調査シリーズNo.211
年次有給休暇の取得に関するアンケート調査
(企業調査・労働者調査)

2021年7月8日

概要

研究の目的

働き方改革関連法の施行に伴い、勤労者の年次有給休暇取得に関する実態や意識などを把握することを目的として、企業・労働者アンケート調査を行った。本調査は、厚生労働省労働基準局の要請に基づき実施したものである。

研究の方法

アンケート調査

調査方法
郵送配付、郵送回収
調査期間
2020年1月27日~2月7日
調査対象
企業調査:全国の従業員30人以上の企業 1万7,000社。

信用調査機関の企業データベースにより、平成28 年度経済センサス-活動調査の母集団分布に基づき、産業・従業員規模別に層化無作為抽出(農林漁業、公務除く)。

 
労働者調査:調査対象企業を通じて、そこで雇用されている労働者7万1,796人(300人未満4通、300~999人6通、1,000人以上8通)
有効回収数

企業調査:5,738票(有効回収率:33.8%)

労働者調査:1万5,297票(有効回収率21.3%)

主な事実発見

  • 企業調査の年休の計画的付与制度の導入状況によれば、「導入されている」とする企業割合は42.8%となっている。
  • 企業調査では、年休取得率や年休取得日数などの目標設定について、「年休取得日数の目標のみを設定している」で53.6%と半数を占め、「年休取得率の目標のみを設定している」が4.3%、「年休取得率及び取得日数双方について目標を設定している」が4.1%、「上記以外の目標を設定している」が0.9%となっている。その一方で、「何らの目標も設定していない」は34.9%だった。
  • 労働者調査の2018年度の年次有給休暇の取得日数の3年前と比べての増減状況では、「変化しなかった」が46.4%を占めるが、「増加」(「5日以上増えた」「3~4日増えた」「1~2日増えた」の合計)も41.5%となっている。「減少」(「5日以上減った」「3~4日減った」「1~2日減った」の合計)は4.4%とわずかである。「増加」と回答した者の年次有給休暇の取得日数が増えた理由(複数回答)は、「会社の取組みにより取りやすい就業環境になったから」が37.6%ともっとも高く、次いで、「個人的理由により、有給休暇が必要になったから」(31.3%)、「上司に有給休暇を取得するよう勧められたから」(21.0%)、「法律等の影響もあり年休を取りやすい環境ができた」(20.7%)などとなっている。
  • 労働者調査の年次有給休暇を取り残す理由では、各項目の肯定割合(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)では、「急な用事のために残しておく必要があるから」が74.1%でもっとも高く、次いで、「病気のために残しておく必要があるから」(70.5%)、「休むと職場の他の人に迷惑になるから」(51.7%)、「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから」(39.7%)、「仕事の量が多すぎて休んでいる余裕がないから」(38.5%)、「現在の休暇日数で十分だから」(28.2%)、「職場の周囲の人が取らないので年休を取りにくいから」(25.6%)などとなっている(図表1)。
  • 年次有給休暇の年5日の取得義務化についての理解度では、企業調査において、「内容を十分に理解している」が64.4%ともっとも割合が高く、次いで、「ある程度理解している」(31.1%)となっており、「聞いたことがある」(3.1%)、「知らない」(0.6%)はわずかである。一方、労働者調査では、年次有給休暇の年5日の取得義務化の認知度について、「内容を含め知っている」が54.9%ともっとも割合が高く、次いで、「聞いたことがある」(29.5%)、「知らない」(14.3%)となっている。
  • 労働者調査において、3年前と比べての年次有給休暇の取りやすさに対する認識では、「取りやすくなった」(「かなり取りやすくなった」「やや取りやすくなった」の合計)は52.1%と半数を占め、「どちらともいえない」が35.9%であり、「取りにくくなった」(「かなり取りにくくなった」「やや取りにくくなった」の合計)は3.7%と少数である。「取りやすくなった」者の取りやすくなった理由(複数回答)は、「年休の年5日の取得義務化の施行」の割合が67.8%ともっとも高く、次いで、「会社や上司などからの年休取得への積極的な働きかけ」(44.2%)、「自分で積極的に取得するよう心掛けた」(31.4%)、「仕事の内容、進め方の見直し(仕事の効率化等)」(23.2%)、「年休取得のための目標設定(取得率、取得日数等)」(14.6%)、「年休の計画的付与制度の導入・定着」(13.9%)などが続く。
