調査シリーズNo.203
企業における福利厚生施策の実態に関する調査
―企業/従業員アンケート調査結果―

2020年7月31日

概要

研究の目的

勤労者の福利厚生については、非正規雇用労働者の増加など就業構造が変化するなか、各企業が様々な取組みを重ねている。そこで、企業における福利厚生制度・施策の現状や従業員のニーズなどを探るため、アンケート調査を実施した。本調査は厚生労働省雇用環境・均等局勤労者生活課勤労者福祉事業室からの要請により実施したものである。

研究の方法

方法:
郵送による調査票の配付・回収
時期:
2017年10月28日~12月20日
調査対象:
平成26(2014)年経済センサス基礎調査(確報)の企業分布に従い、東京商工リサーチの企業情報データベースから、産業・規模別に層化無作為抽出した、全国の10人以上規模の民間企業1万2,000社(農林漁業、鉱業を除いた15大産業)と、そこで働く従業員約5万4,000人 (従業員票は企業規模に応じ、1社あたり「30人未満」規模3枚、「30~99人」規模6枚、「100~299人」規模9枚、「300人以上」規模12枚をそれぞれ配分)
有効回収数:
企業  2,809社/有効回答率23.4%
従業員 8,298人/有効回答率15.4%

主な事実発見

(企業調査)

本調査では、福利厚生制度・施策(サービス)を財産形成(財形貯蓄制度など)、休暇制度(慶弔休暇制度)など11カテゴリ・48項目に分類して示している。この48項目について、企業に「施策の有無」を尋ねたところ、施策が「ある」と答えた割合は、「慶弔休暇制度」(90.7%)、次いで「慶弔見舞金制度」(86.5%)、「病気休職制度」(62.1%)、「永年勤続表彰」(49.5%)、「人間ドック受診の補助」(44.6%)の順となっており、「休暇制度」、「慶弔災害」、「健康管理」に関連するものが並び、ほかに「住宅」、「余暇活動」に属する施策も見られる(図表1)

図表1 施策が「ある」割合

図表1 画像

この他、企業調査においては以下のような特徴が明らかになっている。

  • 福利厚生制度・施策について、従業員規模別に「ある」と答えた割合をみると、全般的な傾向としては、規模が大きいほど「ある」の割合が高い。
  • 施策・制度ごとに実施・導入が「ある」と答えた企業に対し、その施策等を非正規従業員に適用しているか否かの回答割合(企業全体における実施割合が低くても、非正規従業員への適用が進んでいる場合この割合は高くなる)は、「食事」(「食事手当」56.4%など)、「健康管理」、「両立支援」、「慶弔災害」(「慶弔見舞金制度」53.9%など)、「働き方」(「ノー残業デー等の設置」60.2%、「短時間勤務制度」55.1%など)が高い水準にある。
  • 上記の割合と異なり、企業全体(施策の実施が「ない」と答えた企業も含む)のうち非正規従業員に適用している割合をみると、「慶弔見舞金制度」(46.6%)の割合が最も高く、以下、「慶弔休暇制度」、「病気休職制度」、「社員旅行の実施、補助」、「人間ドック受診の補助」などの適用割合が高い。
  • 今後「充実させたい(施策の新設・拡充含む)」施策についてすべての企業に聞いたところ、「充実させたい」と答えた企業割合は、「メンタルヘルス相談」が12.4%で最も高く、以下、「治療と仕事の両立支援策」、「人間ドック受診の補助」、「社内での自己啓発プログラム」、「ノー残業デー等の設置」、「社員旅行の実施・補助」、「社外の自己啓発サービスの提供・経費補助」などの順となっている。
  • 実施している福利厚生施策の数(施策が「ある」数)を従業員規模別に集計したところ、実施している施策数は規模が大きくなるほど多くなる傾向がみられ、300人以上規模企業では4割以上が20以上の施策を実施している。
  • 福利厚生制度・施策について、重視する目的を尋ねたところ(複数回答3つまで)、「現在」の目的については、「従業員の仕事に対する意欲の向上」、「従業員の定着」、「人材の確保」など雇用維持・確保の関連事項が企業割合5割を超えている。
  • アウトソーシングを実施している企業は全体の15.0%。カフェテリアプラン導入企業は1.3%で導入割合は低い。1000人以上規模企業ではアウトソーシング実施が37.5%、カフェテリアプラン導入が9.4%になるなど、どちらも従業員規模が大きくなるほど実施・導入の割合が高い。

