スキルの活用は労働者の賃金や仕事の満足度にプラスの影響
―OECD報告
経済協力開発機構(OECD)は2026年2月6日、報告書「労働者は職場でどのようにスキルを活用している/いないのか(How Workers Use, or Don’t Use, their Skills in the Workplace)」を公表した。
報告書によると、労働者は主体性や協調性といったスキルをより活用するようになっている。ただし、国や地域によって活用されるスキルの傾向は異なり、経済構造の多様性を反映している。また、スキルの活用は、労働者の賃金や仕事の満足度にもプラスの影響を及ぼすと分析している。
職場では主体性やチームワークに関わる能力の活用が増加
報告書は、OECDが2023年に実施した国際成人力調査(PIAAC)(注1)のデータを用いて、職場の労働者のスキル活用に焦点を当て分析した。過去10年間におけるスキル活用の変化や、国・地域別の特徴も明らかにしている。スキル活用と賃金、生産性、労働者の幸福との関係についても分析している。
具体的には、労働者のスキルを以下の12に分類し、こうしたスキルの活用が職場や属性によってどのように異なるのか、職業や産業、年齢などとの関連を明らかにした。
【情報処理スキル】
- ①読解力(Reading)
- ②作文力(Writing)
- ③計算能力(Numeracy)
- ④情報通信技術(ICT)
- ⑤問題解決能力(Problem Solving)
【汎用スキル】
- ⑥業務裁量(Task Discretion)
- ⑦仕事での学び(Learning at Work)
- ⑧影響力(Influencing)
- ⑨協調性(Co-operative Skills)
- ⑩自己組織化能力(Self-organizing Skills)
- ⑪器用さ(Dexterity)
- ⑫身体能力(Physical Skills)
分析によると、労働市場で最も一般的に利用されている能力は、「自己組織化能力(自律的に計画・時間管理して業務を遂行する能力)」「業務裁量」や「協調性」で、労働者は、より個人の主体性やチームワークといったスキルを活用するようになっている。一方、「計算能力」「読解力」「作文力」といった情報処理能力は、以前に比べるとそれほど多く活用されなくなっている。報告書は、職場において自律性や協調性など、適応能力の評価が高まっていることを反映していると指摘する。
スキルの活用状況は、職種や産業によって異なる。管理職や専門職では認知能力や社会性がより重視されるが、肉体労働や低スキルの職種では「身体能力」や「器用さ」をより活用する。「協調性」や「自己組織化能力」はあらゆる産業で重視されており、チームワークや自律性には普遍的な価値がある。
また、年齢に伴うスキル活用度の変化をみると、「計算能力」などのスキルはキャリア中期に向けて増加し、その後は職務の変化等により減少する。
新しい知識の習得やスキルのアップデートは年齢とともに低下する傾向がある。一方で、「自己組織化能力」は、経験を積み自律性を得るにつれて高くなり、その後は安定して推移する。
「器用さ」の活用は国によって大きなばらつき
国ごとに各スキルの活用状況を分析すると、「⑩自己組織化能力」は、調査対象のほぼすべての国において、職場で活用される最も一般的なスキルとなっている。また「⑥業務裁量」や「⑨協調性」も多くの国で頻繁に用いられている(図表1参照)。一方で、ほとんどの国で「③計算能力」は最も利用頻度の低いスキルとなっており、報告書は、「①読解力」「②作文力」などを含めた情報処理スキルより、汎用的な非ルーティーンのスキルが頻繁に活用されるようになっていると指摘する。
12のスキルのうち各国で最も標準偏差(ばらつき)が大きいのは「⑪器用さ」だった。国によって職場で「器用さ」を必要とする度合いが異なることについて、「OECD加盟国の経済構造の多様性を浮き彫りにしている」と分析している。
図表1:国別にみた職場のスキル活用状況
(青色:平均以上、白色:平均、赤色:平均以下)
(能力①~⑫の内容は本文参照)

出所:OECD (2026)
また、各スキルの平均活用状況を高い国の順にランキングしてみると、興味深いパターンがみられると報告書は指摘する。
そのランキングによると、ニュージーランドでは最も幅広くスキルを活用している。一方で英国(イングランド)は、情報処理スキルを多く活用するが、「業務裁量」や「仕事での学び」「器用さ」などの汎用スキルの活用が著しく低い。フィンランドでは「業務裁量」「自己組織化能力」「影響力」などのスキル活用はトップクラスに高いが、「情報通信技術」や「協調性」は平均を下回っている。米国は「読解力」「計算能力」「問題解決能力」「器用さ」が高いものの、「自己組織化能力」は最低レベルだった。
スキル活用が賃金や仕事の満足度に与える影響
報告書は、職場におけるスキルの活用と賃金との関係についても考察している。
各スキルの使用頻度と時給の変動率の関係をみたところ、職場でスキルの活用頻度が高いほど、賃金は上昇している。特に「読解力」「情報通信技術(ICT)」「計算能力」「問題解決能力」といった情報処理スキルの活用が高いほど、賃金の伸びが高い。ただし、「身体能力」や「器用さ」ではマイナスとなっている。
しかし、この数値は平均値であり、国によってばらつきがあることに注意が必要だと留保する。そして、「それぞれの国の労働市場によって、制度的な仕組みや各種スキルの需要が大きく異なっていることを示唆している」としている。
図表2:スキル活用頻度と賃金の変動

出所:OECD (2026)
注:各スキルの使用頻度が1標準偏差増加した場合の時間給の増減比(%変化)の関連性をOLS回帰係数で分析して表示。
また、報告書は、スキル活用による仕事の満足度など、非経済的な側面への影響についても分析する。
それによると、汎用スキルであれ情報処理スキルであれ、ほとんどのスキルで使用頻度が高まるほど、仕事における満足度が高くなるという正の相関関係がある。特に、「仕事での学び」スキルを継続的に活用することは、仕事の満足度を大きく高める重要な要因となっている。また、「業務裁量」能力も、仕事の満足度と強く関連している。
ただし、「器用さ」に関してはほぼ変わらず、「身体能力」に限っては負の相関関係にある。「身体能力」のように負荷の大きい能力を職場で活用することは、逆に満足度を下げる結果となっている。
報告書は、「労働者が自分のスキルをより有効活用できる役割に就くと、仕事は内発的な動機付けと満足感を生み出す。そうでない場合は、仕事は不利益の源となり、離職のリスクが高まる」とまとめている。
注
- OECDウェブサイト(国際成人力調査(PIAAC)
)参照。(本文へ)
参考文献
関連情報
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