ディスカッションペーパー 23-01
職場における感染症拡大防止をめぐる法政策
―コロナ禍におけるドイツ労働法の形成と展開

2023年3月22日

概要

研究の目的

職場における感染症の拡大防止という政策課題について、コロナ禍において積極的な立法措置が講じられてきたドイツ法の分析・検討を通じて、日本の労働法政策への示唆を得る。

研究の方法

文献調査

主な事実発見

ドイツでは、コロナ禍における職場での感染症の拡大防止という政策課題について、まずはコロナ労働保護規則によって、① 在宅勤務の実施、② 事業所内における接触機会低減措置、③ マスクの提供・着用、④ 検査の提供、⑤ リスクアセスメント(危険可能性評価の実施と衛生計画の策定)、⑥ ワクチン接種の支援という6つの領域を対象とした規制が行われてきた。また、それと並んで、感染症予防法も、ⅰ)在宅勤務の申出および受入義務、ⅱ)事業所における3Gルール、ⅲ)医療・介護等施設における免疫証明義務、およびⅳ)医療・介護等施設におけるマスク着用・検査証明義務という形での規制を行っている(いた)。このようなドイツ法の経験からすれば、日本でも今後、職場における感染症の拡大防止という政策課題に関してより積極的な法政策を講ずべきとの前提に立った場合には、a) 労働安全衛生法中に、使用者に対し各職場において感染防止措置を講じることを義務付ける規定を設けつつ、各職場の実状に即して適切な措置を選択しうるよう、行政が指針を定めることが考えられる。また、b) 感染症蔓延下において在宅勤務の実施についてより積極的な法的規律を行う場合には、労使合意に基づく実施へと誘導するような規制が望ましい。更に、c) 労働者一般に対しワクチン接種を強制するような法規制は、憲法の諸規定に照らし正当化が困難であるとともに、その対象を医療・介護従事者に限るとしても、規制にかかる立法事実の有無や、ワクチンの有効性・副反応のリスクといった点で、慎重な検討を要する。

政策的インプリケーション

「主な事実発見」を参照。

政策への貢献

現段階では未定だが、今後、新興感染症の流行下における職場での感染拡大防止をめぐる法政策のあり方を検討するに当たり、厚生労働省をはじめとする関係各省において参照されることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「多様な働き方とルールに関する研究」
サブテーマ「多様な/新たな働き方と労働法施策に関する研究」

研究期間

令和4年度

執筆担当者

山本 陽大
労働政策研究・研修機構 主任研究員

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内容について
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※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。

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