(従業員調査)

従業員に対し、自分にとって「特に必要性が高いと思うもの」(複数回答)(勤務先での制度・施策のある・なしにかかわらず)を聞いたところ、「人間ドック受診の補助」(21.8%)をはじめとして、「慶弔休暇制度」、「家賃補助や住宅手当の支給」、「病気休暇制度(有給休暇以外)」、「病気休職制度」などがあがった。主に「健康管理」、「休暇制度」に関連するものが目立っている(図表2)

図表2 特に必要性が高いと思うもの

図表2図表

一方、福利厚生に関する制度・施策について、実際に「ある」か否か、そして「ある」場合の「利用のある・なし」を従業員に聞いたところ、施策が「ある」を選択し、かつ利用が「ある」割合の高い項目は、「財産形成」関連項目で「財形貯蓄制度」「社内預金制度」、「従業員持株制度・持株会」がそれぞれ3割以上。「食事」関連では「食堂」、「食事手当」がともに5割以上と高い。「健康管理」では「診療所、健康管理センター等医療施設」と「人間ドック受診の補助」がそれぞれ4割前後。「休暇制度」で「リフレッシュ休暇」、「働き方」で「ノー残業デー等の設置」が3割台となっている。このほか、「余暇活動」関連で「運動会等のレクリエーション活動の実施」(39.3%)が約4割、「社員旅行の実施、補助」(47.3%)が5割近くの高い割合。

この他、従業員調査における主な特徴は以下の通り。

  • 「必要性が高いと思う制度・施策」についての性・就業形態別の回答は、「財形貯蓄制度」で正社員(12.0%)とパート・アルバイト(7.6%)を比べると正社員のほうが「必要性が高いと思う」割合が高い。「世帯用住宅・寮の整備」「家賃補助や住宅手当の支給」についても同様に正社員の割合が高い。「退職前準備教育(セミナーなど)」をはじめ高齢者に関する項目は「契約社員」および「嘱託」の割合が高い。これに対し、「人間ドック受診の補助」については性・就業形態別の差が少なく、健康管理に属するものとしては「治療と仕事の両立支援」、休暇制度に属する「病気休職制度」、「病気休暇制度(有給休暇以外)」、「慶弔休暇制度」のほか、「慶弔災害」に属する「慶弔見舞金制度」に関しても就業形態ごとの差が少ない。
  • 会社の福利厚生制度に満足しているかどうについての回答をみると、「どちらともいえない」(50.2%)が半数近くを占め、「満足」と「不満足」の割合が拮抗している。男女別では、大きな差はみられない。就業形態別では、「パート・アルバイト」および「契約社員」「どちらともいえない」の割合が高く、「嘱託」で「不満足」の割合が高い。年齢別では、「20歳未満」および「20歳代」で満足度が高く、「60歳以上」で最も低くなっている。一方、「不満足」の割合は50歳代で最も高い。
  • 「会社の福利厚生制度に満足しているか」と「現在の会社に勤め続けたいと思うか」の回答結果の関係をみると、福利厚生制度に「満足」の割合が高いほど、現在の会社に「勤め続けたい」とする割合も高くなっている。反対に福利厚生制度に「不満足」の場合、「どちらかと言えば勤め続けたくない」「勤め続けたくない」の割合が顕著に高くなっている。

政策的インプリケーション

法定外福利厚生施策は、かつての慶弔給付、財産形成、食事・住宅等の提供あるいは補助といった主軸に加え、現在、仕事と生活の両立支援、自己啓発、労働時間・休暇制度の見直しを含む「働き方改革」に係る施策など、多様化が進行しており、本調査ではその状況をある程度明らかにできたと考える。また、企業の従業員規模別や利用者の就業形態別の状況、大手企業を中心とするアウトソーシング、カフェテリアプランの利用実態なども調べており、多様な制度構築や「働き方改革」との関連付けの検討など幅広い利用を期待している。

政策への貢献

労働政策審議会(勤労者生活分科会)における調査結果報告等に活用された。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

情報収集

研究期間

平成29~30年度

調査実施担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 調査部長
吉田 和央
労働政策研究・研修機構 調査部主任調査員

入手方法等

入手方法

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