調査シリーズ No.85
年次有給休暇の取得に関する調査

平成23年6月20日

概要

研究の目的と方法

ワーク・ライフ・バランス実現のためには、原則として労働者がその取得時季を自由に設定できる年次有給休暇の取得が重要である。しかしながら、年次有給休暇については、周囲に迷惑がかかること、後で多忙になること、職場の雰囲気が取得しづらいこと等を理由に、多くの労働者がその取得にためらいを感じている。その結果、近年、年次有給休暇の取得率は低水準にある。 本調査は年次有給休暇の取得促進の阻害要因を確認し、今後のワーク・ライフ・バランス推進のための施策に役立てることを目的とする。

調査対象は、民間調査会社に登録している郵送調査協力モニターの中から正社員3,000人を抽出。調査方法は、対象者に調査票を郵送し、郵便で回収。有効回収は2071票となっている(有効回収率69.0%)。なお、正社員との比較サンプルとして、別途、非正社員にも調査を実施している。

主な事実発見

  1. 正社員調査では、年休取得日数の平均値は8.1日、年休取得率の平均値は51.6%。年次有給休暇を取り残す理由(各項目の肯定割合の合計)は、「病気や急な用事のために残しておく必要があるから」が64.6%でもっとも多く、次いで、「休むと職場の他の人に迷惑をかけるから」(60.2%)、「仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないから」(52.7%)、「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから」(46.9%)、「職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから」(42.2%)、「上司がいい顔をしないから」(33.3%)、「勤務評価等への影響が心配だから」(23.9%)などとなっている(図表1)。
  2. 年次有給休暇の計画的付与制度 (以下、「計画的付与制度」と略す)が「導入されている」とする者は21.8%、「導入されていない」とする者が34.7%、「わからない」が42.2%となっていた。計画的付与制度が導入されていない者(「導入されていない」「わからない」と回答した者)について、計画的付与制度の導入希望を尋ねたところ44.8%が導入を希望している。これを年休取得日数別にみると、おおむね取得日数が少なくなるほど導入希望割合は高まる傾向にある。週当たり労働時間別にみても、労働時間が長い者ほど導入希望割合は高まる。また、上司の部下に対する年休取得奨励の積極度別にみると、部下の年休取得の奨励に消極的な上司がいるほど、導入希望割合は高まっている。年休の取得日数が少ない者や労働時間が長い者、上司が年休取得に積極的でない者で計画的付与制度の導入希望が高まるようである(図表2)。
  3. 勤務先で年休取得率や年休取得日数などの目標を定めているか尋ねたところ、「目標設定あり」(「年休取得率の目標のみを設定」「年休取得日数の目標のみを設定」「年休取得率及び取得日数双方に目標設定」「上記以外の目標を設定している」の合計)は、23.7%だった。企業が年休取得率や年休取得日数などの目標を定めることについてどう思うか尋ねたところ、81.9%が目標設定を希望(「ぜひ設定してほしい」「まあ設定してほしい」の合計)している。
  4. 3年前と比べて、年次有給休暇が取りやすくなった人に理由を尋ねたところ、「年休が取りやすい職場の雰囲気になったから」が42.8%でもっとも多く、次いで「自分で積極的に取得するよう心掛けた」(41.5%)、「上司などからの年休取得への積極的な働きかけ」(30.6%)、「仕事の内容、進め方の見直し」(19.9%)などとなっている。

図表1 年次有給休暇をとり残す理由(n=2003)〔正社員調査〕

図表1 年次有給休暇をとり残す理由(n=2003)〔正社員調査〕/調査シリーズNo.85

図表2 計画的付与制度の導入希望〔正社員調査〕

図表2 計画的付与制度の導入希望〔正社員調査〕/調査シリーズNo.85

政策的含意

年休を取得しづらい理由では、病気などの急な用事に対する備えの他は、職場の雰囲気や仕事量、代替要員など、いずれも勤め先の要因によって生じている理由が上位にきている。そして、計画的付与制度の導入希望をみると、年休の取得日数が少ない者や労働時間が長い者、上司が年休取得に積極的でない者で計画的付与制度の導入希望が高い。職場の雰囲気改善や上司の年休取得奨励のためには、計画的付与制度の普及や年休取得率の目標設定など、よりいっそうの企業側の取り組みを促進することが求められる。

政策への貢献

年次有給休暇の取得促進の阻害要因とともに、年休の計画的付与制度や取得目標設定などの年休取得促進策に関する労働者の意識、評価について詳細に調査・分析しており、ワーク・ライフ・バランス実現のために必要な年次有給休暇の取得促進策を検討する上で有益な情報を提供している。

本文

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調査研究担当者

郡司正人
労働政策研究・研修機構 主任調査員
奥田栄二
労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐

研究期間

平成22年度

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.57)。

入手方法等

入手方法

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