インドネシア:2023年2月の失業率は5.45%に低下
 ―コロナ禍前の水準に近づく

(独)国際協力機構インドネシア共和国
労働政策アドバイザー(インドネシア共和国労働省)
山田 航

2023年5月5日、インドネシア中央統計局(BPS)は同年2月の労働力調査の結果を公表した。失業率は5.45%(男性5.83%、女性4.86%)、失業者数は799万人となった。

コロナ禍の雇用情勢への影響

リーマンショック後の2010年代、失業率は低下傾向にあったが、2020年に入ってからコロナ禍に伴って上昇し、2020年8月に7.07%を記録した。その後は、2月調査、8月調査のいずれでみても低下傾向にある。2023年2月は5.45%となり、コロナ禍前の5%前後の水準に近づいてきている。()(注1)(注2)

労働力調査では、コロナ禍の影響を受けた15歳以上人口(失業、非労働力化、一時休業、労働時間の削減のいずれかを経験した者)についても調査している。その人口に占める割合も、2020年8月の14.28%をピークに低下しており、2023年2月は1.70%となっている。

図:失業率の推移(2011年~2023年)
画像:図

資料出所:インドネシア中央統計局

若年層と都市部で厳しい雇用情勢

このように回復基調にある雇用情勢であるが、若年層と都市部では厳しくなっている。この傾向はコロナ禍前から変わっていない。

2023年2月の失業率を年齢階級別にみると、15~24歳で16.46%、25~59歳で3.95%、60歳以上で1.13%となっている。2022年のデータによると、15~24歳層の2割強(23.22%)が就学・就労・訓練のいずれの活動も行っておらず、非労働力となっている若者も無視することのできない多さとなっている。

また、地域によって産業構造や労働市場の状況は大きく異なるものの、失業率を地域別にみると、都市部は7.11%(首都のあるジャカルタ特別州は7.57%)、地方部は3.42%となっている。

就業構造の特徴

このほか、2023年2月の労働力調査に基づき、就業構造の特徴を概括すると、①労働力率は69.30%(男性83.98%、女性54.42%)となっている。また、②産業セクター別では、第1次産業が約3割(30.58%)、第2次産業が約2割(20.46%)、第3次産業が約5割(48.96%)、③従業上の地位別では、自営業者・家族従業者が5割強(54.77%)、雇用者が5割弱(45.23%)、④フォーマル労働が約4割(39.88%)、インフォーマル労働が約6割(60.12%)となっている。

今後の労働政策の課題

インドネシアは人口が世界第4位(2億7千万人超)の大国である。2022年にG20の議長国を務めたのに続き、2023年はASEANの議長国を務めている。2024年2月には5年に一度の大統領選挙が予定されている。

労働政策については、若年層の就業機会の創出が課題のひとつとなっており、海外を目指す若者も多い(注3)。また、中長期的には高齢化の進行が見込まれており、各層の一層の労働参加によって社会の支え手を増やすことが目指されている。

今後とも、雇用情勢とともに、雇用創出オムニバス法をめぐる動き(注4)など、労働政策の動きが注目される。当職としても、当地事情の理解と分析を深め、労働政策の改善に向けた活動に取り組んでいきたい。

(※)本稿は執筆者個人の見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。

参考資料

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