調査シリーズ No.100
職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査

平成24年 3月30日

概要

研究の目的と方法

自殺者が14年間連続で3万人を超え、このうち約8,200人が労働者であり、「勤務問題」を自殺の原因の一つとしている者は2,700人に達しているなど、労働者の心の健康(メンタルヘルス)に関する社会的な関心が高まり、様々な取り組みが広がりつつある。厚生労働省では、労働政策審議会において、ストレス症状を有する労働者に対する面接指導制度の導入等が提言され、法改正も含めた検討が行われている。

本調査は、メンタルヘルスケアにかかわる検討に資するため、職場におけるメンタルヘルスの実態や、企業の取り組み、企業のメンタルヘルスケアに対する意識など探り、メンタルヘルスケアを進めるうえでの課題を明らかにすることを目的としている。

調査は、農・漁業を除く従業員10人以上の民間事業所14,000カ所(帝国データバンクの事業所データベースを母集団に、産業・規模別に層化無作為抽出)を対象に、調査票を郵送で配布・回収して実査。集計結果は抽出母集団の産業・従業員規模に基づいてウエイトバックしている。有効回収数は5,250件で有効回収率は37.5%となっている。

主な事実発見

<メンタルヘルスで休職・退職した人がいたのに、1/3の事業所が対策に取り組んでいない>

過去1年間にメンタルヘルスで1カ月以上の休職または退職した労働者がいた事業所について、メンタルヘルスの取り組み状況をみると、「取り組んでいる」事業所が6割強(64.0%)と過半数を占める一方、休職・退職者がいるにもかかわらず「取り組んでいない」事業所が1/3と少なくないのが目立つ。

<約9割の事業所がメンタルヘルスと企業パフォーマンスの関係を認識>

メンタルヘルスの問題と、生産性の低下や重大事故など、企業のマイナスのパフォーマンスとの関係をどう考えるかについては、「関係がある」(42.1%)、「密接に関係がある」(22.8%)、「どちらかと言えば関係がある」(21.3%)を合わせて、約9割(86.2%)の事業所が、関係ありと認識しており、「どちらともいえない」は9.6%で、無関係(「あまり関係がない」「まったく関係がない」「関係がない」の合計)だと考えているのは3.4%と少数だった。

<メンタルヘルスケアに取り組んでいないところでも、今後は過半数が「取り組み強化」>

今後のメンタルヘルスケアの位置づけについては、強化するべきだと考えている事業所が7割強。メンタルヘルスケアの取り組みの有無別にみると、取り組んでいない事業所でも、積極派(「強化する必要がある」9.1%、「どちらかと言えば強化する必要がある」43.3%)が過半数を超えており、今後の取り組みの広がりが予測できる結果となっている。

図表 1カ月以上休職、退職した労働者の有無とメンタルヘルスケアの取組

図表 1カ月以上休職、退職した労働者の有無とメンタルヘルスケアの取組/調査シリーズNo.100(JILPT)

政策的含意

大手企業などで、メンタルヘルスケアの取組が進んできていることは、調査結果からも明かとなっている。しかし、中小企業を中心に、まだ、ケアに取組んでいないところも少なくない。とくに、メンタルヘルスを原因として1カ月以上の休職、もしくは退職してしまった労働者がいる事業所であっても、3割を超える事業所がケアに取組んでいない実態は、今後、さらに強力に企業のメンタルヘルスケアを促進させる施策の必要性を再認識させた。また、現在、ケアに取組んでいない事業所でも、過半数が取組みを強化したいと回答している調査結果からは、施策の打ち方次第で、企業におけるケアの取組みが飛躍的に促進される可能性があることを示唆している。

政策への貢献

労働政策審議会でのメンタルヘルスケアに関する検討において、検討のための基礎データとして活用され、労働安全衛生法の改正に貢献した。また、他に類似の調査は少なく、職場におけるメンタルヘルスケアについて議論するうえでの基礎データを広く一般に提供している。

本文

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調査実施担当者

郡司正人
労働政策研究・研修機構 調査・解析部 主任調査員
新井栄三
労働政策研究・研修機構 調査・解析部 主任調査員

研究期間

平成23年度

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.42)。

入手方法等

入手方法

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