調査シリーズ No.80
派遣社員のキャリアと働き方に関する調査(派遣労働者調査)
概要
研究の目的と方法
- 派遣労働者の働き方については、これまで厚生労働省のアンケート調査などにより総括的に把握されてきているものの、個々の派遣労働者がどういった経緯、経路、理由で派遣労働者になり、派遣労働者としての満足、不満を抱き、今後自らのキャリアパスをどのようにしたいと考えているのか等については十分に把握されてきていない。そこで、本調査では、派遣元事業所、派遣先事業所、派遣労働者の三者に対し同時に調査することで、キャリア形成の行われ方、働き方の状況を多面的にとらえ、派遣労働におけるキャリア形成の現状と問題点を明らかにすることした。
- 本研究は、その一環として派遣先・派遣労働者に対してアンケート調査を行ったものである。派遣先調査の対象は、全国事業所のうち、6業種(製造業、情報・通信業、金融・保険業、サービス業、卸売・小売業、運輸業)に該当する従業員30人以上の事業所で、帝国データバンクより10,000事業所を無作為抽出、郵送法により実施。派遣労働者調査の対象は、派遣先事業所調査で対象とした事業所に勤める派遣労働者(合計80,000票)である。方法は、派遣先から労働者へ配布、郵送回収。派遣先調査の有効回収数は3,085件(有効回収率:30.9%)。 派遣労働者調査の有効回収数は4473件(有効回収率(配布数80,000票に対して):5.6%)である(本報告書は派遣労働者調査の結果を収録)。
主な事実発見
- 派遣社員になった理由の第1位は、「正社員として働きたいが仕事がみつからなかった」(36.6%)。次いで、「好きな勤務地、勤務期間、勤務時間を選べる」(23.8%)、「私生活(家庭、趣味、看護、介護)との両立が図れる」(23.3%)、「働きたい仕事内容を選べる」(19.5%)などの順となっている(図表1)。
- 現在の派遣元を選んだ理由は、「登録後すぐに仕事を紹介できること」が29.1%でもっとも多く、次いで「大手、知名度があること」(26.1%)、「長期間働ける仕事を紹介できること」(26.0%)、「紹介できる仕事の数が多いこと」(21.0%)など、仕事の紹介に係る内容が上位に来ている。
- 派遣で今後も働き続けたいか聞いたところ、「ある程度の期間であれば派遣社員として働きたい」(46.1%)、「できるだけ派遣社員として長く働きたい」(23.5%)となっており、「できるだけ早く派遣社員を辞めたい」は30.4%となっている。
- 正社員希望については、正社員を希望する人(「是非なりたい」「どちらかといえば、なりたい」の合計。)の割合が80.7%と大多数を占める。正社員希望を今後の派遣社員継続希望別にみると、「できるだけ早く派遣社員を辞めたい」人は96.4%とほぼ全数が正社員を希望している(図表2)。さらに将来の雇用不安別にみると、雇用不安が高まるほど正社員希望の割合は高まる。正社員希望者を対象に、正社員で働きたい理由(複数回答)を尋ねたところ、「正社員だと雇用が安定しているから」が80.8%ともっとも割合が高い。
政策的含意
派遣社員の正社員希望は、80.7%と大多数を占めており、雇用不安が高まるとともにその割合は高まる。正社員を希望する理由のトップも「正社員だと雇用が安定しているから」である。一方、現在の派遣元を選んだ理由をみると、「登録後すぐに仕事を紹介できること」など仕事の紹介に係る内容が上位に来ており、派遣社員を続ける場合にも、仕事の切れ目ない紹介など雇用安定にかかわる希望が上位にきている。雇用安定に資する政策を派遣社員は希望しており、正社員希望者には正社員への転換促進策の強化が望まれ、派遣社員を長期的に続けたい者にとっても、雇用を安定させるための何らかの施策が必要とされる。
政策への貢献
派遣労働で働く労働者について、その働き方を選択するに至った経緯、理由とともに、派遣労働への評価、今後希望する働き方などの意識に関して詳細に調査・分析しており、今後の派遣労働にかかわる施策を検討する上で有益な情報を提供している。
本文
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- 表紙・まえがき・調査研究担当者・目次(PDF:789KB)
- 第Ⅰ部 調査概要(PDF:1.6MB)
- 第Ⅱ部 資料
資料1 「派遣社員のキャリアと働き方に関する調査(派遣社員用)」 調査票(PDF:1.1MB) - 資料2 付属統計表(1) 付属統計表(2)(PDF:2.6MB)
調査研究担当者
- 奥田栄二
- 労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐
- 小野晶子
- 労働政策研究・研修機構 副主任研究員
- 郡司正人
- 労働政策研究・研修機構 主任調査員
- 福田直人
- 労働政策研究・研修機構 臨時研究協力員
(東京大学大学院経済学研究科博士課程後期) - 森山智彦
- 同志社大学社会学部助教
研究期間
平成22年度
データ・アーカイブ
本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.56)。
お問合せ先
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