ディスカッションペーパー 22-04
コロナ禍が雇用に与える影響─地域差に着目して─

2022年3月10日

概要

研究の目的

緊急事態宣言の実施と感染拡大が雇用の悪化に直接つながるか、大都市のある都道府県とない県の間でコロナによる雇用への影響に違いがあるかを検証する。

研究の方法

調査データの二次分析。

主な事実発見

本稿は、個人の就業形態の月次変化が把握できるパネル調査の個票データと都道府県ごとの緊急事態宣言の実施状況と感染状況の月次データを結合し、緊急事態宣言の実施と感染拡大が雇用の悪化に直接つながるかを検証した。分析では、コロナの影響の地域差に着目し、大都市のある都道府県とない県の間でコロナによる雇用への影響に違いがあるかを検証した。雇用形態によりコロナの影響に違いが生じる可能性があるかを確認するため、2020年4月1日時点に正規雇用者で且つ前々月末にも正規雇用の個人と2020年4月1日時点に非正規雇用者で且つ前々月末にも非正規雇用の個人に分けて、グループごとに推計を行った。正規雇用者であった個人のサンプルを用いた推計では「正規雇用が維持されなかった」、非正規雇用者であった個人のサンプルを用いた推計では「無業」を、雇用の悪化を示す指標として用いた。

プロビット分析で推計した結果、緊急事態宣言の実施は、大都市のない県では、正規雇用者と非正規雇用者の双方の雇用の悪化につながることや、緊急事態宣言の実施による大都市のない県の正規雇用者の雇用への影響は長期的なものであることが確認された(図表1、図表2)。時間の経過に伴い、緊急事態宣言が雇用に与える影響に違いがあるかを確認するため、2020年6月~2020年12月と2021年1月~2021年6月の期間別にも推計を行った。その結果、第1回緊急事態宣言の実施による雇用の悪化が観察されたが、2021年5月までの第2回と第3回緊急事態宣言と雇用悪化の間には一貫した関係性が観察されなかった。感染拡大の影響に関して、前月の人口10万人当たりの県内新規感染者数と前々月末までの人口10万人当たりの県内累積感染者数を指標として用いて推計した結果、感染拡大が雇用の悪化に直接つながることは確認されなかった。

図表1 推計結果:緊急事態宣言と感染拡大が正規雇用者の雇用に与える影響

図表1画像

注:すべての推計では、2020年4月1日からの経過月数、同月の標準失業率、女性ダミー、年齢階級ダミー、大学・大学院卒ダミー、有配偶ダミー、6歳未満子どもありダミー、地域ブロックダミー、2020年4月1日時点の業種ダミー、職種ダミー、地域ブロックダミー×2020年4月1日からの経過月数の交差項も説明変数として入れている。

図表2 推計結果:緊急事態宣言と感染拡大が非正規雇用者の雇用に与える影響

図表2画像

注:図表1の注と内容は同じ。

政策的インプリケーション

本稿の分析から、コロナのパンデミックによる雇用の悪化は、大都市のある都道府県より大都市のない県で顕著に確認され、パンデミックがなかなか収束しない中で、コロナの影響の地域差に配慮した地域雇用政策を強化する必要があると思われる。

政策への貢献

コロナ対策や地域雇用の関連政策を検討する際の基礎資料となりうる。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「技術革新等に伴う雇用・労働の今後のあり方に関する研究」
サブテーマ「地域における雇用機会と働き方に関する研究」

研究期間

令和3年度

研究担当者

何 芳
労働政策研究・研修機構 研究員

関連の研究成果

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研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。

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