調査シリーズ No.91
中小企業における既卒者採用の実態

平成24年 3月30日

概要

研究の目的と方法

本研究は、中小企業による「既卒者(学校を既に卒業しかつ正規の仕事に就いたことがない、あるいは正規の仕事を早期離職した35歳未満の若者)」採用の現状を把握し整理することを目的とする。

  • 方法1)政府統計等のマクロデータを分析し、新卒人材が不足している分野を探索した(問題1)。
  • 方法2)JILPTの既存調査(調査シリーズNo.43「企業における若年層の募集・採用等に関する実態調査」)のデータを再分析し、新卒採用枠と中途採用枠において、どのような企業が何のために既卒者を募集・採用したのかを明らかにした(問題1・2)。
  • 方法3)既卒者採用実績を持つ中小・中堅企業にヒアリング調査を行い、既卒者を採用する目的、方法、求める条件、実際の採用事例、制度の活用状況、今後の課題等を尋ねた結果をとりまとめた(問題2・3)。

主な事実発見

問題1:既卒者に対する労働力需要をもつ企業の特徴
  • 方法1)新卒人材が不足している分野は、高卒: (1)中小規模、 (2)建設業、サービス業、卸売小売業、 (3)サービス職。大卒: (1)中小規模、 (2)卸売・小売業。
  • 方法2)新卒採用枠:中小規模、飲食宿泊業、情報通信業、医療福祉教育業が既卒者を採用する傾向。 新卒採用中心の採用管理を行う企業は既卒者を採用しない傾向。中途採用枠:既卒者は募集しない傾向。
問題2:企業が既卒者を募集・採用する目的
  • 方法2)大企業や情報通信業は、新卒採用枠でのみ、若く就業経験がない既卒者を長期的に育成する目的で募集・採用する。中小企業は新卒不足を補うために既卒者を募集・採用するが、即戦力の獲得や訓練コストの節約を目的とする企業もある。
  • 方法3)新卒採用中心の企業は「新卒者の代わり」等の消極的理由を、中途採用中心の企業は「教育訓練コストが節約できる」等の積極的理由を挙げる。
問題3:企業が既卒者を募集・採用する方法(方法3)
  • 全調査対象企業が職種別の採用をしていた。
  • 既卒者の募集・採用過程は企業の正社員採用管理方針によって三類型に分類できる(図表)。
  • 「トライアル雇用制度」「新卒応援ハローワーク」「第3号求人」の活用事例が得られた。

図表 既卒者の募集・採用過程の三類型

※図表をクリックすると拡大表示します。(拡大しない場合はもう一度クリックしてください。)

図表 既卒者の募集・採用過程の三類型/調査シリーズNo.91(JILPT)

政策的含意

「既卒者」概念は多様な若者を含むため、以下の基準で分類し、各状況にあった支援の提供が望まれる。

  1. 年齢:新卒採用枠で採用されうる若い既卒者にはマッチング支援が、年長既卒者には中途採用枠で求められる就業経験や知識・技術の取得の支援が有効。
  2. 学歴:高卒の既卒者には、新卒時点(18歳)から応募可能年齢(20歳以上)までに「社会人」としてある程度成熟できるよう支援を行う必要がある。
  3. 職種:希望職種にあった支援が必要(例:SE=専門知識・技術。営業=訓練を伴う就業経験)。

政策への貢献

若年者・中小企業に対する雇用支援政策を効率的・効果的に運用していく際の参考資料として活用できる。

本文

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調査実施担当者

岩脇千裕
労働政策研究・研修機構 研究員
高久聡司
労働政策研究・研修機構 アシスタント・フェロー

研究期間

平成23年度

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
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