男女間の賃金格差は18%、10年でわずか2ポイントの縮小
 ―ILO「国際同一賃金デー」

カテゴリ−:労働条件・就業環境

ILOの記事一覧

  • 国別労働トピック:2026年10月

国際労働機関(ILO)は9月18日の「国際同一賃金デー」にあたり、世界の男女間賃金格差の縮小は、この10年でわずか2ポイントにとどまっているというILOの推計を公表した。ジルベール・ウングボILO事務局長は「男女間の賃金格差の解消は、社会正義を推進するために極めて重要だ」とメッセージを送った。

「わずか2ポイントの縮小では単純に不十分」と事務局長

「国際同一賃金デー」は2019年に国連総会で認定された。毎年9月18日に同一価値労働同一賃金の基本的な原則を再確認するとともに、コミットメントを新たにし、必要な行動を強化する機会を提供する。

ILOの新しい推計によると、男女別にみた世界の賃金は、男性に比べて女性が依然として低く、その差は約18%だった。格差は、2018年に公表された前回推計の約20%から、わずか2ポイントしか縮小していない。

ILOのウングボ事務局長は、演説で「10年でわずか2ポイントの縮小では、単純に不十分だ。同一賃金は単なる公平性の問題ではない。それはジェンダー平等の達成と労働の世界における社会正義の推進に不可欠であり、緊急に進展を加速させ、同一賃金に関するコミットメントを成果に結びつけなければならない」と訴えた。

女性の教育水準が上がっても格差を解消できず

ILOによると、男女別賃金格差の状況は、国によって差がある。10年前に比べ高所得国では約2.5ポイント縮小したが、低中所得国では約2ポイント、高中所得国では約1ポイントの縮小にとどまる。注目すべきは、女性の教育水準が上がってもこの格差を解消できず、経済的自立の低下、貯蓄や年金の減少といった不平等が蓄積されていることだと指摘する。

ただし、ILO上級ジェンダー専門家のエマヌエラ・ポッツァン氏は「国や所得階層間で状況に差があるのは、男女間の賃金格差を埋める方法があるということでもある。改善は可能で、そのためには、国の個別の労働市場状況に合わせた賢明な政策が必要だ。そして重要なのは、今、行動することだ。なぜなら、家族や事業、コミュニティを支えるために何百万人もの女性が働いており、これ以上過少評価を続けるわけにはいかない」と訴えた。

技術と経済の変革で生まれる新しい機会に、女性も平等にアクセスを

ILOによると、グリーン(脱炭素型経済社会)とデジタルへの移行は、新たな産業や職業を創り出し、平等な賃金の機会を生み出している。また、人工知能(AI)やアルゴリズムシステムは、採用、職務分類(Job Classification)、業績評価や報酬にますます大きな影響を及ぼす。

ウングボ事務局長は、こうした新しい技術や産業への移行を、差別の再生産ではなく、差別を検出し是正することに活用し、技術革新によって生まれた機会に女性が平等にアクセスできるようにするべきだと強調した。

格差の要因は「複雑」、政労使が連携し社会的対話を

男女間賃金格差は、労働の世界のより広範な不平等――雇用や昇進へのアクセスの差、職業の性別分離(Occupational Segregation)、育児・介護などの有償/無償のケア労働の不平等な分担、そして女性労働に対する差別や過少評価など――を反映しており、複雑であると指摘する。格差に効果的に対処するには、政労使の連携した行動が必要となる。

ILOジェンダー・平等・多様性・包摂(Gender, Equality, Diversity and Inclusion, GEDI)部門長のチディ・キング氏は「政府、企業、そして労働者が協力すれば、この不正義のもととなっている構造的な障壁を取り除き、同一賃金を推進する法律や制度を強化することができる」と述べ、「団体交渉などの社会的対話を通じて、女性の仕事の過少評価に対処し、賃金の透明性を強化し、より公正な賃金構造を築き、女性が自らの経済生活を形づくるうえで男性と対等に発言できるようになる」と訴える。

ILOは、男女間賃金格差の構造的要因に対処するには、賃金透明性の強化、客観的かつジェンダー中立的な職務評価、効果的な賃金政策、団体交渉、平等法の施行、介護制度や社会保障への投資などが必要だとまとめている。

なお、ILOの基本原則として、1951年に「同一価値労働同一賃金」をILO同一報酬条約(第100号)に定め、労働の価値はそれを行っている人が女性か男性かに依存してはならない、という原則を示している。

参考資料

関連情報