研究」
サブテーマ「非正規労働者の処遇と就業条件の改善に関する研究」

研究期間

令和元年度

執筆担当者

濱口 桂一郎
労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長

関連の研究成果

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