調査シリーズNo.216
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)
- 記者発表『「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」(企業調査、労働者調査)結果』(PDF:1.5MB)(2021年2月5日)
概要
研究の目的
民間企業における人材育成と能力開発について、取り組みの現状と課題の把握を目的として、アンケート調査を実施した。厚生労働省が実施する『能力開発基本調査』では調査対象となっていない小規模企業(30人未満)も対象に含め、小規模企業の状況についても把握するものとした。なお、本調査は厚生労働省人材開発統括官からの要請を受けて行った。
研究の方法
企業アンケート調査(郵送方式)
調査対象は、日本標準産業分類に基づく「建設業」、「製造業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「情報通信業」、「運輸業,郵便業」、「卸売業,小売業」、「金融業,保険業」、「不動産業,物品賃貸業」、「学術研究,専門・技術サービス業」、「宿泊業,飲食サービス業」、「生活関連サービス業,娯楽業」(その他の生活関連サービス業のうち家事サービス業を除く)、「教育,学習支援業」、「医療,福祉」、「複合サービス事業」、「サービス業(他に分類されないもの。外国公務を除く)」に属する従業員数5人以上の企業20,000社。2016年経済センサス活動調査での企業分布に従い、民間信用調査機関所有の企業データベースから業種・規模別に層化無作為抽出した。
主な事実発見
- 労働者の能力開発方針の決定主体(A:企業主体で決定、B:労働者個人主体で決定)は、「企業主体で決定している」(「Aである」15.9%+「Aに近い」43.2%)とする企業割合が59.1%と過半数を占め、「労働者個人主体で決定している」(「Bである」6.1%+「Bに近い」28.9%)とする35.0%を大きく上回っている。
- 規模別にみると、いずれの規模でも半数以上は、「企業主体で決定している」と回答している。ただし規模の小さい企業では、規模の大きい企業に比べ、「労働者個人主体で決定している」とする割合が高くなっている(図表1)。
- 従業員の能力開発・向上を図るため、業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練・研修(OFF-JT)を、2019年度に実施したかどうかを尋ねたところ、約3分の1(32.1%)の企業がOFF-JTを「実施した」と回答している。
- 規模別にみると、規模の大きい企業ほどOFF-JTを「実施した」と回答している。「9人以下」では15.8%に留まっているが、「100~299人」では64.4%が、「300人以上」では71.9%が実施している(図表2)。
- 2019年度に、従業員の自己啓発に対する支援を行ったかどうかを尋ねたところ、約4分の1の企業(25.2%)が「行った」と回答した。
- 規模別にみると、規模の大きい企業ほど自己啓発に対する支援を行っている。「300人以上」では6割以上(63.7%)が支援を行っている(図表3)。
政策的インプリケーション
小規模企業では、能力開発方針を労働者個人主体で決定としている企業も多く、OFF-JTや自己啓発支援が低調な状況にある。小規模企業も含めた、行政による人材育成・能力開発の支援が重要となる。
政策への貢献
人材開発行政にかかる政策立案のための基礎資料として活用される。
本文
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研究の区分
情報収集
研究期間
令和2年度~3年度
調査担当者
- 郡司 正人
- 労働政策研究・研修機構 調査部長
- 藤本 真
- 労働政策研究・研修機構 人材育成部門 主任研究員
- 荒川 創太
- 労働政策研究・研修機構 調査部 主任調査員補佐
- 岩田 敏英
- 労働政策研究・研修機構 調査部 調査員
*肩書きは調査実施時点。
データ・アーカイブ
本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.144)。