  • 企業調査での時間単位年休取得制度の導入状況では、「導入している」が22.0%となっている。企業における時間単位年休取得制度の導入理由(複数回答)では、「日単位・半日単位に満たない時間の取得が可能で便利」(70.0%)がもっとも高く、次いで、「個人的な事情に対応した休暇取得が可能になる」(57.3%)、「年休の取得促進のため」(56.5%)、「育児、介護の支援」(49.0%)、「仕事と治療の両立支援」(42.1%)などとなっている(図表2)。
  • 時間単位年休取得制度を導入していない理由(複数回答)は、「勤怠管理が煩雑になる」が50.3%ともっとも高く、次いで、「すでに半日単位の年休取得制度がある」(46.8%)、「給与計算が複雑になる」(39.3%)、「変形労働時間制等のため時間単位の代替要員確保困難」(31.4%)、「導入可能と不可能部署があり平等性から導入しづらい」(29.4%)などとなっている。
  • 企業調査では、年間を通じて、時間単位で取得できる年次有給休暇(限度日数)は、法定上限日数の「5日」がもっとも割合が高い。時間単位年休の取得できる最小の単位は、「1時間」の割合がもっとも高い。
  • 労働者調査での時間単位年休取得制度の導入・適用状況では、「時間単位年休制度が導入されており対象労働者である」が22.3%、「時間単位年休制度が導入されてるが対象労働者でない」が1.8%となっており、両者を合わせて、時間単位年休取得制度導入割合をみると、24.1%となっている。一方、「そもそも時間単位年休制度が導入されていない」が39.3%、「わからない」が34.9%となっている。時間単位年休取得制度が適用・導入されていない者(「わからない」を含む)で、勤務先での時間単位年休取得制度の「導入・適用してほしい」とする割合は50.6%となっている。
  • 労働者調査において、時間単位年休の取得経験については、「取得したことがある」が56.7%となっている。取得者の取得した時間単位年休の総日数は、「2日分以上~3日分未満」が29.1%ともっとも割合が高く、次いで、「1日分未満」(24.1%)、「1日分以上~2日分未満」(15.9%)、「5日分すべて」(9.5%)、「4日分以上~5日分未満」(8.0%)、「3日分以上~4日分未満」(7.6%)となっている。取得者の時間単位年休の用途(複数回答)については、「自身の病気などの通院」をあげる割合が63.7%ともっとも高く、次いで、「家事・育児・子供の行事参加」(32.7%)、「銀行や役所等の手続」(26.1%)、「介護や看護」(13.5%)などとなっている。
  • 労働者調査において、時間単位年休取得制度取得の満足度は、「満足・計」(「たいへん満足している」「まあ満足している」の合計)の割合は65.4%である一方、「不満・計」(「あまり満足していない」「まったく満足していない」の合計)の割合は4.9%となっている。時間単位年休の取得経験別にみると、「取得したことがない」に比べて「取得したことがある」者の方が「満足・計」の割合が高い。

図表1 年次有給休暇を取り残す理由(SA、単位=%)【労働者調査】

図表1画像

図表2 時間単位年休取得制度を導入した理由(MA、単位=%)【企業調査】

図表2画像

政策的インプリケーション

近年の年次有給休暇取得促進策により会社や上司などによる年休取得にかかわる雰囲気が改善されたこと、また、年休の年5日の取得義務化の施行により、労働者側からみても年休の取得しやすさ向上の認識がみられる。年休の計画的付与制度の導入など、年休取得促進策に取り組む企業も一定割合みられる。時間単位年休の導入企業割合は2割程度だが、導入理由では利便性の高さや年休取得促進、育児、介護支援につながることが評価されている。労働者側も、病気治療や育児・介護で時間単位年休を取得しており、満足度は利用経験のある者ほど高い。

政策への貢献

年休の取得しやすさ向上や、年休の時間単位取得の有効な活用の在り方について基礎的データを提供した。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

情報収集

研究期間

令和元年度

調査担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 調査部長(執筆時)
(現・リサーチフェロー)
奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査部 主任調査員
田中 瑞穂
労働政策研究・研修機構 調査部 調査員

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.136)。

関連の研究成果

入手方法等

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