ディスカッションペーパー26-07
キャリアコンサルタントのリファーの実践に関する質的研究
―わかものハローワークにおけるヒアリング調査に基づいて―
概要
研究の目的
本稿の目的は、発達障害傾向のある若年求職者支援におけるキャリアコンサルタントのリファーの実践内容、およびその中で生じる課題や対応を明らかにすることである。
研究の方法
- 対象者:
- わかものハローワークの相談業務経験11名(女性8名・男性3名)
- 時期:
- 2025年10月
- 場所:
- 東京都(渋谷・新宿・日暮里)、埼玉県、千葉県のわかものハローワーク
- データ収集:
- 半構造化インタビュー(1~2名の個別・集団形式、各回1~2時間)
質問項目①リファーの判断に影響を与えた相談者の課題や状況、②リファーに至るまでの支援・対応、③リファー先の選定基準、④相談者への伝え方・配慮、⑤リファー後のフォローアップ等 - 分析方法:
- テーマティック・アナリシス法
主な事実発見
1.信頼関係を基盤とした循環的なプロセス
キャリアコンサルタントにおけるリファーは、単なる紹介手続きではなく信頼関係を基盤とする循環的なプロセス(フォローアップまでを含む)であることが明らかとなった。リファーは、ニーズの特定、リファーの必要性やタイミングの判断、リファー先の特定、リファー先の説明・同意取得、フォローアップという一連のプロセスを辿るが、これらすべての段階において信頼関係が重要な役割を果たしていた。(図表1)。リファーは、一度で完結するものではなく、フォローアップを通じて見直しが行われ、必要に応じて支援関係へと戻ることも可能であった。また、支援者は日頃から相談者との信頼関係を築き、相談者が新たな支援環境へ移行する際には、わかものハローワークでの支援も継続・再開できることを伝えていた(図表3参照)。このことは、支援者が相談者にとってのアタッチメント理論(Bowlby, 1969)における安全基地(secure base)の役割を担っており、相談者のリファー先での探索行動を支えていることを示唆する。
図表1 結果の全体像:リファーの実践プロセス

注)図表1は、IASC(2017)のモデルを本調査の分析結果に基づいて再構成したものであり、本文内図表S1と同内容である。
2.多面的な判断基準
リファーの必要性は、①支援機関・雇用側との適合性、②親などの環境要因、③支援効果といった複数の観点から判断が行われていた。また、タイミングの判断についても、①支援者の姿勢と関係性、②課題に関するキーワードの出現、③相談者の変化の意思、④生活困窮や健康に関する訴え、⑤支援範囲・期日などを考慮した慎重な見極めが行われていた(図表2)。また、機関内の制度的な枠組み(わかものハローワークの場合、短期間での正社員就職を目指す)がリファーの判断に一定の影響を与えているものの、支援者の意思決定が制度によって一律に規定されているわけではなく、相談者のニーズや関係性に応じた総合的な判断が行われていた。
図表2 リファーのタイミング判断

注)本文中の図表5の分析結果を基に再構成したものである
3.リファー先の説明要素
リファー先を説明する際には、①基本情報、②理由と有用性、③不安の軽減、④自己決定の尊重の4つの要素が含まれていた(図表3)。調査では、リファーが実際に成立する割合は低いことも語られており、リファーが相談者の自己認識や心理的抵抗と深く関わる、難易度の高い介入であることが示唆された。
図表3 リファーの説明:4つの要素

注)本文中の図表9の分析結果を基に再構成したものである
4.支援の長期化に対する対応
支援が長期化した場合には、本人の理解と納得を支えること、支援者が一人で抱え込まず他支援者と協働したりチームで協議を行ったりすること、関わり方や支援ペースを調整すること、障害理解に関する知識やスキルを組織内で共有・蓄積することなど、支援の進め方や設計に関する発話が確認された。
図表4 長期化への対応

注)本文中の図表12の分析結果を基に再構成したものである
政策的インプリケーション
本研究は、発達障害傾向のある若年求職者支援において、リファーが単なる紹介手続きではなく、信頼関係を基盤とした循環的な支援プロセスであることを示した。本研究の知見を踏まえると、支援の質を確保しつつ支援の長期化を防止するためには、①リファー後のフォローアップ体制の明確化・制度化、②所内勉強会等を通じた障害理解に関する知識・スキルの向上、③リファーの判断および説明等に関するマニュアル整備の推進が重要であると考えられる。
政策への貢献
若年求職者支援従事者に対して、基礎資料を提供する。
本文
研究の区分
プロジェクト研究「職業構造・キャリア形成支援に関する研究」
サブテーマ「キャリア形成・相談支援・支援ツール開発に関する研究」
研究期間
令和7年度
執筆担当者
- 石井 悠紀子
- 労働政策研究・研修機構 研究員


